戻った先には
落ちながらも考えをなんとか巡らせる。
ゲームオーバーならないためにはどうすればいいのかを……
「くそ、どうしてこんなことばかりになるんだよ!」
「わああああああ!」
騒いでいるカナの横で俺はアイテムからなんでも光らせるアイテムと盾を取り出す。
盾に光らせるアイテムを取り付ける。
「さっさと壁に折れた剣を突き立てろ!」
「そ、そうか……」
俺に言われて、慌てて剣を壁に当てると、ガガガと音が鳴りながら勢いは減速する。
いつも鍛えているから、これくらいならなんとかしてくれるだろう。
後は俺だな……
普通ならこんな状況になってしまえば、諦めたりするかもしれないがこの世界であればなんとかできる可能性のほうが高いし、こんな場所で惨めな感じでゲームオーバーなるのは嫌だ。
生き残るために、俺はこのゲームで使える技を活用するだけだ。
盾のおかげで落ちる向きが固定される。
後は地面につくタイミングで盾を地面に突き立てる。
「おら!」
レベルが上がったことによって使えるスキルを駆使すれば、これも対処できる。
地面に落ちるタイミングを合わせることによって使ったスキルは、シールドによるプッシュだ。
パリイと違うところはタイミングを合わせることで、モンスターであれば攻撃を弾きとばせるものだ。
このプッシュは同じようなものではあるが、違うところはモンスターを吹き飛ばすくらいの勢いがあることだ。
ドンという音とともに、地面がひび割れるとともに、俺の体も上に少し浮く。
スキルがちゃんと発動したということは、タイミングがあったということだ。
「なんとかなったな」
「さすがだな」
「てい!」
「ぐは……どうしてだ」
「どうしてもくそもあるか!簡単に済ませることが間違ってるからな」
普通に声をかけてきたカナの頭を俺は小突く。
そこまでの痛みはないはずだが、カナは大袈裟に驚いてみせた。
とはいえ、なんとか二人とも無事でいられた。
これも、今回一緒に落ちたのがカナだからなんとかなった。
普段鍛えていることも無駄ではなかったということだろう。
お互いに無事を確認したところで、俺たちは周りを確認する。
「で……ここはどこだ?」
「わからない」
「だよな」
落ちてきた場所に見覚えなどない。
そもそも地下があることも知るはずもなかったのだから……
地下には暗闇が広がっている。
当たり前だ。
こういうときに、よくある展開のそこにしかいない種族がいたりとか、隠されたものがあったり、エロティックタワーが世界樹で、地下にはその湖が実は広がっている。
なんてことは全くなく、何もない空間が広がっている。
「何もないな」
「地下だからな」
「お前のせいで落ちたんだろうが」
「拙者としても、それはすまない」
「わかってるなら、まずはここから上に行くことを考えるぞ」
「わかった」
俺は明かりを発するアイテムを一つカナに渡す。
「さすがに効率を求めないとな」
「わかった」
カナと別れて俺たちは探索を開始した。
「なあ……」
「どうかしたか?」
「別れてやるんじゃないのか?」
「そ、そうだな」
最初からそうするものだと思っていたから、動揺するカナを見て俺はすぐに理解する。
「お前、もしかして怖いのか?」
「そ、そんなことはないぞ」
「本当か?」
「ほ、本当だ」
言葉に詰まっている様子を見ても、あきらかにこういう暗闇を一人で探索するのが苦手だとわかる。
暗闇の探索。
俺だって、この世界がゲーム世界だということを知らないのであれば一人で探索するなんて嫌だと思うだろう。
だが、この世界は現実ではないことがわかっているから、俺はあまり怖いと思っていない。
ま、現実で暗闇の中一人は怖いよな。
「迷子になられても困るよな」
「そ、そうだな」
「背中を頼んだ」
「わかった」
安心するようにしてカナは頷く。
俺を先頭にして後ろをカナが歩く。
いつもの筋肉、筋肉と言ってるときとは違って今は周りを気にしながら静かなところを見ると、最初からこうやって一緒に行動しておいたほうがよかったと思ってしまう。
よくよく考えると、何かが起こって勝手にどこかに行かれるほうが面倒くさいか……
後は、この場所からどうやって抜け出すかだな。
明かりで照らしてはいるものの、周り全てをカバーしているわけではない。
遠くまで見えることはない。
「何かわかることはあるか?」
「何もないぞ」
広い空間なのかわからないが、暗闇だ。
ここで少し嫌な考えが頭をめぐる……
この空間がそもそもゲームのバグであり、こうやって落ちてしまった場合はリセットしないことには元に戻れないような仕様だったときだ。
ゲームが発売されて二年はたち、そういうところは全て修正されているはずだとは思うものの、今のようにまだ知らなかった物語があることからわかる通り、どんなことが起きても不思議ではない。
頼むから、簡単に抜け出せる仕様になっていてくれ……
俺はそんなことを考えながらも暗闇を進む。
すると、何もないまま壁にたどり着いた。
「壁か……」
「次はどうするんだ?」
「壁沿いに歩く」
「わかった」
こうなったら、試せることは試してやる。
俺はそう決心する。
迷路などでよく使われる手法ではあるが、地面にアイテムを一つ落とすと、壁に手をついて歩いていく。
こうすることで、壁がこの場所を取り囲むようにして存在していれば、自然とこの場所に戻ってくるはずだからだ。
「どうしてこういうことになるんだよ」
「拙者にわかるはずないだろ?」
「だよな」
俺たちは戸惑っていた。
それも仕方ないことで、歩いてすぐに問題があった。
問題というのは、壁沿いを歩いていたというのに、あったのは扉だったからだ。
「入るべきなのか?」
「決めてくれ……拙者が決めると面倒なことになりそうだからな」
カナはこれまでの行いから、俺に判断を委ねてくれる。
だったら俺がやることは、この扉を開けることだ。
そんなに簡単に決めていいのかって?
いいに決まっている。
こんな世界だ。
やらないで後悔するという時間は、少し前に終わった。
今は全てやってみてから後悔する時間だ。
俺は扉に手をかけて開ける。
ゴゴゴという音とともに、石の扉は開いていく。
さあ中には何がある?
扉の開いた先にあったのは、どこか見たことのある機械だった。
「転送装置か……」
「みたいだな」
そこにあったのは、転送装置。
だけど、稼働していないのか扉が浮かび上がってない。
どうなるのかは乗ってみないとわからないってことかよ……
「行くか」
「わかった」
すぐに俺たちは覚悟を決めて転送装置へと足を踏み入れる。
そしてすぐに発動する転送装置。
浮遊感からの足が地面につく感覚がして、バランスを崩しながらも状況を把握した俺は思わず笑ってしまう。
「なるほどな」
「お?」
「グルウウウウウ」
すぐに理解した。
ああ、面倒なことを引き起こすものだと……
ケルベロスの目の前に強制的に転送させられた俺たちは戦闘を余儀なくされた。
よかった点が一つだけあるとすれば、「追いついたわよ」「強そうなモンスターがいらっしゃいますね」そんな言葉とともに、ナオとヤンがいたことだが、避けられないことは確定したのだった。




