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英雄、やります(仮)  作者: 星長晶人
アンドゥー教編

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人間寄生

「天雷槍!」


 雷の槍がオーガを貫いて、胴体が消滅する。


「うっし。これでオーガはオッケーだな」


 あとはオークだ。


「……オークって何だ?」


「オークですか? ……これは回復薬に使えますよ」


「ああ。……サンキュ」


 聞きながら、ディメスの見つけた緑色の草を無限茶袋に入れる。俺のいた世界で言うと、葉が細々としているシダ植物だな。


「オークですが、ブタとゴリラが合体したようなイメージです。手に槍を持っていて、丸っきりパワータイプです。しかし、知能はオーガより高く、素早さも上ですね」


 ふむ、厄介だな。


「……知能が高い、素早いと言っても、所詮はオーガより上というだけですから。オーガより獣に近くなったイメージですよ」


 う~む。まあ、実際に戦ってみたらいいか。


「ふーん。じゃあ、適当にブラつくか」


 ディメスの話だと、ナティアかイシアがいると匂いで敵の居場所や薬草の在処がわかるらしい。ライオンと犬だからだろうか? イシアをここに連れてくるわけにもいかないし、採取のクエストはナティアを連れてくるか。


「っ!? ……待ってください主」


 ディメスは何かの気配を察知したらしく、声を潜める。


「……どうした?」


 俺もそれに倣い、ディメスの傍に寄って小さく声をかける。


「……あれを見てください」


 ディメスに言われて、しゃがませられながらそれを見る。


「……?」


 何だ、あれ?


 俺はそこにズズズ……と黒いモノが這っているのを見た。


「……あれは人工魔物の素です。あれが魔物に寄生して、完成するまで待つんです」


「あれが人工魔物?」


 魔物とも言えないような物体だ。闇の塊というか、黒い霧状のモノというか。


「……はい。出来れば今の内に殺しておきたいですね。しかし、不用意に近付いてはけないません」


「……ディメスなら一撃だろ?」


「……否定はしません。ですが、殺す前に寄生されたらお仕舞いです。どうやって寄生するかは、まだ明らかになっていませんから」


 ……厄介だな。ディメスのブレスなら一撃だろうが、本来の姿に戻ったら見つかるか。


「……厄介だな。近付かずに一撃で決めるしかないな」


「……はい。それと、人間に寄生したという話は聞いたことがないので主なら大丈夫だと思いますが?」


「……そうか」


 かなりのトラウマなんだが。まあ、いつかは克服しなきゃいけないし、早い方がいい。


「わかった。俺がやろう。何がよく効くかな?」


「黒いですからね。光系統が効くかと」


 推測か。まあ、試さないよりはマシだ。


「じゃあ、光術式こうじゅつしき


 左腕に白い筋が出る。


「Щ?」


 術式を発動した時の光でこちらに気付く。


「光帯!」


 俺はすかさず攻撃する。


 左手の平に光を溜め、そこから帯状の光をいくつも放つ。光の特性は浄化と貫通。光帯は貫通に特化させた。


「ДЮЖЧ!」


 人工魔物は光帯をかわす。かなり素早い。


「ちっ! 光雨!」


 俺は舌打ちして、再び光を左手の平に溜め、球を作る。それを上空に投げると、それが回転し出し、雨粒程の大きさしかない光の弾を下に向けて放ち始めた。


「ЫЮξ!」


 人工魔物は避けようとするが、数が多く避けきれずに一発、また一発と立て続けにくらった。


「……ちょっとは堪えてろよ?」


 光雨は光の弾を撃ち出すものだが、特に貫通浄化に特化させてない。速さのある相手の足を封じる手として、光の専売特許である速さ生かしたかったからな。僅かな差だが、今の俺じゃあ特性特化にすると速さが落ちる。


「ψζφЙ!」


 人工魔物は黒く細い硬い槍を伸ばしてきた。


「ぐっ!」


 俺の左の腹に焼けるような痛みがある。貫かれたらしい。


「……避けられる速度じゃなかったな」


 自嘲気味に呟いて、俺は飛び散って自分の顔にもかかる血を見て、膝を着く。


「主!」


 ディメスが慌てたように駆け寄ってくる。


「……来るなって、ディメス。寄生されるぞ?」


 俺は掠れた声でディメスに言う。


「主が怪我をして出てくるなっていう方が無理です!」


 ……ディメスがこんなに慌てたのって初めて見たか? 前に人工魔物に会った時も慌てたっぽいけど。


「ЩЫЮЯЭЦ!」


「……あん?」


 俺は人工魔物がバカにしてるような、嗤っているような声を上げる。


 ーー我、望ム。人間ノ、ヨリ高度ナ躯ヘノ寄生ヲ。奪イ、喰ライ、支配シ、愚カナ人間ヲ我ノ躯ヘト変エルノダ。


「っ!?」


 頭に直接聞こえる声。それは、ゴブリンみたいなヤツが発した、人工魔物の声だった。


「がはっ!」


 傷口から何かが入ってくる。中からまとわりつくような、嫌な感覚が這い上がってくる。


「主!?」


「……」


 だらん、と腕を垂れ下げる。


「しっかりしてください!」


「……イいな。人間の躯はやはり丈夫だ」


「っ!? 人工魔物に!?」


 ディメスは俺から飛び退いて距離を取る。


「……あーあー。んんっ。ディメス、何驚いてんだ?」


「……主の声ですね。しかし、顔は違いますよ」


 俺は狂喜に満ちた笑顔でディメスを振り返り、闇に意識を塗り潰された。

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