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英雄、やります(仮)  作者: 星長晶人
アンドゥー教編

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ディメスの想い

「あー、疲れた」


「お帰りなさいませ、ご主人様」


「……」


 まさか、異世界に来てそれをされるとは思わないさ。


 俺が帰ると、アーティアが出迎えてくれた。


「ああ、ただいま。そろそろステータスを確認しようと思うんだが」


「確認してないのですか? ステータスは小まめに確認してください。体力と魔力も表示されますから」


 確かに、魔力は把握しておかないと。


「ああ。ステータスってどうやって上がるんだ?」


「一番簡単なのは、レベルアップですね。身体を鍛えるとそれに応じたステータスが上がりますし、魔力は使っていると伸びます。運はアイテムで上がりますよ」


「へぇ」


「あと、結婚すると運が上がるそうです。妊娠、出産。それと、恋人が出来た、などです。要するに、幸せなことがあると上がる訳ですね」


「なあ、ベルゼビュートって知ってる?」


「はい。魔界の王の一角で、『蝿騎士団』という直属の軍団を持っています。それ以外の悪魔は雑魚という考えですね」


 ……もしかして、オリサはベルゼビュートに騙されていた、雑魚? 使い捨てなら雑魚で、人間界に何かがあったとしても雑魚一人が死ぬ程度ってことになる。


「さっきベルゼビュートの配下を名乗るレッサーデーモンに会ったんだが」


「レッサーデーモン? 何言ってるんですか? そんな上級悪魔程度がベルゼビュートの配下なわけがありません」


「……やっぱりか。ベルゼビュートに騙されて人間界の様子を見に来た悪魔と戦って倒した」


「レッサーデーモンでしたら、AA級ぐらいですね。さすがです、ご主人様」


 あれでAA級か。まあ、ベルゼビュートの骨は持ってたからな。ちょっと手強いかもしれないが。


「ゼウスの剣を使って勝ったのはいいが、武器に頼りすぎだな。もっと俺が強くならないと」


「いい心掛けです。ゼウスの剣というのは、神器ですよね?」


「ああ。創造術式で創った。まあ、使いこなせたもんじゃないが」


 自爆するようなもんだし。


「そうですか。ご主人様が武器を使われるのでしたら、少し教えましょうか?」


「ああ。そうしてくれると助かる。ステータスは明日にしよう。今日はすぐ寝る」


「そうですね。お疲れでしょうから」


 その後、アーティア、エイラ、イシアの料理を食べ、風呂に入ってアーティアに同じことをされたりした。


 ▼△▼△▼△▼△


「……お休み」


「お休みなさい、ご主人様」


「お兄ちゃんお休みなさい!」


「お休み」


 アーティアとイシアに見送られて、俺は三階の一番広い自分の部屋に向かった。


「あー、ねみぃ……」


 自室のワイドキングサイズのベッドに寝転ぶ。


 何でワイドキングサイズかって? ディメスがやたらと進めてきたからだよ。主だから全員の中で一番大きいベットにすべきだとか。


「にしても、何でワイドキングサイズなんだ?」


 ワイドキングベッドは幅2200㎜、長さ1950㎜の事実上最も大きいサイズだったハズ。ワイドシングルベッド二個分の大きさだな。


「……一人で寝るには寂しい程広いベッドだな」


 呟いて、結構高級なふわふわベッドを味わいつつ目を閉じ、しばらくして眠りに落ちていった。


 ▼△▼△▼△▼△


 コンコン。


 深夜を回った頃、シューヤの部屋のドアをノックする者がいた。


「主? 起きてますか?」


 ディメスだ。


「……」


 もちろん色々と疲れたこともあってシューヤは爆睡中である。


「……寝てるんですか? 入りますよ」


 ディメスはゆっくりドアを開けて静かに入ってくる。


「主?」


 もう一度声をかけて寝ているかどうかを確認する。


「……」


 返事はない。


 ディメスはゆっくりとドアを閉め、忍び足でシューヤの寝ているベッドに近付いていく。


「……一人で寝るには広いベッドですが、満遍なく使っているようで」


 シューヤは大の字になって寝ていた。……枕が変わると寝れないタイプではなく、どこでもあっさり寝れるタイプらしかった。


「主、起きてください」


 ディメスはシューヤの肩を掴んで揺する。


「ん~?」


「起きてください」


「……ん。もう朝?」


 爆睡中でも揺すられると起きれるタイプでもあるらしい。


「いえ。真夜中の十二時半です」


「……お休み」


 一度は起きたシューヤだったが、また目を閉じて寝ようとする。


「主、ベッドと心中したくなかったら起きてください」


 ディメスがシューヤの耳元で低く言う。


「っ! お、起きる! 起きるよ」


