この展開はエロゲーなのか?
これは戦いといっていいのか?
痛い全身をなんとか動かしながら、俺は男の攻撃というのか、遊びを躱していた。
「いいぞ、いいぞ!」
「ちっ……」
遊ばれていることがわかっているからこそ、俺の口からは舌打ちがでる。
どうしてエロゲーでこんなわけのわからない展開になるんだと……
エロに関しての戦いだったりがあるならまだわかるのだが、こんな死闘を繰り広げるようなことになるとは考えていなかった。
「ほら!避けろ、避けろ!」
「くそ!」
悪態をついたところで状況はよくはならない。
むしろ体の痛みは増しているように感じてしまうほどだ。
こんなのどうしろっていうんだよ……
何をしてもゲームオーバーを待つだけじゃないのか?
俺は死をゲームオーバーを覚悟し……てられるか!
エロゲーでゲームオーバーになるなら、エロいことでなりたいに決まってるだろ!
未だに何もわかっていないのに、意味もわからないままゲームオーバーになんてなるか。
そう考えると俺はイライラとしてきた。
イベントの延長なのかもしれないが理不尽にダメージを与えられた状態で戦闘を余儀なくされたり、敵の強さだって今までの比じゃなかったり……
今だって必死で投げてくるナイフから逃げている。
もういい……
俺は構えをとる。
男は驚いたように、バカにしたように言葉を発する。
「なんだ?その構えは……」
「うるせえ」
「諦めたとか、言ってくれるなよ!」
男はまたナイフを投げる。
俺は正面からそれを受けたが、ナイフに当たることはなかった。
「おいおい!面白いじゃねえか!」
「うるさい」
体が痛く、いつものようには動かない。
でも、イライラのせいなのか多くのアドレナリンが出た俺の感覚は、いつもより研ぎ澄まされている。
その状態だったからこそ俺は、できると確信していた。
盾のように左手を構えると、飛んできたナイフを俺は拳でパリイの要領で弾くという離れ業を……
さすがの男も、ナイフを避けるでもなく弾くというミスをすれば自分が傷ついてしまうような行動をするとは考えていなかった。
まぐれかと思いながらも、さらにナイフを投げるがあなたは同じように拳で弾く。
繰り返される光景を見て男は思わず感心する。
(おいおい、こんなに面白いやつがいるのか?楽しみでしかねえな)
「おい、お前」
「なんだ?」
「いいものを見せてもらったからな、今回は引き上げる」
「んだと……」
わけのわからないことを急に言い出した男に俺は憤るが、次に男が言ってきた言葉は俺を冷静にさせた。
「威勢はいいが、もう限界じゃないのか?」
「んなことは……つ……」
ないと言いたかったが、体の痛みで途中までで言葉が止まる。
それでも、なんとか対抗したくて俺は相手を睨みつける。
「いいぞ、いいぞお前。そうやって闘争心を絶対に失うなよ、おい!」
嬉しそうに男は言った後踵を返す。
だけど、そのタイミングで裕福な男が叫ぶ。
「おい!どういうことだ!契約とちがうだろう」
「うるせえな。少し黙れ!」
「お前!雇い主に向かってその口の利き方はなんだ!」
「ああ?」
裕福な男は騒ぎ立てるように言うが、男が睨むと何も言えなくなる。
「別に一人二人目撃者がいたところで、やることに変わりはないだろ?」
「だが!」
「だがもくそもねえよ。楽しみが増えたんだからよ、邪魔をするなってことがわからないのか?」
「ちっ……勝手にしろ!行くぞ!」
「ま、待て!」
裕福な男は、ここに最初からいた男と、チカを連れて部屋から出ていく。
最後に残った男は、何かを言うが俺は何を言ってるのか全くわからない。
徐々に体から力が失われていく。
そこで俺の意識は途切れた。
※
リーヤから話を聞いたナオは慌てて女子寮から出た。
「何をしてくれちゃってるのよ、今回の坊ちゃまは!」
口からはそんな言葉が出るが仕方なかった。
寝て起きるとあなたが傷だらけだと、知らされたからだ。
昨日確かに変わったこと。
チカのことを探し回っていることをナオも知ってはいたが、さすがにそこから急展開すぎた。
寮から学園に行くと、強制的に体は動き出す。
(勝手に動いてくれるのは楽だけど、どこに向かってるのかとか状況がわからないのだけは勘弁してほしいわね)
ナオもわかっているのは、あなたが傷だらけだということだけで、どこにいるのかまでわかっていない。
だからいつものように勝手に体が動くことでそこに辿り着こうとしている。
この世界は、実はあなたが思っていたよりもヒロイン側に自由度は少ない。
確かにイベントが起きなければ、多くは学園内を自由に動き回ることが可能ではあるが、こうして何かが起きたり、さらには主人公であるあなたが寮に戻らなければ戻ることができないなど制約も多かったりする。
よって、状況が全くわからないまま何かが進行していることも少なくない。
今回に限っていえば、少なくなった寮でも少し話題になるほどの出来事だったこともあって、前もって少しだけ状況がわかったつもりではあるが、ナオは実際のあなたの姿を見て驚いた。
現実であれば保健室。
そんな場所に見ただけでもかなり傷ついているとわかる見た目のあなたが寝かされていた。
「え……」
思っていたよりもさらに傷ついた姿に思わずナオは言葉を失う。
強制的にこの場所まで連れてこられた後には、すぐにナオたちは体の自由を取り戻していた。
保健室にいるのは、ナオも入れてヒロインのうち三人だけだった。
「これは、大丈夫なのでしょうか?」
「見ただけじゃわからない。脱がして確かめるしかないな」
ナオ以外の二人。
ヤンとカナに関しては、心配しているのかどうかすらもわからないような会話だ。
「リーヤとチカがどこにいるのか知らない?」
「さあ、どこにいらっしゃるのかしら?」
「知らないぞ」
完全に使えない二人だと思いながらも、実際にはナオも同じだ。
ナオはこれまで十回以上もこの世界をリピートして、いつもと違うことばかり起こっている。
「ああもう、どうしたらこの世界から出ることができるのよ……」
思わずそんな言葉がナオの口から出るが、それには誰も答えてはくれない。
主人公が動かない。
本来でいえばあり得ない状況に、困惑するしかない。
だけど何かをするしかないとナオは動き始めた。
(まずはこの場にいないリーヤを探さないとね)
やるべきことを考えて……




