116話
旅人とはその場で別れて、彼が歩いてきた道を辿って果ての山脈をミックたちは目指す事にした。
「ドラゴンが果ての山脈から飛んできているってのは間違いないみたいだね」
夜になって野営を行うと、夕食の時アンジーがそう呟いた。
「もし、またドラゴンと戦う事になったら、このメンバーでも勝てる算段は非常に低いとあたしは思っている」
「アンジー殿の実力を疑う訳ではござらぬが、あのドラゴンを一度は退治したのであろう。それでもそう感じていると?」
「ああ、一生分のツキと準備。そこまでしても死にかけた。正直今でも生き延びてるのが不思議なくらいだよ。ミックがいなかったら相打ちすら厳しかっただろう」
たった2人でのドラゴン退治。アンジーはほぼ自殺同然で戦っていた。そして奇跡的に生き残った。相手が単独でもそうだったのに、それが群れでいる可能性が高い。正面から戦う事になったらまず負けると見ていいだろう。ミックもそれには同意だった。
「今回の目的はあくまでドラゴンが現れた原因を探る事だ。だから、戦うのは出来るだけ避ける。それだけは周知して欲しいの。いいね?」
ミックとリサは頷いた。あのオーランドも同意らしく、アンジーの言う事に従うように頷いた。
「しかし、逃げるとなったらこのオーランドが殿を努める! アンジー殿たちはその間に逃げおおせよ!」
「ああ期待してるよ騎士様。あたしらが逃げたのを確認したら、無理せずに騎士様も逃げてくれよ。死なれたら寝覚めが悪いからね」
アンジーがそこまで言うのは、やはり過去の事が理由だろう。もう仲間に死んでほしくないのだ。つまり、リサやオーランドも今では仲間だと認めているという事をミックは感じていた。
「魔物が出るらしいからね。あたしとオーランドが交代で火の番をする。あんたたち2人は魔法が使えるから、十分睡眠を取って常にどちらかが万全であれば心強いよ」
強力な複合魔法が使えるリサはともかく、転ばし魔法だけのミックも魔法使いとして認めてくれている事に、彼は少し嬉しかった。精神を集中する魔法使いは特に休息を取って、ここぞという時に力を発揮できるよう努める。冒険者としての鉄則でもあった。
「さあ、明日には果ての山脈を登る事になる。体力を温存して、山登りに備えなよ」
もうすぐ目的地の果ての山脈に着く。ドラゴンの住むその地で一体何が起こっているのか。その原因を突き詰めて、人類が滅ぶのを阻止しなければならない。言われた通り、リサとミックは先に睡眠を取るが、先行きの読めない不安で、彼はなかなか寝付く事が出来なかった。




