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英雄、やります(仮)  作者: 星長晶人
アンドゥー教編

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57/85

炎帝と蒼炎帝

遅れました

次回はもうちょっと早い予定です

 五階。


 上がる階段で、こんな声が聞こえた。


「……ったく。何やってんのよ、下の階のヤツらは」


「まあ仕方ないんじゃない? 所詮自我を失う雑魚だし」


「言えてるー。XY級なのに何やってんのって感じー?」


 どこかギャルを連想させる話し声だ。


「……」


 その声に心当たりがあるのか、ナティアがビクッと震えた。……怯えてる?


 俺は少し不安になったが、階段を上り切る。


「あらぁ? ナティアミゼルじゃん。おひさー」


「……人間の姿を取ってまで、人間に媚び売って生きてる訳?」


「マジウケるー。落ちぶれメスライオンー」


 嘲るような声と視線。それらは全てナティアに向けられていた。だが不思議と疑問はない。


 そいつら三体が、炎帝・フレイオスだったからだ。


 ナティアと同じーーいや、ちょっと違うが、赤い炎の鬣をした黒い獅子。声はギャルなので、またしてもメスなのに鬣があると言うことだ。炎帝・フレイオスは皆こうなんだろうか。


「っ……!」


 名前を呼ばれて、ナティアはビビっていた。全身は震え、顔は真っ青だ。……こいつらの様子から考えるに、いじめを受けていたのかもしれない。


「……ナティア。俺達でやろうか?」


 俺は震えるナティアの頭にぽん、と手を置き言った。


「っ!」


 それにナティアの震えが止まる。


「……あらぁ? 何あんた。それ人間でしょ? 人間に飼われちゃってるの? ダサァ!」


 一体が言うと、他二体も嘲笑する。


「あはははっ! 笑える、超ウケるんですけど! そんなのに飼われる落ちぶれちゃん、カワイソー!」


 ……ウザいな。あっちの世界でもこんなのはいたが、あまり、いい気はしない。


「……誰が落ちぶれだって?」


 ピキピキ、と俺の指先が凍り始めているのを見て、俺は慌てて手を引っ込める。


「誰って、あんたに決まってーー」


 そこから先は続けられなかった。


「……私のご主人様を侮辱すると、殺すよ?」


 俺が、俺達が見たことのない冷たい目で、ナティアは右手をそいつに伸ばしていた。


「氷!?」


 凍らせたのだ。……何故炎帝なのに氷。


「……誰を、殺すって!? あたし達があんたなんかに殺される訳ないでしょ! 落ちこぼれの分際で、氷が使えるからって何よ! 炎を使うあたし達に、勝てる訳ないっての!」


 驚いていた他二体だったが、激昂し氷を溶かして出てきた一体の言葉を聞いて、持ち直す。


「……氷を破った程度でいい気になって」


 そう言うと、ナティアは真の姿を現す。


 三体と同じ炎の獅子。だが、その鬣は蒼い。それに、ナティアの方が少し大きい。


「なっ……!」


「何よ、その炎! そんなのなかった!」


 ナティアの蒼い炎を見て三体が驚愕に目を見開く。……ん? どういうことだ?


「……あの頃は出さなかっただけ。だって違うでしょ?」


 ……ふむ。どうやら、ナティアは隠していたようだ。


「……ここは私一人で充分。先行って」


 ナティアはこっちを見ずに言った。……大丈夫、みたいだな。


「……ああ。ナティア、過去に何があったのかは聞かない。何をされていても許してやれ、とは言わない。ーー殺れ。お前の好きなようにな」


 俺は少し笑いながら、しかし最後は冷たく告げた。


「あんたごとき、私だけで充分!」


 一体がナティアに飛びかかっていく。


「……弱すぎ」


 ナティアは冷たく呟くと、蒼い炎でそいつを焼いた。


「っーー!」


「……私は蒼炎帝・フレイオス。炎と氷を使う、炎帝・フレイオスの突然変異よ! あんた達みたいな雑魚、私一人で充分!」


 ナティアは宣言すると吼えた。それに三体は怯む。


「このっ!」


 三体はナティアに向かっていくが、蒼い炎に行く手を阻まれる。


「ナティア、死ぬなよ!」


 俺は呼び掛けてから、奥の階段まで駆け抜けていった。


「……自我を保ったまま人工魔物に乗っ取られていましたね。XY級でも無理だったのに、どういうことでしょうか?」


 ディメスが階段を駆け上がる最中で言った。


 ……正直、俺もそう思った。だが、あいつらの意志を感じたのでちょっとよく分からなかったのだ。


「……自我の強さなんじゃない? XY級でも、破壊の限りを尽くすだけのヤツは完全に乗っ取られるとか」


 フィネアが自棄気味に言うが、案外的外れじゃない気がした。


 今現在もアーティアとリフィアが戦っているであろうXY級やその他の強力な魔物達。


 それらは完全に人工魔物に乗っ取られていた。


 そして悪寒が走るような笑みを浮かべて、俺達の道を阻んできた。


 だが、ナティアが戦っている炎帝・フレイオスは、ナティアにしか興味を示さず、また俺達に攻撃してくるようなこともなかった。


 人工魔物は司祭の命令を聞くそうだから、おそらく足止めとか上へと上がる階段の死守とかを命じられているのだろうが、それがなかった。


 乗っ取られているからここにいるが、自分の意思で動いている。


「……」


 俺はシュウを通して司祭と話した時のことを思い出していた。


 残り半分ぐらいある階段の内、残る敵は。


 あの時指差したのは、亜人であるエイラ、メテオグラビトンレックスであるメティ、戦女神・ヴァリキリーであるフィネア、機竜・ワイバーンであるグラン、炎帝・フレイオスであるナティア、最高傑作の一人であるアーティアだ。


 実際、亜人はもう出てきたし、炎帝・フレイオスも出てきた。おそらく、どこかにアンドゥー教最高傑作であるカオスもいるだろう。


 だとしたら次はーー。

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