115話
「私はその、果ての山脈と呼ばれる山の裾野にある村に住んでいたんです」
旅人がそう言うと、ミックたちは驚きの声を上げた。
「果ての山脈の裾野ってそんな場所に人が住めるんですか!?」
「ちょっとミック、その言い方だとちょっと失礼じゃない? それが、どうしてこの辺りに?」
リサがミックを窘める。ミックが果ての山脈について知っているのはドラゴンの発生源というぐらいで、その辺りの事は何も知らない。
「ええ、それには理由がありまして……」
元々、果ての山脈の辺りは比較的魔物が少ない土地だという。ドラゴンが出るという話もある事はあるが、親が子供をしかりつける時に、山にいるドラゴンが襲いに来ると脅かす時にいう物だったらしい。
「ですが、数か月前でしょうか実際に見たんです。山の方から村の上空を飛ぶドラゴンの姿を……」
それも一度ならず、何度も起こるようになってそれと共に、今まで見なかった魔物の数が急激に増え、村を捨てざるを得なかったという。
「村の他の者は親戚をつてに散り散りになって、私はそういう者もおらず、仕方なく独りで最寄りの町まで向かってた所だったんです」
そこをオークに襲われて、ミックたちに助けられたところだという。
「しかし、今まで生きていてドラゴンを見たのは生まれて初めてでした。本当に存在していたんですね」
アンジーは10年前にもドラゴンと遭遇していたが、ドラゴンの群生地と思われる果ての山脈付近でも、ドラゴンの実在を疑う者は多かったという。本来それ程ドラゴンは希な存在なのだ。ミックは改めて実感した。
「その村に住んでて山に登った事はあるのかい?」
「そんなとんでもない! あそこは殆ど岩山で開拓する理由もないし、やはり大人でもドラゴンが出るという話は怖くて誰も近寄りません」
果ての山脈は生き物の存在が感じられない巨大な岩山で、落石等も多くて村の人々もわざわざ山に近づく事はないという。
「そんな場所で、ドラゴンはどうやって生きてるんでしょうね」
ミックたちの目的はまさにそのドラゴンの生態を知る事と、最近になって何故山から様々な地域へ飛んでくるのかを調べる事なのだ。
「出来れば近くの町まで護衛したいところですが、僕たちは逆にその果ての山脈に向かわなきゃなんです」
「あの山へ? さっきも言いましたが、ドラゴンは実在してるし魔物も出るようになったんです。そんな若い身空であの山へ向かうなんて、止めといた方がいいですよ少年」
まさか本当にドラゴンを探しに行くために、ミックたちが果ての山脈へ向かってるとはこの人物も本気で思ってないようだった。自殺行為に等しいのだから無理もないが、それがミックたちの目的なのだから仕方がない。




