振り回されて……
※
あなたとカナがケルベロスから隠れているとき、ようやくというべきかナオとヤンの二人はエロティックタワーの地下へと続く道を発見した。
ここまでたどり着くのに、かなりの時間歩き回ったのは言うまでもない。
「はあ、はあ……」
「少し疲れましたわね」
「少しじゃないでしょ」
ナオはそう言葉にするものの、少し前のことを思い出す。
それはどうやって来たかだ。
学園内を探し回っていたが何も見つけることができなかった。
ではどうやって辿り着いたのか?
それは、ここを発見する前に偶然出会った存在である学園長のおかげだった。
安堵しながらもナオはそれを思い出していた。
「お前たち、何をしてるんだ?」
「人を探していまして……」
「人?ああ、あいつか」
何かを察したのか名前を言わずとも、誰かわかったようだ。
「あいつなら、エロティックタワーの近くで見たぞ」
「エロティックタワーでですか?」
「そうだが」
何を言ってるんだとばかりに言われるが、ナオたちも同じようにこの人は何を言ってるのか不思議であった。
だってナオたちはすでにエロティックタワーに行ったからだ。
「あそこにはいませんでしたよ」
「ほお、本当か?」
「はい。だって、エロティックタワーに続く道は閉ざされていました」
「道か……確かに見える場所は閉ざされているな。でも、見えている場所だけがエロティックタワーではないからな。ま、信じるかはお前たち次第だ」
意味がある言葉なのか、二人にはこのときわからなかったが言うことだけを言って去って行く学園長を見て、二人で顔を見合わせる。
「どうする?」
「どういたしましょうか?」
「ほかに情報がないんだし、行ってみる?」
「そうですね」
ナオとヤンの二人は、このときそれなりの時間探し回っていたことで、今更さらに時間がとられたところでいいかと考えた。
だからこそ二人はエロティックタワーへと戻ったところが少し前。
やはり何もないとお互いに怒りが湧いたが、ふとそのときにあるものがナオの視界に入った。
それというのは、地面が踏みつけられた跡だった。
何かがあると直感的に感じたナオは、そちらに向かって歩き出す。
ナオが覚えている通りなら、こんなところに何かないはずだ。
というよりも、ナオ自身も行ったことがなくわからない。
二人は少し緊張しながらも進んでいくと、そこには見たこともないものが広がっていた。
「はあ、はあ……」
「少し疲れましたわね」
「少しじゃないでしょ」
「そうですわね」
「それにしても、何よ、これ」
「わかりませんわ」
ヤンもわからない空間がそこにはあった。
階段が下に続いていることから、地下へと向かうためのものだということはわかるが、逆にいえばそれだけのことしかわからない。
「行っていいのよね」
「行くしかありませんわ」
二人は息を整えると階段を降りていく。
「グロオオオオオ」
そんなタイミングで、奥深くから獣の雄叫びのような声が響いてきた二人は、何かあると急ぐのだった。
※
「何やってんだよ!」
「す、すまない」
「見つかったじゃねえかよ」
「どうする?」
「決まってるだろ、逃げんだよ」
俺たちは逃げるために走った。
これも、剣の先を落としたカナのせいだった。
無駄に動くから、引っかかったのだ。
真逆に向く剣は、すぽっと抜けてしまったのだ。
あり得ないことを起こすとは確かに思っていたが、ここまでとは正直予想外だった。
結果、確かに落ちそうになった剣の柄を握ることで落ちなかった、そこだけは……
カナは忘れていたのだ、剣が折れていたことを……
そこからは普通の人でも予想できる通りで、折れた剣先が地面に落ちたと同時にキンという高い音が鳴ったのだ。
音が鳴れば、当たり前だがケルベロスはこちらに気づく。
そうして俺たちは逃げるしかなくなっていた。
だけど、逃げても追いつかれる可能性の方が高いことはわかっていた。
「拙者が戦います」
そう言葉にしてカナが振り向く。
「ああ、頼んだ!」
「た、助けてくれないですか!」
「おい、貴重なスキルを使うなよ」
せっかく戦うというのだから任せてみたかったが、どうやら俺も一緒に戦うと思っていたようだが、残念ながら戦うにしてもこんな狭いところではやりたくない。
よって見捨てるしかなかったが、カナは俺にスキル瞬発を使って追いついてくる。
瞬発。
その名前の通り、一瞬で最高速の動きをできるもので、ゲームのときであれば一回の戦闘で一度しか使えないが、使い方をうまくすれば二回攻撃ができたりするなど、かなりの有用スキルだが、今回は無駄打ちだ。
「だって、拙者だって死にたくない」
「だったら戦うなんて言うなよ」
「ずみません」
だが、逃げてはいるもののあちらは足の速いケルベロス。
どうやっても追いつかれる可能性が高い。
何か良い手はないか?
