105話
兄妹のいる小屋に戻ると、アンジーとリサも戻ってきていた。2人は帰ってきたミックたちを見るなり表情を曇らせる。
「あの、2人は村に行ってただけのはずよね?」
「はっきり言って臭いよ2人とも。あんたらは何をやってきたのさ」
襲われた家畜の死体を掘り返したり、それを運んで本当の吸血鬼を炙り出す準備をしたりとしていたために、2人に臭いが移ってしまったようだ。きっと村人たちも感じていただろう。
「今夜、村を脅かす吸血鬼を仕留めるための大切な準備をしてた故、これも仕方がない事なのだ」
「すいませんが、一度身体だけでも洗わせていただけませんか? 流石に臭いを付けたままでいると、罠の前に僕たちが見つかりそうなので……」
兄の男が沐浴用の大きな桶を用意してくれたので2人は身体を清めた。その間に、リサは妹に薬草を調合したポーションを飲ませた。
「数日飲み続ければ、心の迷いも晴れるぐらいには栄養が摂れよう」
「魔術を学んでる時、さまざまな学問に触れたけど栄養失調で魔物の様に凶暴化するという事例を聞いた事あるわ。マカブルさんは博識なのね」
「左様、令嬢殿。騎士たるもの戦場で傷を負った時の応急処置や病の心得は必要不可欠。このオーランド、武一片の猪には非ず!」
いくら説明してもリサを令嬢だと思ったり、ミックを小間使いの少年と勘違いしたままなのに、意外と知識は豊富のようだ。本当に不思議な自称騎士だった。
「それで、猪から質問だけど仮に吸血鬼が出たとして、その後はどうするつもりだい?」
「無論、成敗してその骸を村の者たちに見せれば、この兄弟たちの疑いも晴れよう。それで問題は解決する!」
「不死身の吸血鬼を倒せるのかい? そんな上手くいくとはあたしは思えないよ」
相手は不老不死と言われる存在、吸血鬼。本当に倒す事は出来るのだろうか。そして、兄妹の問題もまだ残っている。
「このまま村に居残った所で、妹さんはまだ日光の下に出る事は出来ないんだろう? いずれまた同じ病を再発する可能性もある。そんな生活をこれからも続けられるのかい?」
現実的な話、妹はまだ日中外に出る事は出来ない。流石にそれを治す特効薬の様な物はまだ存在してないようだ。妹の病は様々な事情が重なって同時に発症したせいで、運悪く吸血鬼扱いされてしまっているのだ。
「バーズの魔法使いギルドで診て貰うのはどう? 普通の病なら見向きもされないだろうけど、こういう特殊な症状ならきっと興味を持ってくれるはずよ」
普通の病や事件なら相手にされないだろうが、こういう奇病ならば探求心を刺激して力になってくれるだろう。ミックたちに無理難題を押し付けているのだから、こういう時くらい助けになるよう話をしても無下に断るような事はしないはずだと、リサは考えた。




