炎神の妹、登場
「……」
俺はグランと二人で中央広場の噴水前に来ていた。
「五人組の顔ってわかるか?」
五人組なんてどこにでもいそうだし、魔物の姿を取っている可能性も低い。
「うむ。大体だがわかるぞ。任せておけ」
自信たっぷりに答えるグラン。
「むっ? あれがそうではないか?」
グランは一つの五人組を指す。
「……君がシューヤくんかい?」
その先頭にいた爽やかな好青年が話しかけてきた。
「……ああ」
俺はこういう人種とはあまり付き合いがない。こういういい人間は協力してくれる。だが、どっちかと言うと、悪い人間の方が付き合いが多かった。
「俺はミラン。これでも日本人で、イギリス人のハーフなんだ。東京に住んでたよ。職業は剣士だ」
職業か。気にしてなかったな。
「俺はシューヤだ。日本人で、東京に住んでた。職業は術式使いだったな」
まだ初期職だ。
「術式?」
「俺固有の能力だと。共闘することがあれば見せる」
ミランは金髪碧眼のイケメンだ。背も高く、後ろの面々を見ても、ハーレムの可能性大だ。金色の鎧に金色のマント。左腰には長剣が差してある。
「……何か、勇者一行って感じ?」
ミランを筆頭に、勇者、戦士、魔法使い、僧侶、もう一人はよくわからない。仮面と黒マントで覆っているからだ。
「ああ。勇者を目指している。そこの仮面の彼女は訳あって一緒にいるだけで、もう一人誘う予定だよ」
仮面黒マントは女性らしい。
「俺はミノスだ。ミランのパートナーのミノタウロスでな。そっちのグランディアとはよく殺り合ったもんだ。戦士の役割だな」
ミノスという、大柄なおっさんが言う。金属鎧に身を包み、背に二メートルはある斧を背負っている。無精髭だ。
「私はウィネスニアよ。ウィネって呼んで。ミランのパートナーのブラックウィッチ・ウィザードドラゴンね。通称は黒魔女竜よ。そっちのグランディアとはよく殺り合ったものね。魔法使いの役割よ」
黒いローブに黒い帽子。一メートル程の杖を持っている。水色の髪の美少女だ。
「私はツァイトリネです。ツァイトと呼んでいただければ。ミランのパートナーの白蛇です。蛇神の方ですよ。グランディアさんの噂ぐらいは耳にしています。僧侶の役割です」
白い法衣を着ている。二メートル程の白い棍を背負っている。白髪白眼の美人だ。
「彼女はリフィアだ。俺達と同じ異世界人のプレイヤーなんだよ」
「へぇ。まあ、よろしくな」
仮面黒マントはリフィアと言うらしい。
「ん? リフィアはパートナーがいないのか?」
「違うよ。パートナーは見せないようにしてるんだよ」
なるほど。変化出来なかったら隠した方がいいもんな。
「……」
……何か仮面から視線を感じる気がするんだが。
「ああ、今日シューヤくんに会いたいって言ったのはリフィアなんだよ」
「えっ?」
いや、理由がよくわからないんだが?
「……」
仮面黒マントじゃどんな顔してるかわからないから誰かも検討つかないし。
「まあ、理由はリフィアから聞いて。それと、いつか君達と試合をしたいね。君の所にグランディアがいると知ってから、二人が戦いたがってるんだ」
ミランが苦笑して言う。
「ああ。アンドゥー教の件が終わったらな。人工魔物の件も終わってない内にやるつもりはない」
「わかってるよ。俺も勇者を目指す身だから、倒すんだったら呼んでくれ。出来るだけの協力はするよ」
「ああ、よろしくな」
俺は頷いて、仮面少女を見る。
「どうする? 俺に用があるんだろ?」
「……ここでいい」
仮面少女の声は俺と同年代ぐらいの少女の声だった。
「そうか」
どっかで聞いたことがあるような声だな。
「ーー久し振り、かな?」
少女が仮面と黒マントを取り去る。
「あーっ!」
その顔には見覚えがあった。
「……何で、ここに?」
「えーっと、会いたかったからかな、お兄ちゃん」
長い紅髪ツインテールに紅い瞳をした美少女だ。紅、朱、黄、白の四色で出来たドレスを身に纏っている。ミニスカだったが。
「……」
「私はお兄ちゃんより前に召喚されて、お兄ちゃんがリストに載ってたからこっちに来たんだよ」
「……シューヤ、誰だ?」
グランが堪えられないように聞いてきた。
「ああ。リフィアは俺の生き別れた義理の妹だ。実際には会ったこともない。電話で話したり、写真で見た程度だ」
「うん。一週間前くらいにこっちに来て、ミラン達に同行させてもらってたの。お兄ちゃんが来るまででいいからって」
……そこまでしなくてもいいだろうに。
「生きてたって知ったのもつい最近なんだぞ? 会っちゃダメって言われてたしな」
何で俺に会うために来てんだよ。
「……本当はあっちの世界で会いたかったのに。お兄ちゃん、私もお兄ちゃんと一緒にいさせて?」
「何でだよ。ミラン達についていけばいいだろ。俺に会うまでだろうが、正式にパーティーを組めばいい」
「やだ。私はお兄ちゃんと会うために来たんだもん。折角会えたのに、また離れるなんてやだ」
「……」
そう言われてもな。リフィアを危険に巻き込みたくないんだが。
「シューヤ、お前の妹はかなり強い。魔力を感じるだけでも俺達と同等に戦えるだけの力は持っている。それに、神殺しでもなければ殺すことなど出来ん」
グランはリフィアの味方らしい。
「……わかったよ。グランを信じる」
降参して軽く両手を上げる。
「で、何でそんなに強いんだよ?」
「うん。だって、神様と契約しちゃったから」
にっこり笑顔でとんでもないことを言う。
「……どういう意味だ?」
「えーっとね、炎系の神様全員と契約して、炎系の魔物全員と契約したの」
「はあ?」
何だそれ。
「パートナーはいないけど、炎を使わせたら超一流なんだから」
リフィアはスレンダーな体型なので、あまりない胸を張って言う。
「……失礼なこと考えてるでしょ」
ジト目で見られてしまった。
「別に」
「……むぅ。まあでも、もう誰かのパートナーになってる子はダメだけど。あと、行方不明とか」
ふーん。
「んじゃ、リフィアは俺の家に行ってろ。ミラン達もありがとな」
「ああ。じゃあ、また」
「ありがとー」
手を振ってミラン達を見送った。
「それで、お兄ちゃんの家ってどこ?」
「グラン、案内してやってくれ。あと、念話でチアキとムートガランとこまで案内してくれ」
「わかった。こっちだ、リフィア」
「また後でね、お兄ちゃん」
飛翔するグランに手を振りながらついていくリフィア。
「……何で、来てんだよ……!」
俺は顔を歪めて呻いた。




