第12話 アスパラは好きですか?
会社を辞めてからは北海道でのんびり農業をやって暮らしたいと思ったんだよね。
上場企業のエンジニアの夢と言いますか、アメリカ最大の農家はビルゲイツだしね。
それで北海道に渡ってから農業研修をしていたのだけど、
運悪く地震にあってしまいまして。
済んでいたアパートも崩壊して九死に一生状態。
研修どころでは無くなりまして独立出来る状況でもなかったので
どこか農業法人に就職とさがしていたところ。
「すぐに来て良いよ。住めるところあるし家賃も今の仮住居と同じで良いよ」
と、こんな良い話をいただきまして二つ返事で決めました。
仮説住居の家賃は6千円程度でしたかね。
住む所ってのを見せてもらうと驚愕です。
そこは以前は鉄筋工場の倉庫を買ったようでして、その倉庫の中にあるプレハブの事務所。
その事務所を住めるように改装するって話。
「電気も水道も通ってる。トイレは・・・小なら外で出来るし大は車で5分の所にコンビニあるから」
「あ・あ・・・そうですか」
「壁と天井にペンキを塗って、床はカーペットが倉庫にあるからそれを綺麗にしたら使える」
「そうですか。いつ頃入居出来ますか?」
「ん?今すぐ良いぞ。住む所無いのだろう?ペンキ代は建て替えて領収書を貰って来ておいて」
「解りました(ヤバいよヤバいよ)」
その日からそこに寝泊まりをする事になったのですが季節は3月。
北海道の3月と言えばまだ寒く雪が降る日も珍しくない。
断熱もされてない倉庫内はメチャクチャ寒いんですよね。
ですから毛布やら布団やらだけではなくジャンパーやらも着込んで寝る事になります。
生活費がまずいなと思いながらもペンキを買い部屋を整えて行き、なんとか生活出来る程度までは頑張りました。
「あそこの家賃は2万だと決まってるから」
「え?前はもっと安かったのですが」
「いやいや。電気ガス水道を含めて2万だと決まってるから」
「そうですか」
風呂無しトイレ無しで倉庫側の高熱費も負担させるつもりなのか・・・
出て行くにも部屋が見つかるまでは出て行くことも出来ずに渋々了承します。
それでも頑張って働いていました。
季節はアスパラ収穫の季節。
アスパラはみんな好きですよね?僕も好きです。
「アスパラは好きかい」
職場には数人居たのですが誰もが好きでは無いと答えます。
みんなアスパラが好きじゃ無いだな。
「アスパラ好きですよ」
「じゃあ持って行って良いぞ。従業員の特別価格で消費税はオマケしてやる」
「・・・あっはい。ありがとうございます」
アスパラ1kgを【小売価格】の6000円で買わされました。
みんながアスパラは好きじゃないと言うのはこう言う事だったのか。
ある日、左腕が動かなくなりました。
倉庫に住んで居る何でも言う事を聞く便利な作業員が居れば昼夜休日問わずとにかく使われます。
言い方を変えれば足元を見られるってことですかね。
その過労と心労が溜まってか頸椎が腫れて神経が圧迫、左腕でコーヒーカップさえ持ち上げられなくなります。
休みを頂き検査をした上で続けられないと話をしますが多少の問題が発生。
給料が未払い。
ごねるごねるごねるごねる。
もう何を言われたか解らないくらいごねられましてね。
無事に辞めることは出来たのですが前途多難。
まずは体調を回復させて再就職しよう。




