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エロゲーは当倍速で  作者: 美海秋


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状況は常に変わるってね

 十階。

 順調に来られた俺たちは、転送装置を起動していた。


 転送装置の上には新しく扉が出来上がり、一階と五階、そしてこの十階の三つに簡単に行き来できるようになった。


「今日は終わりにするのか?」

「そうね。目標としてたところには到達できたもの」

「そうか」


 俺も、マンティコアと戦ったときに制服が完全に弾けとんだため、かなりのお金を消費したが、少しは稼げた。

 問題はアイテムだ。


 隠し部屋にあったアイテムは、主に装備。

 次に明かりアイテムのようなエロティックタワーで使えるもの。

 そして、一番レアなのは好感度を上げてくれるようなもの……かなり見た目はあれだが……


 そう、エロゲーなのでコスプレのようなものだ。

 見た目を変えることができるアイテムなので、追加課金の他に超低ドロップしたりする。


 ゲームのときであれば、それはもうゲットできれば嬉しいものではあるが、こうしてゲーム世界にいる今。

 隠し部屋から取れたアイテムが全てそれだとわかった結果。


 俺からすれば、いらないとしか思うことができない。


「ゴミしかなかったな……」


 超低ドロップアイテムなのだから、売れば高い金額になるのではと思うだろうが、それも間違いだ。

 本当に安値でしか売れない。


 どうして?

 見た目はただの服だからだ。


 でも唯一いい点があるとすれば、制服の変わりになることだろう。

 逆に問題点は?

 男で使えるものがないことだ。


 わかっている。

 この世界は元々男がやるエロゲーだ。


 よって、女性の見た目にこだわることがあっても、男の見た目にこだわる必要などない。

 わかってはいるものの、今のところ制服が完全に破れるような戦いをしているのは俺だけだ。

 だったら、俺にこそ予備の衣装が必要だと思うのだが、ない。


 よって、隠し部屋から出たアイテムだというのに、俺が使えるものがない。


 ヒロインたちはというと、興味津々でいくつもの服を眺めている。

 何かに使えるとでもいうのだろうか?


「帰るか?」

「そうね。一度戻るのがいいわね。アイテムはどうするの?」

「俺はいらないから、そっちで分けてくれ」


 どうせ使えないのだから……

 俺はそう思いながら、騒がしいヒロインたちとともにさっさと転送装置を使って一階へと向かう。


 エロティックタワーから出ていきながら思う。

 アイテムは確かに使えないものばかりかもしれないが、それ以外は順調だった。

 いつもこういう日であれば、どれほどよかったか……


 エロティックタワーの入り口で今回のアイテムを前にワイワイと盛り上がるヒロインたちを見つつ、俺はその場を後にした。


 どこかに寄りたいというわけではないが、少しだけ学園内をうろうろとする。


 これは寮に戻ってしまうと、強制的に他のヒロインたちも戻らないといけなくなってしまうからだ。


「気を使うなら、ヒロインの一人とでも一緒ならよかったよな」


 自分でそう口にしながらも、悲しい現実に笑う。


「あーくそ、なんかないのか?」


 何かを払拭するために俺は、学園内を探索する。

 ゲームのときに行けなかった場所が、この世界になればいけるようになる。


 みたいなことは今のところなく、校門も固く閉ざされている。


 何もない。

 そう考えて、俺は寮へと戻るために最短ルート。


 植えてある草などを避けながら進んでいたときだった。

 体に違和感を覚えた。


 まさかと思っていたときには、イベントが始まっていた。


「なんだ?」


 俺の視線がある場所に固定されたと同時に、少し遠いが何かが見える。

 すると、チカと誰かが会っているようだ。


「何を話しているんだ?」


 会話内容については遠く、さらには倍速もあるため、全くといっていいほど理解はできない。


 何かを渡している?


 そう見えたものの、何を渡したのかはわからないとはいえ、チカも慌てているようですぐに去っていく。

 それを見届けた俺の体は現場に向けて歩きだす。


「この辺りだな」


 先ほどチカと誰かが会っていた場所に辿り着いた俺は地面に何かが落ちているのを発見した。


「これは……」


 まるで意味深な様子で落ちていた貨幣を拾うとポケットに颯爽としまったところで体の自由は回復した。


 なんとなく動きは予想できたことだ。

 問題は貨幣が何を表すのかだが……


「どう考えてもこれって、何かの取引現場なのか、もしくはあれか……」


 よくないお金儲けをしたか、お金の取り立てかだ。

 あのチカの性格を考えると、前半はあり得ないと思うがこの世界はどんなことが起こるかわからない。

 後半もだ。


 お金の取り立ては確かにある。

 でも、そこまでいくにはまだ時間があったはずだ。


「やっぱり考えても仕方ないな」


 俺がそう言葉にするのはなるようにしかならないからだ。

 さらにいえば、誰にもそれがわからないことだろう。


 こうなったら、チカに直接聞いたほうがいいだろうか?

 いや、すでに寮へと戻ったことを考えると、時間を後にしたほうがいいか?


 そう考えて歩いていたタイミングで体はまた自由に動かない。


「あれは……」


 俺が言葉にする先には、リーヤとチカがいた。


 また何かを話していたと思ったら……


「わか……せ……すん……」(わからないくせに指図すんな!)


 その言葉とともに、チカは高速のビンタをリーヤにする。


 倍速なため、思わず首がもげないか心配になったが、大丈夫なようだ。


 リーヤはビンタをされたというのに、何かをチカに言い返す。

 すると言われたチカはリーヤを睨むとすぐにどこかへ走り去ってしまう。


 どうなってんだよ……


 見たことがない状況に俺はただ驚きながらも、体は勝手に動く。


「見て……」(見てた?)

「ああ」

「チカ……い」(チカ悪くない)

「じゃあ、どうしろと」

「な……る……」(なんとかする。うちらで)

「わかった」


 勝手に会話が進むと、何かがわかったようだ。

 俺はさっぱりだがな……


「じゃあまずは……」

「ん」(ん)

「情報集めだな」

「ん」(ん)


 こうして、またどんな情報を集めるのかわからないが、イベントは進んでいく。


 俺は体が自由に動くのを感じながら、すぐにでもリーヤに何の情報を集めたらいいのかを聞こうとしたが……


「早速行動」

「あ……ちょ……」


 俺が静止させる間もなくリーヤは去って行くと途方に暮れるしかないのだった。

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