113話
人里離れた北方の荒涼とした山間にそれはあった。岩の亀裂に見せかけた入り口を抜け、狭く暗い通路を越えると大きく広い空間に出る。その空間で目を引くのが、古代に建てられたであろう遺跡や祭壇跡で、古代の魔法使いが何らかの儀式をするのに使われたであろうが、今なお魔法使いギルドにも知られず、調査の手は入っていない。そこに集まっているのは、禁忌に手を出し、魔法使いギルドから追放されたネクロマンサーの集団だった。一部はギルドの禁止とする魔法に手を出し、ギルドから追放された者たちだが、この集団はある1つの目的の為に手を組み、組織化された一団だった。
「フォーレゲンの姿が見当たらないな。奴はどうした?」
遺跡の一角に長い石机があり、そこにネクロマンサーたちが集まって話をしていた。
「つい最近、魔法使いギルドと冒険者ギルドがカペー地方で大規模なネクロマンサー捕縛を行ったと聞く。奴もそれに巻き込まれたのだろう」
「すると、弟子の方も捕まったのか。せっかくの才能がある仲間が出来ると思っていたが、奴に教育を任せたのは間違いだったか」
リサの師匠であった男、フォーレゲンを知っているようだった。恐らく、リサの村を襲った一員なのだろう。
「今またドラゴンが各地に出没してると聞くが、それに乗じて素体の調達は怪しまれる。まだしばらく様子を見なければ」
素体とは勿論ネクロマンシーに使う死体の事だろう。魔物の襲撃に見せかけて村1つ分の人間の死体を集める事も厭わない。その死者への扱いと危険な思想故に、魔法使いギルドを追放された集団が彼らネクロマンサーだった。
「発掘の方はどうだ?」
「滞りなく進んでいる。新たな素体が手に入らなかったのは痛いが、幸い丈夫で新鮮な素体ばかりで、もうしばらく動き続けるだろう」
死体を使ってこの洞窟のさらに地下で、発掘作業も行っているようだ。彼らの共通の目的のために、暗い洞窟のさらに地下深くを彼らは目指していた。
「贄となる素体はどう集める? 生きたままの素体を集める方が、死んだ素体を集めるよりも難しいのではないか?」
「金はかかるが、そっちの方はそれを生業にしている連中がいる。少しずつバレないように各地から集まろう」
生きた人間を集める手段について相談しているようだが、それを生業にしている連中とは、恐らく人さらいや奴隷商人のような犯罪者たちの事だろう。ネクロマンサーはそういう犯罪者集団ともつながりを持っている。
「今はまだ魔法使いギルドに見つかるわけにはいかない。我らの悲願ももう少し……魔法使いギルドは今はドラゴンの出現に手を焼いているだろうからな。今の内に発掘を急ぐのだ」
ミックたちの知らない所で、ひっそりとネクロマンサーたちの計画は進んでいた。




