変態共との邂逅
「……でかいな」
俺はグランに教えてもらい、チアキとムートガラン宅に来ていた。
「ふむ。シューヤの家よりは大きいな」
リフィアを送ってから合流したグランが言う。
確かに、俺の家よりでかい。金持ちの別荘くらいの大きさはあった。豪邸だな。
「貴族みたいな家だな」
庭も綺麗に整理されてる。
「ベルがあるな。これを鳴らせばいいのか」
俺の世界のインターフォンのようなものだろう。
チリンチリン。
「……」
「……気配はあるが、出ないな」
気配はあるらしいが、出てこなかった。
「……入るか」
俺はドアに手をかけ、開ける。無用心にも、鍵が開いていた。
「うっ!」
俺はドアを開けた瞬間、中から漂う匂いに顔をしかめる。
……俺はつい最近この匂いを味わったので、どういう意味を持つかわかった。
ある行為を続けた際に漂う独特の匂い。
「……まあ、わからないでもない」
俺は昨日が初めてだったが、ついハッスルしてしまった。……ディメスが初めての緊張やら何やらで疲れなければ、それこそ徹夜してたくらいには。
「俺はわからんな。オークやオーガなど、知能が低く、人間を孕ませて快楽を得る魔物か、淫魔などでなければしない。俺は王である俺の子孫を残すように妾としていた程度だからな。第一、人間は快楽を得るためもあるが、魔物は繁殖のためが多い」
……グランって、大人だな。
「快感でもないのによくたくさんの妾を作ったな」
「……シューヤよ。お前は一つ勘違いしている」
?
「その行為は繁殖のためだが、快感もある。……ついでだが」
……要するに、結局快感を得るためも混ざってる訳か。
「その点は人間も魔物も変わらないんだな」
別にいいけどさ。
「……まあこの話はこの辺にしよう。昼間から話すことじゃない」
「真っ昼間からそれをしてるヤツもいるけどな」
俺は苦笑して、中に入る。
「ムートガラン? チアキ? いるか?」
少し大きな声で呼ぶ。
「……何だ、グランディアとその主か」
少し疲れたようなムートガランが出てきた。
「……昼間から何をやっている」
グランが呆れたような声を出す。
「俺とハニーが何しようと勝手だ。いきなり押しかけて、何の用だ?」
服装は急いで着たのか、適当だ。
「チアキはどうした?」
「今シャワーを浴びている。グランの魔力を察知したからな。お前らの可能性が高かった」
なるほど。
「今回は特にない。アンドゥー教を少し襲撃してくれればいい。日取りはこれだ」
俺はムートガランに紙切れを渡す。
「……ハニーと離れる訳にはいかない」
「断るならそれでもいい。アンドゥー教殲滅のシナリオは出来てる。ムートガランがいれば成功する確率が高くなるってだけだ」
俺は肩を竦めて、ムートガランに背を向ける。
「そろそろ俺は仕掛ける気でいる。急用があったらグランを向かわせるから」
「ああ」
ムートガランは多分、チアキがどうするかによって決めるだろう。
▼△▼△▼△▼△
「グラン、次は筋肉バカかドSに会いたいんだが、どこにいる?」
「連れているパートナーの魔力で大体の居場所はわかるぞ」
「じゃあ、ドSの方から案内してくれ」
「何でだ?」
「……俺の勘だ」
「そうか」
グランは勘だというのに、頷いて案内してくれた。
「そいつは大広場にいるな」
まあ、ギルマスの話を聞く限りじゃあ、会いたくない部類の人間だが。
「大広場にいるのか。どんなヤツだろうな」
「……会えばわかる」
グランは気が進まないようだ。
しばらく歩くと大広場に着いた。大広場とムートガランとチアキの家はそこまで離れていない。
「……」
俺はあるものを目にして立ち止まる。
「わかったようだな。あれが目的の人間だ」
その二人の周りには、一定の距離を保って人だかりが出来ていた。
ニヤニヤしながら歩いているどこかの学生服を着た蒼髪蒼の瞳の少年。
恍惚とした表情を浮かべながら、四つん這いで歩く、金髪紅い瞳の美女。美女は全裸に限りなく近いくらいに布面積の少ない服装で、首に金属製の首輪をしている。その首輪に鎖が付いていて、鎖は少年が持っている。肌は青白かった。
「……何やってんだ」
同じ世界の人間として恥ずかしい。
ーー三人称視点ーー
「……ご主人様」
四つん這いの美女が自分の主である少年を呼ぶ。
「喋るのを許可した覚えはない」
少年はそう言って美女の頭を踏みつける。
「……」
少年は周りを見る。いつも通り、距離を開けて人が集まっている。その視線は美女の身体に向けられているが、一人だけ少年を呆れた様子で見ている少年がいた。
「ご、ご主人様」
踏まれて嬉しそうな声を上げる美女を少年は一瞥し、
「喋るのを許可する」
足をどけた。
「あっ……。ご主人様、あれは魔物でも上位の者です」
美女が残念そうな声を上げて、灰色の鷲を見据えて言う。
「……」
少年は鷲ではなく、少年を見ていた。
「行くぞ」
「はい」
美女に言い、少年は鷲を連れた少年の方に歩く。
「グラン、変態がこっち来るんだけど、どうしよう」
「さあな。あれはあれで強いのだ」
失礼なことを言われても顔色一つ変えずに近付く。
「俺に何の用だ?」
「ありゃ? バレてんじゃん。まあいいけど。俺はシューヤ。お前に頼みがあって来た」
「……シューヤのパートナーのグランディアだ。機竜・ワイバーンの王でもある」
灰色の鷲、グランディアが言う。魔法がかかっているのか、周りには聞こえていないようだ。
「俺はハヤテだ」
「私はご主人様のパートナー……あっ!」
美女が言うと、ハヤテは頭を踏みつけた。
「お前は俺の何か、わかっていないようだな」
「はい、ご主人様。私はご主人様のペットの、ヘラです」
ヘラは踏まれて嬉しそうにしながら言う。




