おかしな奴ら
※
「結局は何をしたらいいわけ?」
ナオは勢いで保健室から出てきた。
あの場所にずっといたところで、何も問題は解決しないことをわかっているからだ。
だからといって、次に何をすればいいのかもナオには思いつかなかったが……
「そもそも、動くのは私なの?」
先ほどの保健室にいなかったリーヤかチカが動いているのであれば、ナオが動くいたところで意味はない。
だって、ナオの物語に入っているわけではないからだ。
何度もこの世界を繰り返しているうちに、ナオもそのことをわかっているつもりだ。
それでもジッとしていられなかったのは、あなたのあんな姿を見てしまったからだ。
ナオは不安というべきか、先ほどの光景を忘れるためにも動いていた。
「はあ……これまで何もしてこなかったせいで、何が正解なんかなんて全くわからないじゃない」
自分が選ばれないための振る舞いばかりをしていたため、ナオは何かが起きてもどう対処していいのかわかっていなかった。
「イタ!」
だからか、ナオは盛大にこけた。
ドジというよりも集中していないせいで起きたことだ。
決して自分がドジっ娘ではないとナオは自分に言い聞かせる。
そんなナオが最初に確認したのは、いつも集まる教室のような部屋だった。
他にどこに行っていいかわからなかったからだ。
基本的にエロティックタワーに入って男女として、出会うことが目的の学園ということもあり、教室には机と椅子、さらには教卓などもあるにはあるが、使われているかと言われれば、そんなこともなかった。
「無駄に多いのよね」
最初の日ならまだしも、今では待ち合わせ場所程度にしか使われていないため、誰がどこに座っているというのもない。
よってナオは全ての机の中を探すことになった。
何が入ってるのかわからない以上は、慎重になる。
特にこの世界がエロゲーということもあり、机の中から出さないほうが……出してはいけないようなものも入っていることが多い。
「なんでわけのわからないものばかりが入ってるのよ」
ナオが文句を口にするのも仕方ないことだった。
それほどまでに、めちゃくちゃだった。
だけど探すのをやめない。
普通ならすぐに諦めてしまう状況だったはずだが、ナオも自分ではどうしてかわからないが、少し必死になっていた。
ナオがどうして必死になっているのか、他の人が見れば理由は明白だったような気もするが、ナオ自身は気づくことはない。
「あ、あった?」
そんなタイミングで、ナオは机の中から一枚の紙を取り出す。
書かれていた内容は、調査報告についてだった。
「これって、私の字?」
書かれている文字で、すぐに書いたのがナオ自身だとわかってしまう。
さらに書かれている内容については、チカのことだった。
家族がそれなりに多いことと、一番多く書かれているのは借金についてだ。
どこからどれだけのお金を借りており、どのような金額を返しているのか、などについて細かく書かれている。
「いつの間に私は調べたのよ、こんなの……」
ナオは内容を読んでも、知識としてもっていないため、いつどうやって書いたのかを思い出そうとしたが、無理だった。
(でも、これは私が書いたはず……だったらいつ?)
これはゲームで使うアイテムだとあなたのように割り切れて考えていれば、ナオも手に入れたこの情報を使えるものと判断していたはずだが、ナオはそう単純ではない。
「気味が悪い。ストーカーが真似したとか?ううん、こんな世界であるはずないか」
よって考えることは、違うことだ。
ナオは書類にすべて目を通していくと最後に書かれていたことがあった。
「すべては、つながる……何がよ」
ナオは読んだところで意味がわからなかった。
何がつながるとでもいうのだろうか?と……
そんなときだった。
「お困りでしたか?」
「ヤン、どうしてここに?」
いつの間にいたのかわからないが、そこにいたのはスカートを首に巻いているおかしな格好をしたヤンだった。
「なんて格好してるのよ」
「ふふ、お互い様よ、ナオはおかしなことを言うのね」
「はあ?何言って……」
おかしいことにナオは気づく。
ヤンは確かにスカートを首に巻いているが、それ以外におかしなところはなかった。
では、そのスカートは誰のものなのか……
嫌な予感がしたナオは下を見る。
(わ、私のじゃん)
そう、スカートを履いていなかった自分がいた。
よってヤンはおかしな格好ではあったものの、スカートを届けに来てくれたことをナオは気づいた。
「あ、ありがとう」
「いいわよ、このくらい」
(いつから?いつから私は履いてなかったの?)
