残留組
アンドゥー教との全面戦争が開始されて十分と経たない内に、二つの階段を駆け上がった。走ったのは、後ろから追ってくるんじゃないかと言う懸念があったからだ。
その懸念は無駄だったようだが、三階と数えていいだろうそこに、さっきよりも強力な魔物達が控えていた。数はちょっと少ない程度だが、それでも余りある戦力差があった。
「……ドラゴンやワイバーン、レックスもいるな」
見たことがないので種類は分からないが、仲間達が驚いているようなので、そこそこ強いんだろう。
「……S級やSS級、果てはXY級までいるわね。まさか、私と同等レベルでも支配下に置くなんて……」
フィネアが冷や汗をかいて言った。
「……ここは全員でやった方がーー」
「私が残りますので、お先へどうぞ、ご主人様」
俺が全員で戦おうと言い切る前に、アーティアが言った。
「……アーティア。いくらお前でも、この数の魔物を相手には……」
俺の言葉に他も頷く。
「大丈夫ですよ。皆さんそうは言いますが、一人でも何とかなるって思ってるんじゃないですか?」
アーティアが微笑んで言うと、俺以外が目を泳がせた。……こいつら相手に一人でいけるって思ってんのか、お前ら。
「私も残るよ、お兄ちゃん」
俺が皆に呆れた視線を向けていると、リフィアが言った。
「……リフィア」
「大丈夫だよ、お兄ちゃん。これくらい余裕だって」
リフィアは笑顔を見せて言う。……その笑顔の裏には全く不安はなさそうだ。
「……分かった。二人に任せる。その代わり、死んだら許さねえからな」
俺は嘆息して言い、二人を睨む。
「はい♪」
「うん、任せて!」
二人は笑顔で答えて魔力を開放していく。リフィアからは魔力とは別の、神力と言う力も感じる。
「シヴァの槍!」
俺の創造術式で創った偽物なんかじゃなくて、シヴァと契約して使えるようになったオリジナルだ。
リフィアは先端が三つに分かれた紅蓮の槍を出現させると、それを槍投げの要領で投擲した。
……って、投擲!?
「おまっ、槍なんだから槍として使えよ、もったいねえ」
俺は驚いてリフィアに言うが、リフィアの投げたシヴァの槍は、上位の魔物をモノともせず爆炎を撒いて突き進んでいき、一気に階段までの道が開けた。
「でも、お兄ちゃん。私、槍術なんて使えないし、投げた方が使い道があるんだよ」
リフィアはにっこり笑って言う。……まあ、本人がそれでいいんなら、いいか。
「……じゃあ、頼んだ」
俺達はその開けた道を駆け抜ける。
階段に足をかけたその時。
「……それでは、一掃しましょうか」
普段とは違う冷えたアーティアの呟きが聞こえた。
すでにかなり人数が減ってしまった俺達だが、遂に四階まで辿り着く。
「……亜人と、神聖鶏騎士団!?」
ニヤニヤと嫌な笑みを浮かべたエルフやダークエルフ、獣人達と神聖鶏騎士団が待ち構えていた。……いや、こいつはーー。
「……人工魔物」
ディメスがポツリと呟いた。他も同じ考えのようで、特に驚きはない。
「「「……」」」
応戦しようかとも思ったが、後ろ、階段から二つの魔力が猛スピードで上がってくるのを感じて、俺達は左右に道を開ける。
「ぬおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
雄叫びを上げて、険しい表情をした長身のイケメンが飛び出した。その腕には茶髪の美少女抱えられている。
ムートガランとその主、チアキだった。
「……ふーっ。ふーっ」
着地したムートガランは息を荒く乱しながら、ギロッと神聖鶏騎士団を睨んだ。
「……ハニー。ハニーを拐ったヤツ、いるか?」
ムートガランはチアキを地面に下ろし、聞く。……どうやら、チアキを拐ったヤツに報復するために来たようだ。
「……う~ん。いないけど、私を拐おうとした人ならいるよ?」
チアキは神聖鶏騎士団の顔を見渡し、考え込むようにして言った。
「……そうか。丁度いい、全員ぶっ殺す!」
ムートガランは八つ当たりを宣言すると、真の姿を現す。
鋼色の鱗があり、全体的に見ればドラゴンのようだ。ズラリと並ぶ鋭い牙、爬虫類特有の瞳、角やトゲ、雄々しい翼、スラリとした胴体、細長く先にトゲが付いている尻尾。纏う雰囲気は猛々しい怪物そのものであり、その大きさはなんと、百五十メートルぐらいある。……俺が知る魔物からすると、到底戦えない程大きいんだが。頭から尻尾までの長さだ。こんなヤツが空を飛んでいたら、マジビビる。
「死ねぇ!」
キュウゥン、と開けた口に光を集束させていき、ゴウッ! と光線を放った。異空間が壊れるんじゃないかってくらいの轟音を立てて神聖鶏騎士団を消し飛ばすが、それだけでは終わらない。ムートガランは首を横に振り、さらに左のヤツらも一掃していく。……恐ろしい。
「……ここはスルーするか」
俺が言うと、他も頷いてくれた。
さすがに今のムートガランの怒り状態を見て加勢と言うか、巻き添えさえくらいそうなここに残る気はしなかったのだろう。
俺達は敵よりもムートガランに注意しつつ、奥にいる階段へと駆け抜けて、そのまま上がっていった。




