星銀河組
遂に七階まで辿り着いた俺達だが、残っているのは俺、フィネア、メティ、グランのみ。
このメンバーでまだ先があるこの空間を制覇出来るのかという不安はあるが、七階。
そこには広大な大地が広がっていて、俺達は丘のような場所に出た。一直線に丘の上を走れば次の階段へと行ける。
だがもちろん、この階にも敵がいる。
一言で表現するなら、恐竜の群れだろうか。
立派で太く曲がった角が二本側頭部から生えている、肉食恐竜。手は小さいが図体はでかく、「ギャオオォォォォ」と吠えて襲ってきそうな感じ。ジュラ○ック・パークに出てきそうだ。
そんな恐竜が百数十体いて、中には一際でかいヤツもいる。
中でも最も大きいのは、全身に傷のある歴戦の猛者を思わせるヤツで、なんとなくだが、目付きが鋭く怖い。
二番目に大きいヤツは、左目に縦一文字の傷痕がある。
……なんとなく怖いんだよな。
「ウオオオオオォォォォォォォ!」
「ぐっ……!?」
群れの中の一頭が吠え、身体が重くなる。ミシミシと地面にめり込んでいく。
「……バカもんがぁ……。しっかりせんかぁ!」
左目に縦一文字の傷がある恐竜が怒鳴る。
「……ボスの前で生き恥さらしてんじゃねえぞこらぁ!」
喧嘩腰だったが、その一喝が効いたようで、そいつは咆哮を止め、身体が軽くなった。……これはおそらく、重力加算。グラビティか。
「……すまねえ、ヤっさん。俺としたことが、情けねえ姿を見せちまった」
そいつは首を振って傷ありに謝る。
「……いいってことよ。てかよぉ、この俺達の身体にいやがる人工魔物っての、面倒だな。気ぃしっかり持てよ、てめえらぁ! ボスの前で情けねえ姿見せんなぁ!」
「「「っす!!」」」
傷ありの言葉に、他全員が片膝を着いて頭を垂れる。
「……お久し振りです、お嬢っ!」
傷ありも同じような姿勢を取り、傷だらけのヤツだけが立っている。
全員、こっちを見ていた。と言うより、恐竜だし、重力使うし、一人だけが当てはまる。
「……メティ」
俺達三人も、メティを見ていた。
「……は、はあ。お久し振りです、皆さん」
忠誠を誓うような相手の格好に、メティはぎこちない笑みを浮かべて言った。口元が引きつっている。
「……おう、メティラティ。久し振りだな。で、その男は誰だ? ああん?」
一番でかいヤツがメティに話しかけたかと思うと、何故か俺を、物凄い怖い顔で睨んできた。……ヤクザだ。絶対ヤクザだ。
「……シューヤさんです。私を召喚してくれました」
メティはビクッと肩を震わせながら、俺の服の袖口を掴んで言った。
「……ってことは、そいつがメティラティを拐った張本人ってことだな?」
「……あいつ、俺達のお嬢を……!」
「……ぶっ殺す!」
「……ミンチにしてやる……!」
ギロリ、と全員が俺を睨む。……全身に炎のようなモノが見えるのは、俺の気のせいだと思いたい。
……何だこの恨まれ感。
「……ふん。まあいい。どうせ人工魔物に乗っ取られた身だ。自由には出来んからなぁ。戦わなきゃならねえ……! だがメティラティを傷付けるのは組としての名折れ! あの男を狙え!」
……キャー。
メティの父親らしき一番でかい恐竜が、ドスの効いた声を張り上げた。
……怖い。正直に言って怖すぎる。
メテオグラビトンレックス達は、すぅ……、と大きく息を吸って上体を反らす。……ああ、これは多分ブレスか咆哮だな。
さすがに何十体もいると防げないような気になってくる。
「「「メテオ!!!」」」
結果から言えば、それは咆哮ではあったが、こっちを怯ませるような生易しいモノではなかった。
天に轟くような咆哮は、何も起こさないかに思えた。
だが、メティが上空を険しい表情で睨んでいるのを見て、俺も上を見上げ、確信した。
ヤバい、と。
ある漫画で見たことのあるヤツだった。いくつもの光が星のような空にあり、だんだんと大きくなっているようだった。
メテオから連想すると思うが、隕石である。
しかも一体が一個なので、かなり多い。
「……おいおいおい……!」
思わず顔がひきつってしまう。
このままでは全滅だ。こんな超状現象を止められるヤツなんていない。
「……下がってください」
知り合い達の登場時に怯えていたのが不思議な程しっかりとした声で、メティが一歩前に出た。
「……グラビティボール」
右手をスッと伸ばし、迫り来る隕石に向ける。何をするのかと注視していると、黒い楕円形の球をいくつも、隕石一つにつき一つの球を放つが、規模は明らかに隕石の方が大きそうだった。
他の皆も特に慌てた様子はなく、メティが無理だったとしても自分で防げるという自信だろうか。頼もしすぎる。
俺の心配は、見事に霧散する。
メティの放った黒い楕円形の球が当たった瞬間、隕石が何かに押し潰されたのだ。
……おそらく、重力をかけて潰したんだろう。
「……メティラティ。何故その男を庇う」
「……私が望むモノをくれた人で、これからも一緒にいたいと思えるからです」
ギロリ、と睨まれたメティはしかし、しっかりとした口調で答えた。……ちょっと気恥ずかしい。
メティが望むモノが何だったのかは分からないが、メティが良かったと思ってくれるならそれでいい。
「……人間と付き合うなんざ許す気はねえ。これからもついていく気なら、てめえを慕う俺達を、倒していけ!」
父親らしきメテオグラビトンレックスが怒鳴る。他の全員も気合いを入れ直したようだ。
「……分かりました。メテオレイン!」
メティはあまり間を開けずに頷くと、呪文を唱えた。
……メテオが隕石一個だったから、レインーーつまりは雨のように降ってくるってことかな?
「「「……ぎゃああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」
空から降ってくるいくつもの隕石に、逃げ惑う恐竜達。恐竜絶滅の絵を見ているようだった。
「ちょっ、ちょっとお嬢! 俺らマジで死にますから、待って!」
キャーキャー言いながら隕石を避ける恐竜達。
「……今の内に行ってください。ここは私一人でやらせてください」
メティが隙を作ったからか、言う。……自分の親もいるみたいだし、ここはメティに任せるべきか。
「……任せたぞ、メティ」
俺はメティの頭をぽん、と軽く叩いて走り階段へと向かう。
グランとフィネアも俺に続き、メテオレインのおかげもあって無事に階段へと辿り着く。
……このままだと一番弱い俺が最後まで残りそうで嫌だ。最初で留まれば良かったんじゃないかって思えてくる。
だが俺はここまで来れたのは皆のおかげなので、その想いをアンドゥー教司祭にぶつけて殴ってやらなきゃいけないと思い、先に進むことだけを考えて階段を駆け上がる。




