魔王軍全滅
急展開が続きます、すみません
俺がコケッティを倒した後、皆もカオスを倒したようで駆け付けてくれた。
その後突如として魔界の軍勢らしき大軍が現れ、俺を殺しに来たと告げてくる。
だが突然現れた二人というか一柱によって、半分が消し飛ばされる。
……いきなりのことすぎて、何が何だか分からん。
急展開にも程があった。ドSとヘラの二人がいるのは分かっていたし、いつかは出てくるつもりだろうと思っていた。でもまさか、今のタイミングとは思わなかった。……まあ有り難いから別にいいんだけど。俺達は魔力切れしていて、体力もあまりない。ここでの助太刀は有り難いことだった。
「くっ……! まさかこんな辺境の地にヘラがいるとはな! だが我らの王ベルゼブブ様にかかれば貴様など――ぷぎゅっ!」
偉そうに語っていた魔族がヘラの起こした超重力で圧し潰された。……うわぁ、容赦ねえ。
「……ハヤテとヘラか」
俺は二人の名前を呟く。ニヤニヤ笑いを浮かべてヘラを足蹴にしているが、実力はかなりのモノだという。さらにいえばあれでヘラを大切にしているらしい。
……金髪に紅い瞳。少し青白いと見える肌。やっぱりというか全裸で、惜しげなくその豊満な肢体を晒している。首輪をしているのも相変わらずだ。だが、大きさが違った。普通の女性ぐらいだった身長が、三メートルくらいまで大きくなっている。多分だが、神としての力を解放すると大きくなる――というか本来の姿に戻りかけるんだろう。
強大な魔力がヘラの全身から迸っているのを感じる。……さすがに神だけあって、俺達が万全の状態でも勝てないと思わせる程の魔力だった。気も相当なモノで、到底勝てそうになかった。今は味方だと思うので、ホッとする。
「……ヘラ。蹴散らせ、命令だ」
「はいっ、ご主人様」
こんな場面でも主従関係は途切れないらしい。ハヤテが命令すると、ヘラは嬉しそうに顔を綻ばせて右手を伸ばし、魔方陣を展開する。
「……グラビティ・デス」
ハヤテに命じられて返事した時とは異なり、冷酷な声音で呟く。魔王軍の兵士達はなす術もなく上下からの重力によって、肉塊へと変えられた。
「「「……」」」
凄惨で圧倒的なその光景に息を呑む俺達でも、重力を扱うメティが一番ショックだったようだ。どの程度の魔法なのか、知っているからだろう。
「……これで問題ないか」
ハヤテがポツリと呟く。……いやいやいや、たった二発の魔法であれだけの軍勢を壊滅させるとか、どんなバカげた存在だよ? まあ神なんだから当然なのか? ってかあんなのに勝負挑んで、よく生きて帰ってこれたな、グラン?
「ヒャッハー! 俺らは魔王ベルゼブブ様直属の四天魔だぁ! てめえらは俺らがぶっ殺す!」
「……殺、す」
「まあ、僕の美技にかかれば君達程度は瞬殺出来るけどね」
「……だりぃ。ちょぉだりぃ」
……何かまた変なヤツら出てきた。ってかこいつらの魔力半端なっ。さっきのヘラの魔法を回避しやがったのか。
見た目は戦闘狂、殺戮マシーン、ナルシスト、黒ギャルって感じだな。一体一体が滅茶苦茶強い。こんなヤツらが魔界にはゴロゴロいるんだろうか。魔王っつっても色々いるみたいだしな。
「……おい。生き残りがいるだろうが」
「ああんっ。ごめんなさい、ご主人様ぁ」
四体の生き残りを出したことでハヤテがヘラをグリグリと足蹴にし、しかしヘラは嬉しそうな声を上げる。……イマイチシリアスになれないヤツらだな。まあ、この程度が相手じゃシリアスにすらなれないっていうんだろうけど。
「余裕ぶっこいてんじゃねえぞこらぁーっ――ぷちゅっ」
「……殺、す――ぐちゅっ」
「ふふん。僕の美技に酔いしれ――はぎゅっ」
「……だりぃ――ぐしゃっ」
……。
…………。
容赦ねえ……。結局一人残らず超絶重力によってミートボールへと変えてしまった。しかもグリグリと足蹴にされながら、だ。詠唱も何もせずに魔法を放ち、俺が一対一で戦っても勝てるかどうか分からない程強いヤツを、圧潰させた。あり得ない強さだ。メティがキュッと俺の裾を掴んで若干怯えている。
魔物相手では圧倒的な強さを誇る仲間達も、神やらと契約しまくったリフィアでさえも、唖然としてその光景を見ている。……俺なんかが足を踏み入れられる領域じゃなさそうだった。
少なくとも、足を踏み入れたいとは思えなかった。
俺達が頑張ってアンドゥー教と戦ってきたのは何だったのかと思う程、圧倒的すぎる強さ。ヘラがその気になればアンドゥー教は半日とかからずに壊滅していただろう。
「……ったく。てめえらが出てくる程のことかよ?」
空間を乗っ取ったらしき魔王軍が全滅しても解除されてない創造空間だったが、保持されていた。おそらくヘラ辺りが維持させているのだろう。だって神だし。
そこに、一人の青年が空間を裂いて降臨した。
神々しい剣を肩に担ぎ、白いYシャツに黒いズボンという格好なのに軽薄そうな、アクセサリーなどでチャラついた青年。
金髪金眼のイケメンだが、どこかいけ好かない雰囲気を纏ったそいつの全身から迸る魔力は、今ヘラから感じるそれよりも遥かに上だった。
「よぉ、ヘラ。愛しい旦那が来てやったぜ。わざわざ、人間界までな」
ニッと笑って言うそいつに、ヘラは嫌そうな顔で応える。
……ヘラの旦那と言えば、あいつしかいない。しかもこれ程の魔力を持つ存在なんて数える程しかいないだろう。
その答えは、ハヤテが言ってくれた。
「……ゼウス」