 シューヤもさすがに脅されては起きるしかなかった。


「やっと起きてくれましたか」


「……主を脅すとは、お前、実は俺のこと敬ってないだろ」


 シューヤはディメスが本気だったことを察して、ジト目でディメスを見る。


「いえいえ。殺気を込めないと主は起きてくれないと思ったので」


 ディメスはしれっと言う。


「……まあ、いいや。今度から起こす時はもっと優しく起こしてくれ」


「はい」


「んで? 何の用だよ、ディメス。こんな夜中に」


 この世界にはシューヤのいた世界のように、小玉の電球はない。明かりは光魔法を使っているが、丁度いい明るさはないのだ。だから、月明かりの薄暗い中である。


「女性が夜遅くに男性の部屋に来る場合、目的は一つでしょう」


「夜襲か!」


 ゴン。


「いってぇ!」


 シューヤは思いついて言うと、ディメスの軽い一撃が脳天に入った。


「……わかりませんか?」


 シューヤはディメスの格好に目をやる。うっすらと透けて何も中に着ていないことがわかる、白のネグリジェを着ていた。


「……何つう格好してんだよ」


 目を凝らせば見てはいけない部分まで見えてしましそうなので、シューヤは目を逸らした。


「人間の風習に従ったまでです。夜這いに行く時はネグリジェかメイド服だと」


「……無駄に従うなよ」


 確かにそれが一般的かもしれないけど、とシューヤは頭を掻いて付け足した。


「下着は着ていた方が興奮する方もいるそうですが、わからなかったので適当に」


「とりあえず、目のやり所に困るから着てきた方が良かったな」


「では、次からは着るようにします」


「さりげなく次の約束もしようと思ったよな?」


「? こういうことは毎日するものだと聞きましたが?」


 きょとんとするディメスに対し、シューヤは


「……誰情報だよ」


 と毒づいた。


「では、始めましょう」


「ちょい待て!」


 ネグリジェを脱ぎ始めたディメスを止める。


「……何ですか?」


「いや、もっと雰囲気あった方がいいんだけど。ってか、何で俺と、そういうことをしに来たんだよ」


「……私ではダメですか?」


「えっ? あ、いや……」


 不安そうなディメスにシューヤは戸惑ってしまう。


「……やはり、私では大きさが足りないんですか? アーティアの方がいいんですか?」


「えっ?」


 シューヤは心のどこかでわかっていたのか、自然と目線が顔から下に下がる。


「確かに他の三人を比べたら物足りないかもしれませんね」


 他三人とは、フィネア、メティ、アーティアのことだろう。


「……そんなことはないと思うんだが」


「嘘です。現に、アーティアとは風呂に二回も入ってたじゃないですか」


「……い、いや、あれは別に」


 ディメスの責めるような口調にシューヤは押されている。


「……主は、私ではダメなんですか?」


「別に、そんなことはない」


「でしたら……」


「いや。俺は、ディメスがそこまでして俺とそういうことをしたい理由が聞きたいんだよ」


「……主に尽くすのは当然とか、主が私のタイプだから、と言うことじゃなくて、ですか?」


「あ、ああ」


 シューヤは頷いたものの、俺がディメスのタイプ? と頭に? を浮かべていた。


「……仕方ありません。私は主を守らなくてはいけません。血を絶やさないためにも」


 ああ、とシューヤは納得した。


「……つまり、白帝竜・カイザードラゴンの血を絶やしたくないだけ、か?」


「……大部分はそれに当たるかもしれませんが、単純に主ならいい、と思ったのもあります」


 シューヤは少しだけ悲しそうな顔をしていたが、真剣に言葉を受け止めていた。


「……実を言うと、今日の失態のお詫びも含まれていますが」


「失態? ああ、人工魔物ん時か。別に気にすんなって言ってるだろ」


「……あの時私は感じたんです。主が乗っ取られた時、もう戻ってこないんじゃないかって」


 ディメスは不安そうに言い、俯く。


「その瞬間、憎悪と殺意が湧いてきて、主に戻ってきて欲しいと思ったんです。……それなのに主に攻撃をして、信じてもらえないかと思いますが」


「……ディメス」


「……」


「結果的に俺が戻ることが出来た訳だし、気にすんなよ。それに、そう思っててくれて嬉しいしな」


 シューヤは俯いているディメスの頭を優しく撫でる。


「……主」


「いいよ、ディメス」


「……主、本当ですか?」


「ああ。これで、信じてもらえるか?」


「えっ? ーーんっ」


 顔を上げたディメスに、シューヤはキスをした。


「……ま、俺は初めてだから期待すんなよ。努力はするが」


「……ありがとうございます、主」


 その後、しばらく二人は抱き合って、やがて重なった。

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