俺はチラッとだけケルベロスを見る。
そこで俺はあることに気づく。
ケルベロスとは、ゲームでもよく見る存在だ。
三つの頭をもつ怪物として……
問題は、この場所だ。
本来であれば、暗闇を無理やり俺が明るくしていることもあって、普通なら他のモンスターのように明るさによって何かしらなるはずだった。
それなのにケルベロスは、三つの頭にある目全てを何かによって縫われていた。
よって、ケルベロスは目で見て俺たちを追っているわけではないことがわかる。
だけど、すぐに疑問に思う。
目が見えていないケルベロスが、どうやって何かに当たることもなくこちらに向かってくるのか?
「さっき見たけど、あやつにの口や鼻から出る液で周りが溶けてたぞ」
「そういうことか」
「な、なにが?」
カナの言葉で、俺は理解した。
ケルベロスがどうやって俺たちを追いかけているのかということを……
わかったら、やるしかないな。
俺は周りを見る。
こういうときに、横着せずに周りを照らしてきたのが活きている。
こういうのを攻略に役立つ地道な作業ってやつになるんだろうな。
後は、この中で行けそうな……あれだな。
「いいか」
「なんだ」
「今からタイミングを言うから、そしたらあれに捕まれ」
「そんなことに意味が……」
「いいからやれ!筋肉をみせるときだろ?」
「そうだな。わ、わかった」
カナは半信半疑ながらも、俺の言葉を理解してくれたようだ。
「よし、今だ」
「よし!」
俺たちは飛ぶと上にあった窪みを掴む。
急に音が聞こえなくなったことでケルベロスはゆっくりと動きを止める。
ここは探索のときに見つけていた場所だった。
見つけたときには、互いに落ちたら死ぬな、なんてことを口にしていたが……そんなところも役に立つ。
ケルベロスは、この地下がどうなっているのかわかっているかのように見えないが何かを確認するかのように近づいてくる。
「グルウウウウウ」
唸り声が聞こえるが、俺たちは声を発することもなく耐える。
ほどなくしてケルベロスは、きた方向へと追いかけてきたときと同じスピードで戻っていく。
見えなくなるのを確認した俺たちは、道に戻るはずだった……
「あ!」
「おい、何やってんだ!」
「だって、拙者だって落ちたくないんだ!」
「だからって道ずれにするな」
どこまで迷惑をかけるというのか、このヒロインは……
緊張が解けたからなのか、手を滑らせカナは落ちるときに慌てて俺のことを掴んできた。
盾を持つことで自然と鍛えられてきたとはいえ、長時間はもたない。
なんとかしてカナを元の状態にまで登らせてから、もう一度やるしかないだろう。
やることはわかっている。
実際にできるかどうかは別として……
「なんとかよじ登れ」
「わかって……あ……」
「うおおおおお!馬鹿野郎」
「す、すまない」
だが、俺のうまくいくという考えは全て間違っていたようだ。
どうしてこうも何かをやらかすのか?
カナは何故か俺の大事な場所を掴んだ。
そのせいで、完全に力が抜けてしまった俺は、手を離してしまったというわけだ。
浮遊感を感じながら、見えない地面に向かって俺たちは落ちていくのだった。




