騙されることは多い
「どこまで続くんだこれ……」
「ん……回ってる?」
「あー、そういうことか……」
リーヤに言われて、俺は無駄なことをしていることに気づいた。
よく周りを見てみると、確かに少しだけ角度がついているようで、ぐるぐると回っているみたいだ。
「暗いせいで気づかなかったな」
「ん、うちもさっき気づいた、だけ……階段が見えた」
リーヤがそう言って指さす方向には確かに、階段が見えた。
それも登っていくもので、何かあったときにすぐ逃げられるようにと、男から奪っていたナイフの一本を隅に置いていたため、間違いない。
「本当だな……でも、ぐるぐる回ってるなら、どこに次があるんだ?」
「気になるとこ、ない……」
「そうなんだよな」
地下水道の中に流れている水は思ったより多くない。
そもそも、探索すればするほど使われているのかも謎な場所だ。
「結構不思議な場所だよな」
「ん……必要?」
「いや、ないよな……」
見渡せば余計にそう思う。
今はたぶん使われていないんだとわかる。
どうしてこんなものがあるのかについては考えても仕方ない。
問題はここから行ける場所があるのかだった。
ロウソクの明かりを頼りにしているせいで、見えにくいだけなのかもしれないとも考えているが、少しも違和感がないというのもおかしい。
こういうときなら、少しだけ流れている水が入り込むような場所があったりするものだが、実際にはそんなところは全くない。
「何かあるなら、ここに間違いはないはずだよな」
「ん……そのはず」
「手がかりが見つからないな」
「ん」
この場所で正しいというのであれば、何かしらのものが見つかるはずなのだが、何もない。
それを見ると、思ってしまう。
本当に何もないのではないのかと……
「いや、このゲームだぞ……無駄なところに行かせたりはしな……いことはないな」
「ん?どういう、意味?」
「あれだ。ここはカモフラージュってやつじゃないのか?」
「ん?」
俺が言っても、リーヤからすれば頭が疑問に包まれているはずだ。
何を言っているのか?
疑問に思うのは俺だってわかる。
確かに聞けば、はあ?となるだろう。
俺だって他の人にこんなことを言われれば、何を言ってるんだ?もっとよくこの場所を探そうと言うだろう。
これのゲームだっていうことを知らなかったらにはなるが……
「一応学園内に戻ってみようぜ」
「ん、あなたが、言うなら」
「おう」
俺が先導するようにして、二人で地下水道から出ていく。
さあ、ここからはまた探索だ。
※
秘密の地下室。
この場所のことを学園の誰も知ることはない。
どうしてなのか?
それは、この場所が作られた目的がお金持ちの道楽だからだ。
どうして道楽でそんなものが作られたのかと、普通の人なら思うだろうがお金を持っている者たちは違う。
全てほしいものがお金で買えてしまうせいだ。
いいことではあるものの、基本的には手に入ってしまうものはつまらない。
では、次に何を手に入れようとするのか?
それは、お金で買えないようなものだ。
お金で買えないのにどうやって?
簡単なことだ。
揺さぶってやればいい。
金で人を使って、人を壊す。
それが、一部の大金もちたちの遊びだった。
そして、今回選ばれたのがチカだった。
「なあ、おかしいだろ!あたいはちゃんとお金を払ってるはずだろ」
「払ってるなあ。だから、少し早く返してほしいって言ってるだけだろ?」
「はあ?なんでだよ」
「なんでって、こっちは善意で言ってやってるんだぞ?お金をさっさと払い終わってこちらと縁を切りたいと言っていたのはどこのどいつだよ」
「く……」
確かに、お金を払いにいくたびにチカは嫌な視線に対抗するようにして、男に嫌みを言っていた。
結局これも嫌みなど、男は言われるのは慣れていたため、気にしてはいない。
でも、逆にいえばこれは使えると考えた。
そして言葉巧みに女子を騙して、今は地下室の椅子に座らせている。
取調室のようになっているここは、普通なら誰も入れない。
秘密のアイテムが必要だからだ。
だからこうして、さらに追い込むときには必要な場所だ。
「ほら?払うのか、どうするんだ?」
「もう少し待ってもらうことはできないのか?」
「待つ?これまでどれだけ引き延ばしたと思ってるんだ?」
「でも、最近は!」
「ああ、払ってくれているなあ……だから、残りも払えるうちに払ってほしいんだよなああ、払えるうちになあ」
「ちっ……」
「おいおい、舌打ちとか酷いなあ……提案だぞ?」
提案という名の横暴だということに関しては、チカも理解していた。
(こんなことなら、もっとお金を稼げばよかった)
後悔だ。
だけど、そんなものは今更遅い。
だって、必要なのは今だからだ。
「どうだ?払うのか?払わないのか?」
「あたいは……」
チカがそう言葉にしようとしたときだった、キンと金属のようなものが落ちる音を聞いたのは……
だけどそれは、絶望の序章にすぎない。
「ああ、ようやくこっちの雇い主が来たようだ」
「な!」
「払えなかったのが悪い」
タイムリミット。
チカはそのことを理解すると、地下室の天井を見上げた。
だけど、地下室に入ってきたのは目の前にいる男の雇い主ではなく、チカのよく知る人物だった。




