110話
「話を聞いた時、同族が人間に害をなしていると最初は思った。だが、調べてる内にベナガラの仕業だと分かって気が緩んでいたようだ」
村の人々が外の様子を恐る恐る見に顔を見せ始める。
「オーランドさんは吸血鬼だったんですか……?」
返答はなかったが、普通の人間ならば死ぬような傷を受けても生きているのが答えだ。今も首の半分が切り裂かれていた傷だった部分が見る見るうちに治ってゆく。
「コウモリの化け物……それに、人間の化け物だ!」
村人たちが集まり、ベナガラとオーランドの様子を見て怯えた声を出す。
「皆さん、問題は吸血鬼の仕業じゃありません。ベナガラって言う魔物の仕業だったんです」
「まだそこに化け物がいるじゃないか!」
人々の間から声が上がる。オーランドの首の傷はもうそろそろ完全に塞がってきている。
「吸血鬼が吸血鬼を呼んだんだ! あの兄妹が化け物を引き寄せていたんだ!」
村人たちがざわざわと騒ぎ出す。溜まっていた不安や不信感がついに爆発したようだ。
「そいつも殺せ! あの兄妹も化け物どもを村から追い出せ!」
村人の何人かが鎌や鍬を持ってきた。オーランドを完全に敵対している。
「離れるんだよ! 手を出したらあたしが相手になるよ!」
村人とオーランドの間にアンジーが割って入り剣を振り回す。流石に武器を持った相手に襲い掛かる程度胸のある人間はいないようだ。
「あたしらはこいつを連れて村を離れる! それで満足だろ! それでも手を出すつもりなら、覚悟してもらうよ!」
オーランドを押して村から離れる。その後をミックが付いて行く。村人たちは見えなくなるまでずっとミックたちの事を警戒していた。
「某の失態だ。ベナガラが他にもいる可能性を忘れていた。あやつらは群れる事がないからと、完全に油断しておった」
「助けられた事には変わりないよ。でも、あんたの事はもっと詳しく聞く必要があるみたいだね」
兄妹とリサの待つ小屋へ戻ると、リサが心配して出迎えてくれた。彼女たちの方は無事だったようだが、村の様子を話すと、兄は諦めに似た表情をした。
「遅かれ早かれ、俺たちは村を出なきゃいけなかったんだ。でも、あんたたちのお陰で余所できっとやり直せる。ありがとう」
「オーランドさんの事、魔法使いギルドは絶対知っていたはずよね? 今から急いで準備するけど、落ち着いたら全部話してもらうわ」
元々兄妹たちは荷物になる物をほとんど持っていなかった。妹のための日光を遮る幌のついた荷車を用意して、最低限の食料と妹を乗せ、兄がそれを引いていく事にした。




