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英雄、やります(仮)  作者: 星長晶人
アンドゥー教編

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81/85

ゼウスの目的

遅くなりました、すみません

「……ゼウス、だと……?」


 驚きの声を上げたのは、おそらくグランだ。

 神々しい輝きに魅入ってしまい、呆然とした頭でそう推測した。


「おう」


 ゼウスと思われる青年はこちらを見ずに返事する。


「まあてめえらに用はねえけどな。用があるのはそっちの、ヘラだけだ。神が人間に追従するなんざ、ホントはあっちゃいけねえことだからな」


 どうやらゼウスは、ハヤテのパートナーであるヘラを連れ戻しに来たらしい。……じゃあ俺関係ないじゃん。神と神の対戦とか嫌なんだけど。


「……神様同士の対戦とか止めろよ。他所でやってくれ」


 俺は出来るだけ軽い調子を意識しながらやれやれと嘆息する。……いやだって、ヤバいんだよ。ゼウスから感じる魔力が。下手したらヘラより高いかもしれない。少なくとも、俺達の誰よりも高い魔力を持っている。俺からしてみれば、桁違いの魔力だ。到底勝てるとは思えない。


「そうしたいとこなんだけどよ。自分で空間創るとかメンドいだろ? だから丁度良く転がってたこいつに介入してやった、って訳だ」


 ゼウスはチラリと俺を見て言ってくる。……神は心を読むとかいうのが普通だが、こいつはどうなんだろうか。

 というかアンドゥー教司祭が頑張って(?)創った空間を転がっていた、とか次元が違う。俺なんかは空間創ったのか凄いな、と思っていたのに。


「――で、渡してくんねえか?」


 ゼウスはスッと目を細めて雰囲気を一変させる。今までは、桁違いの魔力を持つチャラ男。今は絶大な魔力を持つ化け物。この差は歴然。だがおそらく、ゼウスはまだ威嚇程度にしか思ってないのだろう。……俺なんか、威嚇だけで結構ビビってるってのに。

 ゼウスの強大すぎる魔力に中てられた俺は、膝をガクガクと震わせていた。……ああ、クソ。自分の無力さが恨めしい。もしこのチャラ男が「いい女がいるな、寄越せ」と言ってきても無残な死を遂げてから奪われるだろう。勝てる訳がなかった。


「……ご主人様」


 その時、ギュッと柔らかくスベスベな手が俺の手を握った。俺の手は既に手汗で湿っている。そして俺をご主人様と呼ぶのは数人しかいない。


「アーティア……」


 圧倒的な力に怯える俺に、真っ先に寄り添ってくれたのはいつでもメイド服を着たアーティアだった。いつもと変わらない彼女の姿が、今では有り難く感じた。アーティアに先を越された他の仲間達も俺に寄り添ってくれる。先程まであった不安など、すっかり消えていた。


「……悪いな、皆」


 俺は、真っ直ぐにゼウスの殺気を受けた訳でもないのにビビっていた自分を恥じた。


「いえ。ご主人様をお守りするのが私の役目ですから」


 しかし俺の謝罪に首を振る。……ホントに、俺には勿体ないヤツらだよ。


「……誰が好んで自分のペットを渡すか」


 俺達がイチャイチャしている間にも、ゼウスとハヤテの睨み合いは続く。ハヤテはバッサリとゼウスの申し出を断った。最早踏み台と化したヘラがビクッと身体を震わせて嬉しそうな顔をしていた。


「へぇ? 代替わりしたとはいえ、全能神ゼウス様に逆らうってのかよ?」


 するとゼウスはより一層闘気を強めた。……代替わりって何だよ。神様に世代交代なんてモノがあるってのか? どっちにしろ、ゼウスには変わりないんだろ。滅茶苦茶強いのは一緒だろうに。


「……当たり前だ。そもそもお前がちゃんとこれを管理しないことが発端だろう。そんなお前にとやかく言われる筋合いはない」


 ハヤテは途轍もない力を持ったゼウス相手に、堂々と言い張った。……お前凄いな。ゼウスと並ぶヘラを従えるだけのことはある。俺なんかビビッて正面から戦えないし。勝てる訳ないからな。


「はっ」


 ゼウスは面白いという風に鼻で笑う。


「そりゃそうかもな。けどよ、神が人間風情とつるんでやがることが問題なんだよ」


 ハヤテの言葉に頷き、しかし目を鋭く細めて告げる。


「……とか言って、ヘラ取られたのが悔しいだけだったり?」


 俺は愛し合う(?)二人を分かとうとするゼウスを茶化す。ギロリと睨まれてしまったが。


「……お前は黙っていろ。こいつは俺が殺る」


 内心ビビりながら肩を竦めた俺に、ハヤテが言ってくる。どうやらこうなることを見越していたらしい。そして、そのために来たのか。……いや、もしかしたら魔王ベルゼブブだっけ? そいつの軍勢が来ることを知っていたのかもしれない。それで、助けに来てくれた、と。まあ考えすぎかもしれないけどな。ハヤテが何考えてるのかなんて、俺には分からない。


「俺に勝てるってんのかよ?」


「……当たり前だ」


「いいぜ、てめえがそう言うなら容赦しねえ。力づくでも奪ってくだけだ!」


 ピキリ、と額に青筋を浮かべたゼウスが、肩に担いでいた剣を思いっきり振り下ろす。……おおう。俺が全力で雷電術式を放った時の数倍ある威力の雷が、斬撃となって放たれた。魔力を全て使い果たしても一撃でここまでの破壊力が出せるか。やっぱり俺は勝てないな。早く逃げたいんだが、出口が分からない。というかこんな物凄い衝撃を受けてまともに動ける訳がない。


「……この程度か」


 しかし、俺ではない英雄は少しつまらなさそうに嘆息した。


「……ゼウスの剣」


 静かに呟くと、ゼウスが持っている剣と全く同じモノがハヤテの手に現れた。……そういや、神と契約してるリフィアが神の武器を使ってたな。ヘラ関連の神だから使えるんだろうか?

 ハヤテは迫りくる超絶の斬撃に、剣を横薙ぎに振るうことで対抗した。ハヤテの持つ剣からもゼウスが放った斬撃と同等の雷が放たれ、ぶつかり合って相殺される。……嘘だろ。こんな超次元的戦闘に巻き込まれるのか? 周囲を気にしなければ、即死ぬだろう。


「……てめえ、まさか……っ!」


 斬撃を相殺されたゼウスが、目を見開いて驚いていた。……斬撃を防がれたことに――じゃないな。この驚き様は、おそらく斬撃を防ぐ程の力にか。それともゼウスの剣を使ったことに対するモノかのどっちかだな。


「……ヘラ、殺るぞ。邪魔者は排除するのみだ」


「はい、ご主人様っ♪」


 ゼウスの剣を携えたハヤテと、嬉しそうな声を上げるヘラ。二人はゼウスに突っ込んでいく。本格的な、神と神の戦闘が始まった。

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