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英雄、やります(仮)  作者: 星長晶人
アンドゥー教編
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黒白の運命

遅れました、すみません

 俺が考え事をしながら階段を駆け上がっていると、いつの間にか上り切っていることに、最後の一段を上がったことで気が付いた。


 そのせいで攻撃に気付くのが遅れ、眼前に迫った黒い波動を避けることは出来ない。


「しまっ……!」


 第四術式を使うにも間に合わず、死ぬと思った。


 だが、黒い波動は眼前で見えない何かに当たり、弾かれた。


「……問題ありません、主。私を誰だと思ってるんですか?」


 冷静な声が、慌て乱れた俺の心を静めてくれる。


「……ああ。でも悪い、ボーッとしてた」


 俺は頼もしさを感じながら、謝る。


 ディメスは白帝竜・カイザードラゴン。ドラゴンの中でも珍しく、防御に優れたドラゴンだ。


 おそらくディメスが張ったのだろう虹彩を持つ見えない壁は役目を果たして消える。


「……ふっ、ははははっ! はーっはっはっはっは!」


 六階の奥から、高笑いが聞こえた。楽しげな、男の声だ。


「……相変わらずのようじゃねえかよ、ディメロウス!」


 そいつは攻撃を防いだディメスの名前を呼ぶ。知り合いだろうか?


 さっきの攻撃と同じ、漆黒の鱗をしたドラゴンだった。だが、その鱗はディメスと違って細かく、さらにワイバーンであるグランよりも小さい身体。小さく見える中に獰猛な性分と狂暴な力が隠されているのが分かる。角や背鰭は刺々しく、尾はかなり長い。


 ……まあ、小さいつっても三、四メートルはあるんだけど。


 この部屋の構造はどうなっているのか、床はなく、あるのは空だけ。


 まるで、ドラゴン同士がフィールドを気にせず戦えるように設計された階だ。


 奥に階段が見えるので、飛ばなければ辿り着けないだろう。


 だが。


「……ここはディメスに任せて先行くわよ」


 俺はひょい、とフィネアに脇を抱えられて、バサッ、と翼を羽ばたかせると、奥の階段に向かって飛んでいく。敵がディメスに引き付けられている訳でもないのに、隙だらけだ。


 バサバサとグランが鳥の姿のまま飛んでついてくる。何をしたのかメティも浮いてついてくる。


 俺達は基本飛べるので問題ない。が、こんなに隙を見せて大丈夫なんだろうか?


 そう思った矢先、そいつが黒い波動を放ってきた。が、それは見えない壁によって防がれる。……ディメスが守ってくれると分かっていたから優々と飛べるのか。


「……主達には指一本触れさせません」


 ディメスの冷静な声が聞こえた。


「……ああん? なら防いでみろやぁ! ーー黒帝砲ッ!」


 ゴアッ! という唸りを上げて、全てを呑み込み破滅させるような黒がそいつの口から放たれた。


「……白帝盾」


 神々しくさえ見える光が全てを包み込み守護するような白が壁となって黒を遮断する。


 俺達はディメスの邪魔にならないように、素早く階段を駆け上がっていく。


 ピシッ。


 ……え?


 俺は後ろから聞こえた不吉な音に、思わず振り返ってしまう。


 そこで見たのは、黒い波動を受ける白い壁にヒビが入っているところだった。


「ディメス……!」


「何してるの、早く行くわよ!」


 俺が思わず足を緩めると、フィネアに背中を押された。


「……ディメスの盾がヒビ入ってたんだぞ!? ヤバいんじゃ……」


「当たり前でしょ! 同レベルの竜相手に真の姿じゃない状態で勝てる訳がないじゃない」


 俺が言うと、フィネアに怒鳴られた。


 ……そうか。だが相手も本気じゃなかった。感知した魔力からして、もっと強い攻撃が出来るハズだった。


「……あいつは黒帝竜・カイザードラゴンだ。ディメスーー白帝竜・カイザードラゴンと対をなす攻撃特化のドラゴン。一度やり合ったが、結構危なかったな。黒帝砲と白帝盾はあいつらの代名詞でな。最強の矛と最強の盾と言われる程、強い。……まあどうせ、ディメスを追っかけてきたんだろうな。人工魔物に乗っ取られている感じでもない」


 代わってグランが説明してくれた。


「……追っかけて?」


 何やら事情を知っているようなグランに聞き返す。


「……確か、あの黒い方ーードラガリュウズの片想いで、追っかけをやってると聞いたことがあります」


 メティが虚空を眺め、思い出すように言った。……追っかけって……。ストーカーかよ。


「……同レベルなら勝てるか負けるか分かんないんじゃないか?」


「勝つわよ。それに、加勢なんてしたらディメスに殺されかねないわ。そういう宿命なの。二対の竜が殺し合うのは古代からの宿命。変えられない運命なのよ」


 はっきりと断言し、どこか諦めたような口調で言った。


「……分かった。今はディメスを信じて先に進むしかないか」


 俺は頷き、だんだんと相手が強力になっていっていることに不安を覚えながらも、階段を速度を緩めずに駆け上がる。

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