動き始めた英雄
「というわけで、ここに暮らすことになったエイラとイシアだ」
翌朝、仲間達に二人を紹介した。
「ロリコンだな」
「ロリコンですね」
「ろ、ロリコンです」
「ロリコンね」
「ロリコンです」
「ロリコンだね」
六人全員に開口一番そう言われた。
「人聞きの悪いこと言うな!」
俺はロリコンじゃない。
「ろりこんって何? お兄ちゃん」
きょとんとあどけない顔で小首を傾げていた。
「気にしなくていいぞ」
俺はイシアに答えずに誤魔化した。
「……まさかイシアを狙って?」
エイラがイシアを守るように抱える。
「エイラまで真に受けるなよ!」
とんだ誤解だ。
「……二人は何でここにいるのですか?」
アーティアがエイラに聞く。
「私達は異種族ですから。アンドゥー教信者に狙われるんです」
……またアンドゥー教か。
「でもさ、アンドゥー教って身分差別が基本思想だろ? 異種族なのは関係ないんじゃ?」
「基本思想は確かに身分を区別することですが、基本ではない思想もあります。その一つが人間以外の生物は忌むべき存在である、という思想です。種族が違うと奴隷以下になりますから」
アーティアが眉を少しひそめて言う。……なるほど。だから二人は酷い扱いを受けるってわけか。
「細かく分けると、私達奴隷、亜人種、獣人、魔物の順です。アンドゥー教は人間以外がどうなろうと構わない。奴隷がどうなろうと構わないのがこれの理由です」
……また一個アンドゥー教殲滅理由が出来た。
「はい。それでアンドゥー教から身を隠すためにこの家に隠れて住み、たまに人が住むと夜な夜な食料を漁ったりしてきました。だから幽霊なんて噂が立ったんでしょうね」
「ま、これからはそんなことしなくていいぞ。ここに住めばいいんだからな」
「……でも、ただお世話になるのは申し訳ないんです」
う~ん。じゃあ、何か手伝ってもらうか。外に出すのは危ないし。
「んじゃ、アーティアを手伝ってくれないか? 家事を覚えて、二人で手伝ってくれればいい。外に出すのはアンドゥー教に会うと危険だから、アーティアが許可した時以外は出なければいい」
家政婦みたいな感じで働いてもらって、その代わりに衣食住を整える。
「……それならいいですけど」
渋々といった感じで頷くエイラ。
「じゃあ、決まりだな。指示を出すから、言う通りに動いてくれ、皆」
俺はこれからやることの大体の道筋を思い描いた。それを各自にやってもらうことにしよう。
「まず、アーティア。エイラとイシアの二人に家事を教えるのは後でいい。先に服を買って、風呂に入れてやってくれ。その後、家事を教えること」
「はい、ご主人様。買い物に二人は連れていかない方がよろしいですか?」
「ああ。アーティアのセンスに任せる」
「畏まりました」
アーティアは綺麗にお辞儀をする。
「グラン。お前はギルドとの通信役になってくれ。人工魔物に関することもやり取りするように。あと、俺と同じ境遇のヤツの内、バカップルとドSと脳筋野郎の居場所を聞いておいてくれ。それはディメスに伝えてくれ」
「わかった」
グランは鳥の姿のまま頷く。
「喋る鳥さん?」
イシアが無邪気に首を傾げていた。
「ん? ああ。喋る鳥さんだ」
俺はワイバーンの王を自負するグランが喋る鳥さんと呼ばれることに笑いを堪えながら言う。
「ディメス。お前は俺と行動してくれ。俺と同じ境遇のヤツを訪ねたりする」
「はい、主」
ディメスは小さく頭を下げる。
「メティはアンドゥー教に関する情報収集を頼む。あと、人工魔物に関することもな」
「はい、シューヤ様。頑張ります」
「いい返事だ。ナティアとフィネアだが、二人には交代でこの家を守って欲しい。もう片方は自分のレベルに合ったクエストを受けてくれ。生活費を稼ぐためと、腕を鈍らせないためにな」
「いいわよ、ご主人様」
「うん、ご主人様」
二人も素直に頷く。
「エイラとイシアはさっき言った通り、アーティアに家事を教えてもらってくれ。あと、買って欲しい家具があったらアーティアに言うこと。二人一緒の部屋にするつもりだけど、文句があったらアーティアに言うこと」
「部屋まで貰えたら、文句はありません。むしろ、感激です」
よしっ。これで一通りの指示は出したな。
「各自、行動開始」
俺の一言で、俺の指示通りに動き出した。
アンドゥー教の基本思想である身分差別を簡単に。
王族・皇族
(司祭)
貴族
(神聖鶏騎士団)
騎士
商人
民
奴隷
亜人種
獣人
魔物
こんな感じですかね。
括弧は教団側の主張です。貴族には下手に出ますが。本編でそういうシーンが出るかはわかりませんが。