冷静にスカートを履きながらも、頭の中は混乱していた。
「じゃあ、私は行くけど」
「ええ」
ヤンは当たり前とばかりにナオの隣に立つ。
「何?」
「決まっていますわ。一緒に行きます」
「なんで?」
「どうしてでしょうか?わたくしがそうしたいからですわ」
ヤンは有無を言わせないような言葉をナオに言う。
だからナオは思わず口にする。
「そ、勝手にすれば」
「ええ、そうしますわ」
こうしてナオとヤンは二人で行動することになる。
※
ナオがヤンと一緒に行動するよりも少し前に俺は起きていた。
周りには誰かがいた痕跡は感じるものの、今この場にはいない。
そして、おかしなことに意識はあるのに目は開かなくて、さらには全身が痛い。
死にかけるとまではいかなくても、かなりのダメージをくらいながら無茶をしたのだから仕方ないことはわかってはいた。
自分の体なのに自分じゃないみたいだ。
そんなタイミングで誰かがやってくる。
「ご……た……は……せて……」(ごめん、あなた……うちは終わらせてくる)
声でリーヤだということはわかったものの、どんな言葉なのかは全くわからない。
だけど、声質だけで俺はなんとなく嫌な予感がすることだけはわかる。
どんなイベントが起こってんだ?
俺は頭の中を整理する。
その中でも、俺が覚えているものの中で一つだけ内容がもしかしてと思うものがあった。
そういうことかよ……
今のイベントってチカを売り飛ばされていくエンドだよな……
このままいくと、ゲームオーバーだ。
だけど、おかしい点は多い。
これももっとエロティックタワーの上層に行かない限り起こることはないはずだった。
それなのに、すでに起こっている。
足音から遠ざかっていくと、、俺の体は自由に動くようになる。
勢いよく飛び起きた。
「ぐは……」
そして痛みが全身にわたる。
怪我をしてたのを忘れていた。
でも、痛みで動けないということはない。
今度はゆっくりとベッドから起き上がる。
それでも痛みは感じるが、今は悠長なことをやっている場合ではない。
「後悔しないためにか……」
俺はまた決意をしたタイミングだった。
「休んでいなくていいのか?」
そんな言葉が窓の外から聞こえる。
「ああ、こういうのも時にはあるだろ?」
「そうだな。拙者も理解している」
かっこよくビシッと鍛錬に使っていたのか、木刀を構えているが……
「大丈夫か?」
「ふ……助けて貰えるか?」
どうしてそうなったのかはわからない。
だがカナは、花壇にお尻が挟まっていた。
どういう状況なんだよ、全く……
呆れながらも俺はカナを引っ張り出す。
「助かった」
「いや、いいけど、何をしてんだ?」
「ふ……あなたを見ておきたい。でも、鍛錬もしたいと考えた結果だ」
「それがどうして挟まることになるんだ?」
「ふふ……拙者にもわからぬ」
「お、おお、そうか」
ドヤ顔で言い切るカナに、俺は思わず引いてしまう。
まあヒロインがおかしいのは、エロゲーだからか……
俺は自分で納得すると、保健室から出ていこうとするが、すぐに違和感に気づく。
「えっと……」
「ふ……拙者もついていくぞ」
カナはカッコつけてそんなことを言い出す。
俺は思わず心の中で叫ぶ、いやなんでだよ、面倒が増えるだけだろ!と……
だが、何かついてくる意味があるかもしれないと考えて口には出さない。
「勝手にしてくれ……」
唯一言葉にできたのはその程度だった。




