カッコいい?幻想だ
俺とリーヤは夜の学園内を進む。
向かった場所というのは、名前の通り地下に続いている可能性がある場所。
学園に唯一ある地下水道へと続く扉だ。
存在があることは知っている。
問題は、ここにあることは知っていても、中には絶対に入ることができないからだ。
俺は扉のノブに手をかける。
すると、驚くことに扉はひら……くようなことはなく、ガチャガチャと閉まっていることが確認できるくらいだ。
「ここからじゃないのか?」
「開かない?」
「ああ」
「ほんと」
俺と入れ替わるようにして、リーヤドアノブに手をかけて回そうとするが同じようにガチャガチャとするだけで、開くことはない。
「ダメ?」
「みたいだな」
どういうことだ?
地下に繋がる場所とすれば、このゲームではここ以外にはない。
そのはずなのに、入ることができない。
何か道具があれば入ることができるというのならば、それはなんだろうか?
それか力押しで開けるとかになるのだろうか?
俺は力をかなり込めて扉を押す。
だけど、現実で起こるような少しかみ合わせが動くようなこともなく、扉はびくともしない。
「やっぱり何か必要なものがあるのか?」
「どうだろ……」
「わからないけど、必要なものがあるってことか」
リーヤは曖昧なことを言ったけれど、俺はそう解釈する。
何が必要なのか……
ゲームのときには行けないと思っていた場所なので、余計に情報がない。
例えば鍵。
本来であれば、一番可能性があるものだが、今回は違うだろう。
だって扉に鍵穴がない。
そこから考えられるのは、ギミックだ。
問題はそのギミックが何なのか分からないところだ。
簡単なものでいえばレバーなのだろうが、この世界はそんなに単純ではないだろう。
となれば考えられるのは、モンスターだろう。
リーヤのときもあったが、これまでいくつかのモンスターと戦った。
それも本来であれば、ゲームで登場していたのか怪しいモンスターだとすればなおさらだ。
何かがいる可能性がある。
エロティックタワーじゃない場所に……
あり得ない。
ゲームとしてやっていたときなら、そうやって文句を言ってたはずだ。
「いや、今も言うか……ありえねえ」
「どう……かした?」
「なんでもねえ。面倒なことになってきたと思ってな」
「ん」
俺はもう一度考える。
もし、エロティックタワー以外でモンスターが出るとすれば?
その答えは一つだったりする。
広い場所だ。
単純すぎないかと思うだろう。
だけど、このゲームが単純じゃなかったことがあっただろうか?
深く考えるよりも行動に移せと言わんばかりに……
だったら、俺が覚えている場所に行く。
正解?
そんなものは、うまくいったときに自然とついてくるものだ。
「リーヤ、いいか」
「ん!あなたについていく」
「ああ」
俺はそこからある場所へと向かう。
いったら悪いが、こんな時間に何かが起こる場所など決まっている。
体育館の裏手。
それなりに広くなっている場所でありながら、人がいるのを一度も見たことがない。
ゲーム中でも、この場所は意味があるのだろうかと何度も思っていた。
地下水道に続く扉もゲームのときには、開かずの扉だったことを考えると、これまでは何もなかった場所に何かがあると考えるのが自然の流れだった。
真っ暗。
月明りのみが照らされる場所。
「雰囲気だけはあるな」
「大丈夫?」
「な、何を言ってる?だ、大丈夫に決まっている」
近づけば近づくほどに不気味さが増している。
そのため、少し怖いのは仕方ないことだ。
決して怖がることは恥ずかしいことではない。
画面越しに見ていたときはそこまで恐怖を感じなかったが、現実として行くことになると、学園ということもあって恐怖感は増している。
だけど、少し近づいたところで、足取りは軽くなる。
イベントが始まったようだ。
「ここが怪しいな」
「ん」(ん)
「だけど暗いな」
俺はそう言ったタイミングを待っていたというように、月明かりが何かを照らす。
それと同時に、照らされた何かはこちらに向かって動き出す。
倍速のせいで迫りくる何かが分からなかったが、俺はうまく避ける。
「ちっ……」(ちっ……)
「誰だお前は」
「だれ……だろ……から……もら……だ」(誰でもいいだろ?見られたからには、死んでもらうそれだけだ)
「なんでだよ」
急展開すぎた内容に、イベントなのにツッコミをいれる。
そのタイミングで、襲ってきた相手が黒ずくめの姿で、先ほど照らされたものがナイフだということに気づいた。
なるほどと思ったと同時に、どうするのがいいのか考える。
ここは盾を装備できたり、謎の加護があるエロティックタワーではないからだ。
「おら……」(おらああああ!)
男はさらにナイフを構えて向かってくる。
そのタイミングで俺は体の自由を取り戻す。
まさかの展開に、俺は戸惑いながらも向かってくるナイフをなんとか避けようと後ろにのけぞった。
それがよかったのかはわからないが、地面に躓く。
「なに!」
「うお!」
体勢を崩した俺は、その勢いで足があがる。
相手の男も勢いがあったこともあり、予想外の足に避けることが間に合わない。
運がよかっただけだということは俺もわかっているが、うまくいったことに変わりはない。
男はのけぞりながらも、それなりのダメージを受けるが倒れない。
「は!学園に通っているようなお坊ちゃまなら、簡単に殺せると思ったんだがな。ナイフを見ても冷静だな」
「ふ!こうみえても、理性は強いほうだからな」
ナイフは確かに怖い。
刃に触れれば、それだけで激痛だろう。
本来であれば、そんなものをもっている敵がいれば怖いはずだが、暗闇から出てきたのが、ただこちらに敵意を向けてくる人だったのでよかった。
幽霊系のモンスターとか、それこそエロゲーだからドエロイ見た目のモンスターが出てくれば、俺だって対処が難しかっただろう。
でも、生身の人だ。
一撃目を当てられていることも、こちらにプラスに働いている。
だったらやれるはずだ。
拳を握ると俺と男は向かいあう。
「こい!」
「うおおおお」
雄たけびを上げながら、男に向かっていったタイミングだった。
「えい」
そんな声とともに、俺の横を高速で飛んでいった石は油断していた男に当たる。
「があああああ!」
急だったため、男も苦悶の声とともに、その場に膝をつくが……
それを見越したように俺の横をリーヤは通り過ぎて、いつの間にか持っていた木の棒で男を突く。
「足りない?えい、えい、えい……」
「が、ぐは、ああ……」
暗闇だということもあり、急所の辺りを狙って男に攻撃をしていく。。
どこにそれだけの力があるのかと思われるが、さすがはヒロインの中で一番筋力があると言われているだけあった。
最終的には可愛そうな声を上げる男が、その声が聞こえなくなるまで突きは繰り返された。
「勝利」
「ああ」
ブイと指をリーヤは俺に向けるが、敵ながら男に同情するしかなかった。




