107話
明かりとなる松明を用意し、後は吸血鬼が罠にかかるのを待つだけだ。
「でも、ここから罠のある場所まで結構距離がありますよ。それでも分かるんでしょうか?」
「あの爺さんが吸血鬼は警戒心が高いから、ここで待機してろって言ってるんだ。それを考慮してるなら多分わかるだろ」
当のオーランド本人は、再び甲冑を身に着けて地面の上に座り込んでいる。じっと動かずに座り続けているのは、ひょっとしたらまた寝てるんじゃないかとアンジーが呟いた。
「来た!」
突然そう言うとオーランドは立ちあがり、重装備とは思えぬ俊足で暗闇の中を駆けて行ってしまった。
「おい、あの爺さん勝手に行ってしまった。追いかけるよ!」
「リサは兄妹と家に籠ってな! 2人を守ってやるんだ!」
慌ててアンジーとミックも小屋を飛び出して後を追う。吸血鬼が罠にかかったのを感知したのだと思うが、ミック達には全く分からなかった。明かりとなる松明を持ってミックが先導する。
「周りの木にぶつからないように気を付けて!」
「あのジジイ、暗闇なのにどうして森の中を走れるんだ!?」
オーランドは松明を持ってない。それなのに暗い森の中を平然と走っていく。
「はああああ!」
オーランドの声が聞こえたかと思うと、ゾッとするような不気味な叫び声が響いた。間違いなく吸血鬼の物だ。本当に現れた。罠の仕掛けた場所まで来た時、そこにはオーランドだけが立っていた。
「警戒せよ! 奴はまだ生きている! 木の上を飛び回っている!」
彼の斧槍にはべっとりとどす黒い血が付いていた。一撃は与えたが、倒しきれなかったようだ。
「そこだ! 木から木へ移動している! 奴は素早い! 警戒せよ!」
暗闇の中、目を凝らすと不気味に光る眼が一瞬見えた。吸血鬼がそこにいる。アンジーが舌打ちをする。
「飛べる奴なら始めから言ってくれればいいのに! これじゃあ攻撃が届かない!」
「奴は必ず反撃してくる! その瞬間を狙うのだ!」
オーランドには吸血鬼の位置が見えているようだ。その視線の先を追うようにミックも吸血鬼を探す。
「はあっ!」
オーランドが跳躍して斧槍を暗闇に突き出した。その暗闇の中で先端に怪物に深々と突き刺さったようで、耳を覆いたくなるような悍ましい叫び声をあげた。
「戦士殿、とどめを!」
地面に縫い留めながらオーランドが指示をする。アンジーが剣で暴れる吸血鬼を何度も突き刺す。徐々に声が小さくなりやがて動きが完全に止まった。かなりしぶとかったが無事に吸血鬼を仕留めたようだ。
「これが吸血鬼なのかい?」
地面に横たわるそれは、蝙蝠の様に毛と羽を生やしたゴブリンやオークの様な人型の魔物だった。




