第906話 恐竜の魔物が棲む島 妖精さんからの情報
誤字脱字を修正していますが、内容に変更はありません。
「そういえば、島に妖精さん達が居たよ」
「「妖精?」」
兄達の夕食を届けるために島へ行った際、妖精さん達が居た事を伝えると、双子達は揃って声を上げる。
王子だった2人も、妖精の存在は知らなかったらしく驚いていた。
「ファンタジーな世界だし、居ても不思議じゃないけど妖精を見た事はないなぁ~。どんな姿をしているの?」
遥斗が妖精に興味津々な様子で尋ねてくる。
「う~ん、それがね……私達のイメージとは違って、体格の良い中年男性の姿だったわ。恥ずかしがり屋なのか滅多に人前には現れないんだけど、手紙を書いてくれるから意志の疎通は図れるわよ」
「何だ、それ? 羽とか生えてないのか?」
妖精の姿を聞いた雅人は、怪訝な表情で口を開く。
「羽はなかったと思う。そもそも私より背が高いし、薄い羽があっても飛べないんじゃないかしら?」
「妖精のイメージが……中年男性なんて、夢がなさすぎる」
がっかりして見せる遥斗に、
「この世界の妖精さんは、可愛らしい姿じゃなくて肉体派のようよ! 凄く強いんだから!」
「知らないほうが良かった……」
強さをアピールしてみたけど、弟は妖精に強さは求めていないらしい。
微妙な顔で黙ってしまったため、妖精談義はお開きにしよう。
実家を出たあと、再びシルバーと一緒に島へ移動する。
妖精さんの家が恐竜の魔物に壊されないか心配だったけど、マッピングで見る限り家の周囲に魔物の姿はなかった。
妖精さんは強いので、魔物も簡単に倒せるんだろう。
一応結界を張ったまま、視界に入った魔物をアイテムBOXに全て収納しておく。
家へ帰ってから、お供え用の料理を作り、お風呂に入って眠った。
翌朝、土曜日。
朝食と昼食は、双子達にホーム内の飲食店で食べるよう言ってある。
彼らの家をホームに設定した時点で、口座に入っているお金は自由に使用出来るからね。
土・日は基本休日にしているため、Lv上げも休みにした。
好きに過ごして、ホーム内を満喫してほしい。
日本と変わらない生活が可能なホーム内で、不自由だった異世界での経験を比べて女性化魔法の必要性を感じてくれれば助かるんだけど……。
私も久し振りに1人でモーニングを食べに行こう。母も偶には家事から解放されて、のんびりと朝を過ごしてほしい。
お気に入りの喫茶店に入り、ウインナーコーヒーとモーニングを頼む。
モーニングの小倉トーストと半熟のゆで卵は無料なので、支払うのはウインナーコーヒー代だけだ。
店によってモーニングの時間は異なるが、この店は12時までやっているから遅く行っても大丈夫。
これでもかと盛られたクリームをスプーンですくい、その甘さに頬を緩めながらコーヒーを味わう。
あぁ、幸せ~。未だにコーヒーチケットは使用出来ないけど……、いつか使える日がくると信じているのだ。持っていた枚数×365にしてあるので、無駄にならない事を祈っておこう。
1時間ほど喫茶店で優雅な時間を満喫して家に戻り、掃除と洗濯を済ませてから妖精さんの食事を作る。
ガーグ老の工房で訓練をしていた時は1食だけをお供えしていたけど、これからは3食必要になるんだろうか?
20人分を3食作るのは結構大変だなぁ……。
大量のカレーを煮ながらフライパンでナンを焼き、そんな事を考える。
妖精さんの生態は、よく分からないからガーグ老に聞いてみようかしら?
