無駄とロマンを感じる
気絶した男を、男が持っていた紐のようなもので縛りあげる。
何かされても面倒なので、男には全裸とまではいかないがパンツのみになってもらっている。
「これで、大丈夫だろ」
「ん、何かありそう?」
「待ってくれ、探してみる」
パンツのみにしたことで、男がこれまで着ていた服を物色する。
多くのものは戦うときに使うための武器のようで、なるべく怪しまれないようになのか、小さなもの、折りたためるものが多い。
「どんだけものを持ってんだよ」
「大量」
多すぎるせいで、何が使えるものなのかわからなかったが、一つだけ、あきらかにそれっぽいものがあった。
「鍵か……」
「あった?」
「ああ」
見つけたのは鍵だ。
よし、これで扉を開けて……とはいかず、さらなる問題がある。
それは、先ほどの扉に鍵穴がなかったことだ。
鍵穴がないということは、あの扉には関係がないという意味だ。
「意味のないアイテムを見つけてもだよな……」
俺は鍵をどうするべきかを考えた結果、一応もらっておくことにした。
何かしらで使える可能性があるだろう。
後は……
「結局この男は誰で、何だったんだ?」
「わからない」
俺の独り言のような言葉にリーヤが答えてくれるが、知らないことくらいは俺だってわかっているつもりだ。
とはいえ、返事が返ってきたということは何かを言わなくてはいけない。
俺は考えて、何かを言おうとしたところで男が目を覚ます。
「ふが、ほげい、ふが」
「何言ってるのかわかんねえよ」
「外す?」
「いや、それはしない」
男が起きたところでふがふがと言っているのは、口に多めの布を入れているせいだ。
どうしてこんなことをしているのかというと、よく敵に捕まったものたちが口などに仕込んでいた薬を発動したりして自害することが多いからだ。
何を言っているのかわからないから安易に外すことはできない。
「外したところで俺たちが欲しい情報をもっているかも怪しいしな」
もがもがと暴れているところを見れば、確かに何かを良いたげではあるのだが……
外せば面倒になる。
これはどんな物語でも鉄板だろう。
だけど、探索を再開するとなれば、ここにこの男を置いていくわけにもいかない。
一人だけ残って見張りをして、後一人はこの男をなんとかしてもらうための報告に行くべきか?
悩んだ結果、俺はいい案を思いついたのだった。
「一緒にいたのが、力のあるリーヤでよかった」
「んー」
少し不機嫌そうに返事を返されたが、本当に助かっていた。
というのも、俺とリーヤは盾を担架のようにして男を乗せて運んでいるからだ。
こんなことができるのも、力のあるリーヤと一緒だからだ。
俺たちは、男を明かりが一番ある学園の教室に放置する。
後はタイミングよく、見回りの人物が見つけてくれるだろう。
こういうときには、エロゲーあるあるの教室内でコトを済ませる輩たちがいることで見回りがあることはよかったのかもしれない。
縛られたままパンツ一枚だけの男。
そのタイミングで俺は何か違和感を感じる。
「もしかして……」
「何かあった?」
「少し気になってな」
俺はすぐに懐に閉まっていた本を取り出す。
攻略の情報が書かれているこの中に、違和感の答えはあった。
多くのことは書かれていない。
内容も同じで、普通の人が見ても違和感など感じることはないだろう。
でも、俺はこれまでのゲームをやってきたことから、それが今の状況であるとわかった。
ゲームの中では、軽く流される場面。
選択肢にはないが、強く印象に残っている会話があった。
「どうして、あの場所で生徒が消えたんだろう……」
「あなた、なに?」
「リーヤ、戻るぞ」
「ん」
消えた場所。
あのときの会話にあったのは確か、体育館とされる場所の裏手だ。
だったら、あそこに何かがあることは確実だ。
そもそもだ。
よくよく考えると、おかしいのだ。
この学園のメインはエロティックタワーで、この体育館もイベントで、ヒロインたちと特訓をしたり好感度を上げるときに使ったりはするものの、場違いでしかない。
そんなものでも、ゲームだからと納得していたが、忘れていたことがある。
無駄に凝っていることを……
月明りにのみ照らされた体育館の裏。
物語が進んでいないからこそ、男と戦ったときと同じだ。
月の位置も、あのときは男に夢中で気づかなかったが何かに反射した月が照らしだした場所が丸になっている。
今見ると、わかりやすすぎるギミックではあるものの男を気にしすぎたせいでわかっていなかった。
「ん、わかりやすい」
「だよな。これに最初気づかなかったのは、さすがに笑えるな」
「変な男いたから……仕方ないと、思う」
「……だな」
リーヤに慰めの言葉を受けたことに少し驚きながらも、俺は返事を返すと荷物を取り出した。
「よし、これでここを掘ってみるか」
「ん」
男が持っていた武器の中で唯一穴掘りもできそうだった、少し幅広い剣のようなものを使う。
ザクザクというような勢いで掘らなくても、すぐにお目当てのものは見つかった。
中にあったのは小さな箱だ。
「開ける?」
「そうだな」
爆弾だけはやめてくれよと思いながら、俺は耳の近くにもっていくとよくある時計の針が動くような音がしないことを確認するとゆっくりと開けた。
すると中に入っていたのは、カードのようなものだった。
「カード?」
「みたいだな」
まさかのものが出てきて俺たちは戸惑う。
これが何に使えるというのだろうか?
だけど、残る手がかりというべきかアイテムはこれだけだ。
俺は手に取ると、リーヤとともにあの地下水道へと続く扉の前までやってきた。
するとどうだろうか、地下水道へと続く扉の一部が光っているではないか……
「これは」
「ん!かざす?」
「みたいだな」
俺は先ほど手に入れたカードをそこにかざす。
すると、ガシャンという音とともに扉が地面に沈むように開いた先には下に降りる階段がある。
「すげえギミックだな」
「ん……少しカッコいい」
「ふ……だな」
こうしてようやく俺たちは地下水道へと足を踏み入れた。
「思ったよりも冷えるな」
「ん……」
「大丈夫か?」
「平気」
リーヤはそう言葉にするが、俺が冷えると思うくらいなので、スカートを履いているリーヤはかなり冷えている可能性がある。
体を冷やすと、何かが起こったときに対処できない可能性がある。
そこで俺はあるものを取り出す。
「ろうそく?」
「ああ、ここからさらに冷えたり暗くなっても困るからな、役に立つかはわからないがな」
「ん、大事」
地下水道の中は、当たり前だが全く明かりがなく暗い。
モンスターはいないが、かなり不気味だ。
よかったところは、あまり匂いなどがしないところだろうか?
どれくらいの距離を進めばいいのかわからなかった俺たちは奥へ奥へと向かっていくのだった。




