術式の応用とオーガ
「じゃあ、ディメス。俺達はギルドに行こう」
「それならグランに指示しなくても、主が直接リンナさんに聞けばいいのでは?」
「まあ、ちょっとしたミスだ。気にするな。それより、今日はオーガのクエストを受けようと思うんだが」
「そうでしたか。でしたら、ついでに少し文字を覚えましょうか。モンスターの名前や植物の名前は覚えておくといいですから」
確かに。前は唯一わかる数字だけで判断しようとしてたからな。
「オッケ。じゃ、行ってきます」
エイラとイシアの姉妹に手を振って家を出た。
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「これはゴブリンと読みます。これがオーガですね」
……区切りがよくわからん。古代文字みたいだ。詳しくは知らないが。
「……後で単語を並べて書いてくれ。区切りがよくわからん」
俺は正直に白状する。
「そうですか。では、今回は私が適当に選びます」
「頼む」
単語じゃなくて、五十音表みたいなヤツが欲しいな。あれば、だが。
「……これでいいでしょう。オーガ二体とオーク三体討伐」
ディメスは一枚の紙を取って俺に渡す。
「ま、ディメスがいいって言うならいいか」
オークもそこまで強いわけはないだろうし。
「オーガ二体とオーク三体の討伐ですね。幸運を祈ります」
リンナに見送られて、国外の森に向かった。
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「ゴァ!」
オーガが腕を振るってくる。
「っ!」
俺はそれをギリギリで避けるが、その風圧で目をしかめる。
「雷斧!」
左手に雷を集め、上から振り下ろす。雷が斧の形を取り、オーガの皮膚を浅く裂いた。
「ちっ! 雷斧じゃ大したダメージにはならないか!」
一応雷槍も試したが、ダメだった。
「オーガは弱点属性も得意属性もありません。ですが、皮膚が堅いという特徴があります。力が強い代わりに素早さがない、典型的なパワータイプですよ」
ディメスからオーガの特徴が告げられる。
……じゃあ、速く動いてオーガが死ぬまで攻撃重ねるか、皮膚の堅さを凌駕する攻撃で倒すか、しかないな。
「じゃ、ちょっと試すか」
試したいことは何個もあるが。
「……」
俺はオーガから距離をとる。
「天雷槍」
雷槍より威力を上げた雷の槍だ。雷には殺傷力と感電の二つの特性があるようで、天雷槍は殺傷力を重視している。
「グガガァ!」
オーガは避けられずに直撃する。雷槍ではちょっと刺さったかな? 程度の傷しか付かなかったのに、やや丸い腹に大きな風穴が出来ていた。それ以外にも、切り傷が付いている。
……結構抑えたつもりだったんだが。規模も雷槍と変わらないし。まあダメージを与えるために考えたヤツだからな。
「ゴ……ガァ!」
最後の力を振り絞ったのか、俺にゆっくりと拳を振ってくる。
「……最後まで逃げなかったことに敬意を表してやろう。爆雷槍」
俺はオーガにカウンターの要領で拳を振り、雷の槍を放つ。
その雷の槍は当たると、スパークした。肉が焼け焦げたような匂いが鼻につく。
爆雷槍は天雷槍の逆、感電を重視させたモノ。ほとんど見える傷は付かないが、軽い皮膚の火傷、内臓が焼けるなど、見えないがグロいことになっていることだろう。
「……ま、こんなもんか」
属性には特性があるから、それを上手く相手によって使い分けないと。……オーガみたいなヤツだったら、炎術式の方が向いてたな。
「お見事です。しかし、天雷槍はもう少し強めた方がいいですよ。遠慮はいりません。オーガは人間や他種族の生物を見たら襲いかかって来ますし、女性を自分達の苗床としか思っていませんから、容赦なんていりません」
珍しく、なのか、ディメスが冷たかった。……女性として思うところがあるんだろうな。
「……まあ、次のオーガに行こうぜ」
「はい」
そして、ディメスと一緒に森を歩いてオーガを探す。
「……いないな」
「おそらく、この辺りにはいないかと。ゴブリンの血の匂いを嗅ぐと寄って来ますが、特別鼻がいいわけではありませんしね。それに、ゴブリンの死体を持つなど、主に命令されない限り嫌です」
それは暗に命令するなって言ってるんだろうか? まあ、俺も近くにゴブリンの死体を置いとくのは遠慮したい。
「じゃあ、歩きながら探そう。道中にモンスターがいたら狩って。あと、ディメスは薬草とかわかるか? 回復に使えるヤツもあるんだろう?」
「回復には私一人いれば問題ありません。それに、主が覚醒していただければ、回復の必要もなくなります。……しかし、回復は重要ですから、そうですね。少しばかり薬草を採っていきましょう。私にもわかる草はあります」
おぉ。
「じゃあ、そうしようか」
細かいことが決まってきて、二人で森林探索を始めた。




