深層心理と互認
ーーん?
俺は何故か真っ黒な空間を漂っていた。
「よお。目が覚めたみてえだな」
俺は浮いてるようで、そいつは俺の頭より上に立っていた。寝てるとしたら、枕元にいる感じだ。
ーーここは?
「ここはてめえの心ん中みたいなもんだ。ま、てめえは情けなくも人工魔物みてえな雑魚に寄生されてるわけだが」
ーーそうだ。俺は寄生された。じゃあ、寄生されたヤツってこんな状態なのか?
「いや。俺がいるからな。第一、てめえはまだ完全に寄生されたわけじゃねえよ」
ーーいや、心の中に来る時点で死にかけてんじゃん。
「……細けえこと気にしてんじゃねえ。折角俺がてめえの意識だけは助けてやったってのによ」
ーー助けてくれたのか。それはありがとう。だが、俺は生きてるなら行く場所がある。
「……この場合はディメスか。ま、早く戻りてえんなら俺の言う通りにしろ」
ーー戻れるんなら、それでいい。
「まず、てめえに術式を解放させる」
ーー術式を解放? 意味がわかんねえよ。
「ったく。てめえが死にかけた時あんだろ? あん時に使った術式がそうだ。あれをてめえに使えるようにする」
ーー簡単に使えるようになるのか?
「いや。失敗すると死ぬ。大体、死にかけて初めて使った術式だぜ?」
ーーそれもそうか。
「ま、俺がてめえのことを認めたらやるよ。てめえも俺を認めたら、な」
ーー?
「おっと。これ以上はヒントやらねえぞ? 自分で考えろ」
ーーまあ、いいさ。具体的には何をすればいいんだよ?
「……まあ、それくらいならサービスしてやるよ。てめえは俺の質問に答えればいい」
ーーわかった。それくらいならいい。
「あいよ。んじゃ、一つ目の質問だ。てめえが戦う理由は何だ?」
ーー随分と哲学的なことを聞くんだな。そんなの、アンドゥー教がムカついて、俺に守りたいヤツらがいるからだろ。
「……ふん。次の質問は、ムカついて、守りたくて、てめえは人を殺せるのか?」
ーー……。口では何とでも言えるが、殺せるだろうな。
「俺に嘘は無駄だ。だから、いい判断だぜ。次の質問は、てめえは元いた世界を放り投げてまでこっちに来て、ただが出会って数十時間のヤツらを守るために死ぬ気で戦えるのか?」
ーーああ。あいつらはそうでもして守りたい。
「じゃあ、その理由は? 何でそこまでして守りたい?」
ーー……心が読めるなら、言わなくてもわかるだろ? 人を助けるのに理由は必要ない。
「……じゃ、最後にしてやるよ。俺は、誰だ?」
ーーまあ、俺、だろうな。内なる俺?
「ま、間違っちゃいねえよ。だが、このままじゃ不合格だぜ? まだてめえは俺を認めてねえ」
ーーお前は俺を認めてくれたのか?
「……まあ、な。二回も殺されかけて心が荒んでねえことはわかったからな」
ーーそっか。
「てめえ、術式の試しっつう理由でモンスターを瞬殺してねえだろ。甘えよ。ここは日本じゃねえ。いつまでも平和ボケしてねえで、容赦なく敵を殺せ!」
ーー……。一瞬の油断が命の危険性を高める。いつまでもあいつらに頼ってられない。それもわかってるぜ? まあ、殺すことに抵抗がなくはない。だが、殺そうと思えば出来る。
「……」
ーー俺はお前とは違って、術式を殺すためじゃなく、守るために使う。
「……俺と違って、な。そうつれないこと言うなよ。俺とてめえは一心同体、同一人物だぜ?」
ーー……ああ、わかってる。殺すことと守ることは、結果的に一緒になるんだ。それに、俺がちょっと楽しんでるのは否定出来ないからな。
「ああ。てめえは死にかけても死にかけてもこの世界を楽しむんだろうな。こっちの方が面白えだろ?」
ーー当たり前だ。つまんないあっちには戻りたくもない。こっちは退屈する間もないくらいだしな。
「てめえの本質はその、楽しむことにあるんだぜ? 殺戮を楽しめよ」
ーー残念だが、それは出来ない。俺が心の中では楽しんでるとしても、俺はちゃんとモンスターや人の命の重さを背負ってやる。
「てめえは異世界人だからわかんねえんだろうが、この世界じゃモンスターや人を殺すのは普通だぜ?」
ーーまあ、いいさ。……お前の忠告通り、術式を試すにしても容赦なくやるよ。それでいいか?
