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英雄、やります(仮)  作者: 星長晶人
アンドゥー教編

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レッサーデーモンと魔界の王

「インドラの槍」


 俺は神器を呼び出す。


「……」


 それを両手に持って構える。


「ウゴォ!」


 一つ目の三メートル程の巨人。右手に棍棒を持っている。サイクロプスだ。


「はっ!」


 サイクロプスが棍棒を振り下ろしてくるのを、インドラの槍で砕く。


「雷脚!」


 棍棒がなくなって戸惑うサイクロプスに、俺は右足に雷を纏わせて回し蹴りを放った。


「ウゴァ!」


 脇腹に直撃し、サイクロプスが呻く。


「せぁ!」


 とどめにインドラの槍を振るい、サイクロプスを倒した。


「ふーっ」


 俺は晴天の空の下、森にいる。


 しかも独りで。


 あれから、雷雨は止み、晴れた。


 また行動を開始し、俺は独りで森に来てクエストをやっていた。


「……サイクロプスは余裕、か。そういや、レベルとかステータスとかあるのに放ってるよな。レベルアップのファンファーレがないからわかんないが。まあ、上がってるだろ」


 独り言を呟いて、インドラの槍をしまう。


「……雷は、ない。ちゃんと出来たみたいだな」


 空を見上げて確認する。


「……しっかし、インドラの槍は疲れるな。戦い慣れろ、とは言われたけど、強いヤツ相手なら使う時も来るか」


 ちゃんと使えるようになっとかないと。


「ケケッ。美味そうなニンゲンを発見したぞ」


「ん?」


 姑息そうなイメージを受けるその声に振り向くと、悪魔がいた。


 蝙蝠のような翼に黒い捩れた角。紅い眼。裂けて牙だらけの口。人型だが、尻尾があったりと、悪魔っぽい。全体的に赤い。


「……何だ、てめえ」


 俺は危険を察知し、身構える。戦う中で殺気を感じ取れるようになった。


「まあ、そう睨むんじゃねえよ。ニンゲン、お前、強いか?」


「弱いな」


 情けないが、はっきりと断言する。


「そうか? 俺は魔界の王、ベルゼビュート様の配下、レッサーデーモンのオリサっつうもんだ」


「……魔界の王、だと?」


 ベルゼビュートっつったら、かなり強いヤツじゃねえか。


「ま、配下っつっても下っ端の下っ端だがな。それでもちゃんとベルゼビュート様に選ばれてるんだぜ?」


 そいつは得意気に言う。


「……よく喋るヤツだ。で、人間界に何のようだ?」


「いや、なんでも、下級悪魔共が次々と人工魔物に寄生されてんだと。それで下っ端の俺が降りてきた訳だ」


「人工魔物は悪魔にも寄生するのか」


「まあ、俺は関係ないな。だってーー」


「うっ!」


 オリサの口から巨大な蝿が出てくる。


「体内に色んな虫飼ってるんだぜ。こいつはベルゼビュート様に貰った蝿だけど」


 ベルゼビュートは蝿の王と言われてるんだったな。


「もう一匹蝿がいるけど、そいつはベルゼビュート様に結果を伝えるためのヤツだしな。ニンゲン、お前何か知ってるか? 教えろよ」


「……アンドゥー教のせいらしい。最近は増えてるそうだ」


「意外と素直じゃん。ニンゲンは俺を殺しに来ないのか?」


「お前が殺そうとしない限りはな」


「そうかよ」


「ああ。人間にも寄生出来る。XY級の魔物にも寄生出来る。こんな情報しかねえよ」


「……よしっ。これでニンゲンを殺していけば、俺も上にいけそうだな」


「……まあ、そう簡単には殺されねえよ」


「そりゃ、楽しみだ!」


 オリサが口から何匹もの昆虫を吐き出す。異形の虫だ。


「……ったく。どこの美食會だよ!」


 俺は飛んでくる虫から距離を取るため後ろに思いっきり跳ぶ。


「第一術式、発動! 炎術式!」


 全身に赤い筋が入る。


「第四術式、発生!」


 念のため、第四術式も使っておく。


「火龍!」


 火で出来た龍を放ち、虫達を一掃する。


「やるじゃねえか! ま、火に強い虫もいるけどな!」


 新たに虫を吐き出す。


「チッ! シヴァの槍!」


 俺はまた神器を呼び出す。


 シヴァの槍。破壊神とも呼ばれるシヴァが使う先が三つに分かれた三叉戟と呼ばれる槍。炎を纏い、炎を放ち、炎を操る。さらには熱も放ち、爆発を使うことも可能。応用では草木枯れさせられる。攻撃力は物凄い高い。


「はっ! 神器使いに会えるとは思わなかったぜ! ま、関係ねえけどな!」


 オリサは右手に槍を出現させる。


「ベルゼビュート様の骨から出来た槍だ。神器使い相手でもいけるぜ」


 ……こいつ、下っ端じゃねえな? 下っ端なんかに骨を渡す訳ねえ。上位の、しかもベルゼビュートが一人でも大丈夫だと思えるが、念のため骨の槍を渡す程の信頼を得ている。


「あー、勘違いすんなよ? ベルゼビュート様の配下で俺が下っ端っつうのは本当だ。ま、十七しかいねえ直属の配下だけどな!」


 オリサが突っ込んでくる。


「やっぱ、強いんじゃねえかよ!」


 それを真っ向から受けて立ち、シヴァの槍で防ぐ。


「短期決戦しかねえ!」


 俺はシヴァの槍から右手を放す。


「ゼウスの剣!」


 俺は長剣を呼び出す。


 ゼウスの剣。それは世界最強の武器だ。本来はゼウス最大の武器は雷霆だが、それを剣にしたようなモノ。金色の長剣で、全知全能、天空神ゼウスが使う武器ということで完全無欠最強無敵だ。。一振りで辺り一帯と人間を消し炭にする威力を誇り、剣として使えば、同等の力のモノ以外なら何でも斬れる。雷ももちろん使える。


 そして、人間が使うには重すぎる。力量のない人間が使うと消し炭になる。


「おらぁ!」


 俺はオリサに向かってそれを振るう。


「なっ!?」


 オリサはゼウスの剣を見て驚くが、もう遅い。


 一振りされた頃には辺り一帯は消し飛び、オリサも呆気なく消し炭になった。


「ぐっ!」


 強制的に二つの神器は消え、術式も解かれる。


「……あーあ、右手が」


 俺も人間だ。もちろん、ゼウスの剣を使うことによって消し炭にされそうになる。それは第四術式でカバーしたが、使った右手は黒ずんでいた。


「魔力回復薬があったな」


 無限茶袋からビンに入った紫色の液体を取り出す。


 ゴクゴクと一気に飲み干す。


「第四術式、発生」


 右手を治してすぐに解除する。


「……帰ろ。証拠を残さなかったから討伐報酬はないな」


 俺は呟いて、とりあえずギルドに向かった。

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