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英雄、やります(仮)  作者: 星長晶人
アンドゥー教編

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32/85

幸せと決意

「ヘラ?」


 俺はそれを聞いて首を傾げる。


 確か、ヘラって神じゃなかったっけ? ゼウスの妻だとか言う。


「……相まみえるのは初めてか、ヘラ」


 グランはヘラを知っているらしい。


「知ってるのか?」


「ああ。俺のいた幻想世界では有名だったな。暇をもて余したヘラが魔物狩りをしている、と」


「あの頃の私は欲求不満でしたから。あんなチャラ男(ゼウス)の妻になんてなりたくなかったですし、今は凄い満たされていますよ」


「……見られて悦んでるのか」


 俺は軽蔑した視線をヘラに向ける。


「あっ。そんな目で見られたら興奮してしまいます」


 何故か軽蔑されて悦んでいた。


「メスが」


 ぐりぐりとヘラの尻を踏みつけるハヤテ。


「あぁん! もっと踏んでくださいご主人様!」


 何故か、もっと悦んだ。


「……ドMで痴女で変態で。とんでもねえ女神だな」


「もっと罵倒してください!」


「……とりあえず、魔物をパートナーにするんだろ? 何でヘラって言う女神を連れてるんだ?」


 戦女神・ヴァルキリーのように例外じゃないだろうし。


「俺達の世界ではギリシャ神話最強の女神がヘラだからな。俺に相応しい強さの魔物がいなかったんで、ヘラを召喚した」


「はい。世の中がつまらなかった私は当初、ご主人様に召喚されても人間ごときのパートナーになるつもりはなかったんです。そこでご主人様は私を調教し、辱しめ、立派なペットに仕立てあげてくださったんです!」


 いや、そんなにうっとりと言われてもさ。


「……あの悪名高きヘラが痴女と化していたとはな。まあ、俺の妾にも似たようなのがいたが」


 グラン止めて。罵倒するとヘラが嬉しそうな顔をするから。


「で、何の用だ?」


「ああ、悪い。お前らにアンドゥー教を殲滅するのに協力してもらおうと思ってな。嫌だったらいいぜ? ハヤテ、人に従うの嫌いそうだし」


「……時と場合による。俺もアンドゥー教は殲滅対象にしているからな」


 意外と承諾してくれた。


「わかった。これ、お前らに来てほしい日時な。よろしく」


 俺はムートガランに渡したような紙切れをハヤテに渡す。


「……」


「じゃあ、幸せにな、お二人さん」


 俺はそう言ってハヤテとヘラと別れる。


 ▼△▼△▼△


「シューヤ、か。軽いように見せて意外と頭が回るらしいな」


「……はい。さすがは、術式を使える少年ですね。しかも、戦女神・ヴァルキリーの異端、白帝竜・カイザードラゴン、機竜・ワイバーンの王、メテオグラビトンレックスの突然変異、蒼炎帝・フレイオス、改造が施された人間、亜人種が二人、炎系の神、魔物と契約した人間。それらを連れる者ですから」


 シューヤが去った後、ハヤテとヘラは考察を述べる。


「まあ、敵ではないならいい。俺の計画を邪魔しなければな」


 ハヤテは言い、ヘラを見下す。


「今日の散歩でなりふり構わず発情しやがったからお仕置きしてやろうと思ったが、今日は特別にご褒美だ」


「ご主人様、嬉しいです」


「帰って三日間、ご褒美タイムだ。俺のことしか考えられないようにしてやる」


「……はい! ご主人様」


 ヘラは満面の笑みでそれに答えた。


 ▼△▼△▼△


「……あれは真性の変態だな」


 俺は最近アーティアを変態じゃないかと思い始めてたんだが、ヘラと比べればまだまだだな。


「ふむ。本質的にはアーティアと同等か。シューヤ次第ではあれくらい出来るようになるぞ」


「……恐ろしいこと言うなよ」


 グランに半眼で言う。……アーティアは一般から見れば変態だが、ヘラまではいかない。そう思いたい。


「それに、あんまりアーティアの裸を他の男に見せるのは抵抗あるしな」


 違和感あるし。


「独占欲が強いな。まあ、男はそれくらいでもいい。あのハヤテと言う男は、ヘラが他の男になびかない絶対の自信と誰かが欲情しようが返り討ちに出来る自信があるからやっているのだが」


 へぇ。やっぱ、ヘラ連れてるだけあって強いんだろうな。一回見てみたい。


「最後に筋肉バカんとこか。家帰ったらリフィアがうるさいだろうから、出来るだけのんびりしねえと」


「……まあ、あちらにも家庭がある。都合を考えねばならんぞ」


 そういや、ちゃんと結婚してるのってそいつだけなんだな。チアキもハヤテもミランも、恋人まがいはいるが、結婚はしてないらしい。チアキは恋人だけどな。


「ただの知り合いとして、会いたい気もするな」


 そしたら、子供によく遊びに来るお兄ちゃんの位置にされそうだ。


「シューヤよ。あそこにいるぞ」


「ん?」


 グランの視線の先に、幸せそうな家族がいた。


 筋肉隆々でマッチョな二十代のスポーツ刈りの兄ちゃんと、長く艶やかな金髪に蒼い瞳をして柔和な笑みを浮かべている美人な女性。女性は腕に一歳ぐらいの赤ちゃんを抱えている。二人は談笑したり、赤ちゃんに話しかけたりしている。


「……なあ、グラン」


「何だ?」


「今まで俺以外にあいつ含めて四人のプレイヤーを見てきただろ?」


「ああ、そうだな」


「……皆、幸せそうだな」


「シューヤは幸せではないのか?」


「……いや。幸せだよ。でも、何だろうな。幸せの感じ方があいつらとは違う気がする」


 ハヤテは自分の調教にも悦んで耐え抜くパートナーを持ち。


 チアキは自分を大切に守ってくれるカッコいいパートナーを持ち。


 リフィアは俺に会うと言う夢をこっちに来て叶え。


 筋肉バカは幸せな家庭を手に入れ。


「……もしかしたら、あっちでつまらなくなっていた人を呼び、幸せを提供してるのかもしれないな」


 創造神とやらは。


「知らん。だが、新しい場所で自分なりの幸せを得ることは悪いことではない」


 グランの言うことも最もか。


「ま、今日は止めにしよう。後でギルド寄った時に伝言頼んどくか」


「……シューヤよ。お前の幸せとは何だ?」


「俺が知るかよ。そんなん、俺がやりたいことやってれば見つかるだろ。今はーー」


 俺は幸せそうな家族に背を向け、


「ーーアンドゥー教を潰す」


 言った。


「ふん。お前も男だな。戦いは男にとって楽しみの一つだ」


「……グラン。そろそろアンドゥー教に接触するぞ。お前も息抜き程度にクエスト受けておけ」


「ああ」


 俺は決意を持って虚空を睨んだ。

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