取りあえず、今日は昼食を夕食を届けよう。
日曜日。
いつもなら子供達の炊き出しをする日だけど、私は行けないので母親達に任せよう。
時計を見て、そろそろガーグ老の工房へ皆が移動した頃だと思い、兄に連絡を取ってみた。
『お兄ちゃん、おはよう。もう子供達の炊き出しは終わった?』
『おはよう、沙良。炊き出しを済ませて、ガーグ老の工房に居るぞ』
『あっ、じゃあガーグ老に代わってくれる?』
『少し待ってくれ』
暫く待つと、通信の魔道具からガーグ老の声が聞こえてきた。
『サラ……ちゃん、大変な目に遭ったな。一人で大丈夫か? 困っている事はないか?』
『ガーグ老、心配をお掛けしてすみません。私は一人でも大丈夫ですよ』
実際は、島に飛ばされてもホーム内で生活しているとは言えないため、平気なフリをしておこう。
『それより、島に妖精さん達が現れたんです。ガーグ老が私の所に行くよう、お願いしてくれたんですか?』
『島に敵が潜んでいると聞いてな、儂に何か出来る事はないかと頭を捻ったのだ。敵の排除は妖精達に任せるがいい』
やはり、妖精さん達はガーグ老が送ってくれたらしい。
『ありがとうございます。敵の襲撃を警戒しなくて済むのは助かります。ただ妖精さん達の人数が多くて……、お供え物は1日3食必要でしょうか?』
『あやつら妙に張り切っておったが……。いやいや、妖精には元々食事など必要ない。サラ……ちゃんの気持ちだけで充分だ』
張り切る? よく分からないけど、妖精さんに食事は不要らしい。
お供え物を食べていたのは、嗜好品を口にするような感覚と同じなのだろう。
生命維持に必要ないなら、1日3食用意しなくても良さそうね。
でもわざわざ遠い場所に来てくれたのだから、1食分は作ってあげよう。
『あ~それで昨日、妖精から連絡が入ったところによると、敵はアシュカナ帝国の人間ではなさそうだ。1人捕まえて、ごう……ゲフンゲフン……尋問した際に聞き出した話では、教会が絡んでいそうな感じであった』
昨日、簀巻きにされていた人数が19人だったのは、妖精さんが1人尋問していたからなのね。
『教会ですか?』
思わぬ情報に目をぱちくりさせる。教会に狙われる原因が分からない。
光魔法に適性がある兄や旭ならともかく、私はダンジョンでヒールを使用してないし、目を付けられた覚えもない。
教会がダンジョン内に設置した移転陣を踏んでしまったのは、偶然なのか……。
それとも、本当に私を狙ったものだった?
『まだ全てを聞き出せていないそうだから、分かり次第、内容は教えよう』
『そうですか……。じゃあ、お待ちしています』
教会に狙われる心当たりがない私は、もやもやとしたものを感じながら思考を巡らせる。
教会かぁ……。魔法の習得方法を考えると、貴族との繋がりが深い組織だ。
公爵令嬢だったリーシャの身分を思えば、あまり関与したくない。
私には知られると拙い能力が色々ある事だし……。
現れた敵は全て捕獲済みだけど、何らかの連絡手段を持っていれば筒抜けだろう。
移転の能力は既に知られてしまったと考えるのが妥当か。それだけでも、教会が動くには充分な情報かもしれない。
アシュカナ帝国と違い、教会が戦争を起こす事はないにしても、困った事態になった。
組織を挙げて包囲されれば、逃げ切れない可能性がある。
カルドサリ王国から、拠点を他国に移すべきかしら?
『沙良ちゃん、大丈夫なのか? 俺が代わってやれれば……』
物思いに耽っていると、やけに深刻そうな樹おじさんの声がした。
ホームに居ると分かっているのに、何をそんなに心配しているのだろう。
『樹おじさん? 双子達用の腕輪をマジックバッグにしてもらえませんか?』
ちょうど良い機会だと思い、マジックバッグの作製をお願いする。
『それくらい簡単だ。他に何か俺に出来る事はないか?』
当然そう言われても、現状困っている事はない。
強いていえば、先ほど聞いた教会の件くらいだ。
『特には問題ありません。兄に代わってもらえますか?』
『はぁ……娘の役に立ちたいのに……』
なんだか、召喚してから樹おじさんが私を雫ちゃんみたいに扱うんだけど……。
『沙良、妖精が島に居るなら安心だな』
ガーグ老の話を聞いていたのか、樹おじさんから代わった兄がほっとしたように零す。
『うん、昨日も敵を簀巻きにしてくれたよ。教会が絡んでいるのは厄介だけど……詳細が分かるまでは心配しないで。渡した服や食品は足りてる?』
『新しい服がほしい。あと、洗濯もお願い出来るか? 食パンとコーヒーを追加で頼む』
教会の件には触れない兄の要望を聞き、
『了解。夕食時にルシファーに持たせるよ』
通信の魔道具を切った。
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