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ラブホにいる者

 従業員に連れられて、死体が見つかった部屋に向かう。

 木嶋(きじま)の服は、もう彼を締め付けなかった。

「君、ちょっと待って」

 従業員が立ち止まって振り返る。

「そこにいる、真っ白な体の人間はなんだ?」

 膝を抱えて、座っている。

 禿頭(とくとう)で、その頭から、足先まで真っ白。

 何か身につけている可能性はあるが、目に入る限り男は裸だ。

「?」

「そこ、廊下の端」

 従業員は精一杯、木嶋が言ったことを好意的に解釈して、理解しようとしている。

 木嶋は意味が分かった。

「……忘れてくれ」

 真っ白な体の男が立ち上がると、体表に着いた白い粉が落ちる。

 皮膚そのものが真っ白いわけではなく、粉をつけて白く見えているのか、と木嶋は思った。

 白い男は突然、目を見開いて、木嶋を見つめる。

 そのまま近づいてきた。

 木嶋は首を絞められ、その手を掴んで抵抗する。

 従業員は不思議な目で木嶋を見つめてから、言った。

「あの、刑事さん?」

「気にしないでいい」

 一向に場所を示さない従業員に、木嶋は言った。

「部屋に案内してくれ」

「は、はい」

 従業員は木嶋の雰囲気を読んで、急足で部屋に案内した。

「ありがとう」

「調査が終わったらそこの電話でフロントに連絡を」

 木嶋が首から一瞬手を離し、分かったと合図すると、従業員は出ていった。

 扉が閉まると、その影に隠れていた別の白い男が立ち上がった。

 肌が砕けるかのように、白い粉が落ちた。

 目を見開くと、木嶋に向かって歩いてくる。

 そして今、首を絞めにかかっている白い男と手を重ねるようにして、そいつも首を絞めてきた。

 絞められる手に抵抗しなければしないで、苦しさが増すばかりだ。

 木嶋は必死に幻影に抵抗する。

 背後にも気配がして、木嶋は振り返った。

 ベッドの陰から、三人、さらに奥に五人。

 次々に真っ白な男が立ち上がり、目を開く。

 全員、目指すのは木嶋の首だ。

「やられるか! 絶対にだ!」

 木嶋はどうすれば助かるのか、全くわからないまま囲んでくる白い男たちに抵抗を続けた。




 別の用途で部屋を使うと言われ、永田(ながた)は木嶋と実験した監視カメラやレコーダーを片付けていた。

 ほぼ片付けも終わった頃、その部屋に堂守(どうもり)菜々子(ななこ)が現れた。

 声をかけようか迷っていると、菜々子が口を開いた。

「木嶋さんは?」

「ここ数日は、署に来てない、って聞いたけど」

「私、言っておかなきゃいけないことがあるんです」

 永田は作業をやめて菜々子としっかり向き合った。

「言ってみてくれ」

「木嶋さんとコンビニの空き地に言ったとき、血だらけの女性の見たと言いました。多分、誤解されているんじゃないかと」

「よくわからん。木嶋さんがお誤解したと思っているんだ?」

 菜々子はメモを取り出して確認した。

「血だらけの女性としか言っていないんです。だから……」

 離している途中で永田に声がかかる。

「ちょっと待ってください」

「永田!? おい、永田、急げ!」

「悪い菜々子、木嶋さんに直接言ってくれ」

 菜々子は、急いで部屋を出ていく永田を見送るしかなかった。




 莉々(りり)は都心にある、大きなオフィスビルに来ていた。

 受付でQRコードを渡されるとゲートを通過して、誘導されたエレベータへ向かう。

 ちょうど来たエレベータに乗ると大手の不動産会社の受付フロアでおりた。

 ビジネススーツの人々の中で、莉々のカジュアルな服装は少々浮いていた。

 受付業務を行なっている人のところへ向かうと、後ろから声をかけられた。

堂守(どうもり)様ですね」

「……」

 莉々は振り返ると、そこには大柄の男性が立っていた。

「えっと……」

 首から下げているネームプレートを手に取り見せながら、

「電話で話を伺っていた佐藤(さとう)です」

 名前も、声も、何度か電話で聞いたことがある人だ、と莉々は思った。

「ご案内します」

 そう言うと佐藤は受付とは反対の方向に進んでいく。

 莉々が戸惑っていると、佐藤は立ち止まって彼女がくるのを待った。

 莉々は決意して佐藤についていく。

 佐藤は、非常階段の扉を開けると、言った。

「階段になってしまいますが、一つフロアを上るだけなので」

「……」

 普通の顧客と扱いが違うのには慣れている。

 莉々はそう思って、黙って階段を上がった。

 一つ上のフロアで案内された部屋は、小さな打ち合わせ室だった。

 簡単な作りの長机とパイプ椅子。

 莉々は佐藤に言われるまま、そこに座って待っていた。

 やがて佐藤が、一人の若手社員を連れて戻ってきて、佐藤はそのまま席を外した。

「いただいた書面ですが、土地の所有者の方に確認して、気になるところがあるそうでして」

 莉々が送った書面を印刷したものを見ながら、いくつか所有者が気になるという点を確認した。

 若手社員は持っていた封筒から何かを探しながら言う。

「そうですね。それであれば祓っていただいて構いません。ただし先ほどから言っている通り、日中に行なってください。夜間行うと、ご近所に迷惑をかけることになります」

 それが終わると、若手社員はオーナーの印が入った書面を莉々に渡した。

「これが許可書と言うことになります」

「では早速、場所に入りたいのですが」

「ええ、いきましょうか」

 若手社員は立ち上がった。




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