魔王・ベルゼビュート
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「がはっ!」
薄暗い中、一人の王が吐血をした。
「大丈夫ですか、ベルゼビュート様!」
ベルゼビュートお付きの悪魔がおろおろしながら声をかける。
「……ああ。おそらく、人間界に送っていた十七の俺様直属の使い捨て配下の内の誰かが殺られたな」
「まあ、あんな雑魚ですからな。ベルゼビュート様の骨の武器を持とうとも、使い手が弱ければ意味がありません故」
「確かにな。だが、人間界に俺様の骨を砕く程の実力者がいるのか。我が可愛い直属の配下達が集う『蝿騎士団』に入れたいものだ」
ベルゼビュートは配下が殺られたというのに、面白いとばかりに笑って言う。
所詮は使い捨て。気に留めることでもないというのか。
「そうですな。しかしベルゼビュート様。最近は人間界に別の世界から強者が召喚されていたようで。魔物を連れているなどという噂もございます。その別の世界の人間の可能性もありますな」
「ふん。生意気なヤツらだ。そういえば、最近は白帝竜・カイザードラゴンの噂を耳にしないな。ワイバーン最強とも言える機竜・ワイバーンも、戦女神・ヴァルキリーの異端も。黒帝竜・カイザードラゴンはどこかに去ったと聞く。人間界も騒がしくなったもんだな」
「ええ。白帝竜、戦女神、機竜の三体は人間のパートナーとして召喚されたのではないかと。黒帝竜は白帝竜を追って人間界に降りたのかと思われます」
「……他にも。メテオグラビトンレックスの娘が消えたそうだな。メテオグラビトンドラゴンを遥かに凌ぐ力だという噂だったが。殺された訳ではあるまい。蒼炎帝・フレイオスは人間に捕まったそうだが。最古にして最強のアスラバハムートもいない。あのクソ女神もいない。やりがいがないな」
「蒼炎帝以外は人間に召喚されたと思うのが妥当だと思われます。他にも、不死鳥・フェニックス、氷不死鳥・アイスフェニックス、竜王・ナーガラージャ、黄竜などの魔物が召喚されたものと思われます」
「ふん。人間に付くなどバカなヤツらだ。だが、人間は徒党を組む。もし強い魔物が一ヶ所に集まると、厄介だな。面倒臭い」
心底嫌そうに言う。
「そろそろ使い捨てに入れておいた蝿の記憶が届いたのでは?」
「……ふむ。届いたぞ。だがこれは、面白い」
「ベルゼビュート様が興味を持つことですか」
「ああ。お前にも見せてやる。目を抉れ」
「はい」
ベルゼビュートのお付きは躊躇なく右目を抉った。
「お、おぉ! これは……!」
ない右目でお付きは蝿の記憶を見る。
「ハハッ! こいつは面白いヤツだ! シヴァの槍にゼウスの剣を創った! 神器を創れる上に妙な力を使う! こいつは面白い」
ベルゼビュートは嬉しそうに、楽しそうに、面白そうに高笑いする。
「むっ? この記憶から魔力を探ります故、少々お待ちください」
記憶から魔力を探る。それはお付きの固有能力でもある。
「……気になることが?」
「はっ。……おそらく、彼は別の世界から召喚された者かと。そして、彼の周りにある魔力の残滓は戦女神の異端、白帝竜、機竜、蒼炎帝、メテオグラビトンレックスの娘、さらにはそれらに匹敵する程の人間の魔力です」
「ほう? こいつが俺様の好敵手とも言えるそいつらを召喚した、か。それほどの人間なら、戦いたいものだ」
ニヤリ、と笑う。
「彼のパートナーではないと思いますが、アスラバハムートとあの女神の魔力もあります。ベルゼビュート様が仰った通り、一ヶ所に集まっているかと」
「面白いな。下級悪魔共を蝕む人工魔物のこともわかった。その大元が消えた時、我が『蝿騎士団』を用いて総攻撃をする。それまでは蝿で人間界の様子を見ているか」
「はっ。そのように」
お付きが畏まって返事をする。
「では、新たに『蝿騎士団』を編成せよ。弱者はいらん。最強最凶最狂最恐の軍団を編成せよ!」
「はっ!」
魔界の王が、動いた。