「……。術式を解放しなくていいのかよ?」
ーー何言ってんだよ。お前は殺しを楽しむ俺だろ? 認めるも何もねえよ。俺は俺だぜ? ちゃんと、わかってるよ。
俺が楽しんでることぐらい。
「……そうかよ」
ーーああ。俺はもう行く。お前も一緒に行こうぜ。
「どこへだ?」
ーーんなの決まってんだろ。
「……そうだな」
ーー俺が守りたいヤツらのとこだ。
「……まだまだ守られてるけどな」
ーーそれを言うなよ。
笑い合って、いつの間にか俺と俺は一人になった。
「ーーんじゃ、行くか」
立ち上がってそう言った。
▼△▼△▼△▼△
シューヤが人工魔物に寄生された後。
「ヒヒッ。ディメス、そう警戒するなって。俺はお前の主だぜ?」
「……主はそんな顔をしませんし、そんな笑い方もしません」
ディメスはシューヤだったモノに対して剣を抜く。
「まあ気にすんな。俺はこいつの躯を乗っ取ったわけだが、別にお前らを殺そうなんてしねえよ。シューヤのように振る舞って、ちょっとだけ同志達が人間の街に入ってこれるように手引きする」
そいつはシューヤのように、シューヤの声で、そう言った。
「……それだけでも万死に値します」
「そう怖い顔すんなよ。……まあ、こいつの躯じゃ何も出来ねえんだよな。こいつ、魔法使えねえし、武器も持ってねえ。術式ってヤツはわけわかんねえ構造してるし、俺じゃ使えねえんだよな」
「……人工魔物ごときに扱える代物ではありませんから」
ディメスはシューヤのために、シューヤを殺すことに決める。
「やる気満々じゃねえか。いいのか? こいつ、生きてるぜ?」
「っ!? ……いえ、主は現在寄生されています」
「寄生されたからってそいつを死人扱いにすんのかよ? ひでえな」
そいつは肩を竦めて言う。
「まあ、いずれは意識も記憶も全部喰っちまって、『俺』を完成させてやるけどな」
ニヤリ、とそいつが笑う。
「……てめえ様には勿体ない躯です。まだ主が生きてるなら、主から出やがれです」
ディメスが汚い言葉使いを妙な敬語でちぐはぐにして言う。……かなり怒っている時になるようだった。
「はっ! 主への敬語はどうした?」
「……てめえ様なんかに使う敬語なんてねえですよ」
……ディメスのキャラがぶれていた。
「そうかよ。まあ、もうすぐ俺は完成するからな。関係ねえことか」
「させません!」
ディメスはいくらか落ち着いたのか、元の口調に戻って言う。
「はっ!」
ディメスは剣でそいつの腕を斬り飛ばす。
「……まあ、精々足掻きな。痛覚はねえし、ただ主の躯を傷付けるだけだがな」
「……そうですか」
「……あ?」
ディメスは無表情のまま、そいつの腹を刺した。
「ちっ! 忠誠にしといて、寄生されたら切り捨てるなんて、な!」
痛覚はそいつにはないので、ディメスを掴む。
「ーーうぐっ!? てめえ!」
そいつは急に呻いて、吐血する。
「……」
シューヤはニヤリと笑う。
「……ディメス、よくやった。お前のおかげで戻ってこれたぜ」
シューヤは出血で青白い顔をしながら、笑っていた。
最近こればかり更新していますね。
他が行き詰まっても、これは行き詰まらないんですよねw
もうちょっとで百位に入るか入らないかの時もあるので、頑張っていきたいです。




