今シーズンは、もう終わり?
(天空都市群グングニル中央島北東地区:第二円形闘技場)
「うーん……。そう考えると、やっぱり、厳しいかしらね。今年の七帝昇格は」
練習を再開して二日目の昼休み。
キーロと俺は、今後の展望について、話しあっていた。
「……極力、後ろ向きな言葉は口にしたくないが。厳しいものがあるな。年内の昇格は」
「そうね……。ちょっと、現実的じゃないかも。ツキがない限りは」
俺達二人は、二人三脚で、ランク11位まで昇ってきた。
ここまでは、かなり順調だったのだが、やはりここから先には、運も必要になってくる。
「そうだな。ツイてなきゃ、無理だな。祭典を控えた七帝の誰か一人でも、指名戦を受けてくれれば、話しは別なんだが……」
「……やっぱり、現実的じゃないわよね。はあ……」
お昼のサバサンドを咀嚼し、ため息をつくキーロ。
年末にある最大の祭典、チャンピオンズゲームを控えた状況の七帝達が、元七帝である俺との試合を、この大事な時期に受けてくれる見込みは、かなり薄そうだ。
はっきりって、九割くらいは、すでに今シーズンは終わったものと考えて、よさそうだが……。
「心配すんなよ、キーロ。来年は、開幕から試合に試合を重ねて、さっさと七帝まで駆け上がってやるから。そうすれば、推薦状の調達も、お前の受験までには間に合う。そうだろ?」
「うん……」
一応、頷いてくれたが、これはかなり気にしているな。
天空闘竜士としての俺を、信頼してないわけではない。
それでも、『万一』の可能性に、不安になるのは当然だ。
ましてや、キーロは難関大学の受験生。
俺の主治医までやっている状況を考えると、やはり心労は大きいに違いない。
……ああ。もう少し、こいつと出会うのが早ければなぁ……。
なんて、情けない仮定の思考が芽生えそうになるのを、さっさと追い払う。
「お前は良くやってくれてる。後は、俺がそれに答えるだけだ。俺を、信じてくれ。この氷息帝を、もっと信頼しろよ、キーロ。期待を裏切るほど、俺は脆くないぜ?」
「それは……、分かってるわ。ミリアムハートJrとの試合で、分かったことじゃない。でもね、人間、心配事が幾つもあると、それがおのおの影響し合って、膨れ上がっちゃうのよ」
と、彼女はまたため息をつく。
うーん、今日のキーロは、なんだかすごくブルーだ。
ずいぶん、覇気がないな。
やっぱり、昨日の記事を、気にしているんだろうか?
例の『魔女記事』については、やっぱり、知らせない方が良かったんじゃないかなぁ。
それとも、ミリアムハートJrの言うように、いずれは知ってしまうことだったんだろうか。
「……こういう話をしても。得るものは、何もないわね。午後の部、始めましょうか」
キーロも、俺と同じように、考え込んでいたのだろうか。
迷信を追い払うように、頭を振り、表情を切り変える。
「人事を尽くして、天命を待つ。私達に出来ることは、それだけよ! さ、アニマ―ジュ!!」
キーロは、閉鎖的な状況でも、けして腐らない。
なら、俺も仕事しなきゃな。
俺の仕事は、強くなること!
「おう!」
威勢よく応じ、俺はアニマ―ジュする。
巨大な飛竜が、キーロの頭上を優雅に舞う。
「じゃあ、今日は外周からよ! じっくり天空都市の周りを飛んでくること!!」
「了解!!」
「今日はツキを呼ぶために、七周よ!!」
「それ、洒落じゃん」
「いいわね?」
つっ込んだ俺。
だが、キーロの笑顔からして、奴は本気である。
まあ、気分転換も必要か……。
「わかった!! 行ってくる!!」
俺は、地上にまで届くほど翼で風を捉え、第二円形闘技場を後にした。
目指すは、天空都市の沿岸宙域だ。
――そして。
――この七周が、俺達にツキを呼ぶことになった。
(続く)




