モンスターと悩みは尽きない
順調といえばいいのか、俺たちはエロティックタワーを進んでいた。
「いい感じだな」
「そうね。坊ちゃまの知識が役に立ってるってことね」
「だろ?」
「そのドヤ顔はむかつく」
「どうしてだよ」
弱いモンスターに関しては、そこまで苦戦するものではなかった。
これは、レベルが上がっているということもあるが、やはり人数が多いということも関係している。
確かにモンスターの数も多いことには多いが、このゲームはエロゲーなので、こういうところの作りはしょうがないとはいえ雑だ。
元々二人で探索することためには大きく、五人では少し小さい程度の部屋が何個もあるような感じなので、モンスターが多すぎればモンスター同士身動きがとれなくなりそうだ。
そうなれば、ヤンの魔法が効果的になりすぎる。
さらにいえば、モンスターの数というのも、階ごとに出てくる総数が決まっているというゲームのときからの設定が今も変わっていないことだ。
「順調なのがちょっと怖いよな」
「あんまりそういうことを言わないでよ……本当によくないことが起こったらどうするつもり?」
「そうならないようにしないとな」
警戒はいつも以上にする。
どんなモンスターが出てきても対応できるようにしないといけないし、さらにはヒロインたちがどんな行動をするのかも見ておく必要もある。
どうして、エロゲーなのにここまで神経を使わないといけないんだ?
そんなことを思いながらも俺たちはエロティックタワー内を探索していく。
「どうかした?」
「いや、隠し部屋とかないかなと思ってな」
「そう」
急に話しかけてきたのは、リーヤだった。
マンティコアとの戦いから懐かれたのだろうか?
「リーヤはどうかしたのか?」
「ん……気になることある」
「どんなのだ?」
「チカのこと」
「チカか……」
確かにエロティックタワーに入る前。
集合するときに教室まで一緒に来たことなど、すでに普段とは違う。
この状況で何かがあるとすれば、チカなのだろう。
「何に気をつければいいんだ?」
「わからない」
「そうか」
「ん……曖昧、ごめん」
「気にするな、むしろ言ってくれるだけ助かる」
何か俺たちには見えていないことも、NPCとしてなのか、それとも同じメインヒロインとして、何か感じることがあるはずだからだ。
俺たちはモンスターを倒しながらも、いくつかの隠し部屋も発見できた。
だが、あるのはアイテムだけで、リーヤのときにあったような、エロティックタワー内の隠し部屋にあるはずもないようなものはさすがにない。
ま、普通に考えれば、イベントが始まらないことには、現れることがない場所ってことだよな、あのときのは
……
そうなると、今は見つからなくても仕方ない。
俺はそう納得しながら、九階までやってきた。
後一ついけば転送装置があり、今回のエロティックタワーをいく上で、目標としている地点だ。
「順調ね」
「ああ、面倒なモンスターがここから増えるけどな」
「ほんとに?」
「ああ」
何故か十階ではなく、九階からモンスターに面倒な存在がまた増える。
それが今回のモンスターである、イビルアイだ。
名前の通り、目玉の怪物だ。
目からは遠距離攻撃のレーザーと、見たものを少しだけ止めることができる何かが出る。
「予想通りだな」
「絶対に嫌なほうでしょ」
「そうだな。これだけひしめき合ってたらな」
「あと、モンスターが隊列を組んでいるなんて、あり得ないでしょ」
「何を言ってんだ?こんなことはよく起こるだろ」
「よく起こるのはおかしいのよ」
ナオはため息をつく。
その理由はわかる。
モンスターであるイビルアイは、俺たちを確実に倒すためになのかかなりの数がいるし、綺麗に隊列を組むのはおかしいと思っているのだろう。
他のモンスターのようなひしめき合うという感じではなく、意図的に並んでいるなどというのは、あり得ないはずだ。
でも、このゲーム世界を操っている何者かがいるのは確実で、そう考えるとこれも普通のことだと感じてしまう。
「十階にいくためには必要なことだぞ」
「わかってるわよ、そんなこと……」
「だったら、俺からいくぞ」
「はあ?ちょっとは作戦とかあるんじゃないわけ!」
「いいからいくぞ」
イビルアイと戦うための作戦。
それは一つで、ゲームの時であれば攻撃をする前に視線がという言葉が流れ、その場所にイビルアイが攻撃をしてくる。
それもあって、この世界でも同じように視線が通る位置。
言ってしまえば、目の射線に入っていなければ攻撃というのは当たることはない。
とはいえ、今回は完全にモンスターであるイビルアイが隊列を組んでいることもあって、避けるのは難しいことを考えると、盾を持つ俺が突っ込んでいきなんとかするしかない。
「よし、シールドを適当に突き立てる」
俺は地面に盾を両手で構えながら、何枚かを地面に並べる。
これで、イビルアイからの縛りという状態異常はこの後ろにいればダメージを受けることはない。
残る問題は、ビームだ。
あれをどうにかするには、盾を置いているだけでは防ぐことはできない。
そこで考えたのが一つ。
「盾ナックル!」
ゲームのときでは、全く使うことがなかった小さな盾を両手に装備することで、俺が勝手につけた名前だ。
実際にはそれほどまでの攻撃力はない。
とはいえ、この盾二つを装備することで重要なことがある。
一つは装備が軽いおかげで動きやすいということだ。
これによって、モンスターの攻撃を避けることはもちろんのこと、ヒロインたちを守ることもやりやすくなる。
そして、盾のいい点といえばいいのか、攻撃力が低い代わりに最近のレベルアップで覚えたものがある。
オートで発動するそれは、シールドプッシュ。
盾で攻撃をした際。
自動的にモンスターを少し後退させられるというものだ。
ダメージの量は変化しないものの、これを使うことによってできることというのは、今の状況を変えてくれる。
「おら!おら!おら!」
イビルアイに向かって行った俺は盾で殴っていく。
これによって、隊列というのは崩れる。
とはいえ、イビルアイは俺に向かって縛りなどの状態異常を使ってくるが……
「きかねえ!きかねえ!」
事前にマンティコアで縛りをあれだけくらったことがいい経験になったようで、避けることも可能だ。
「ふははは!とどめは任せた!」
俺は状況を荒らすだけ荒らしながら、ナオたちに言う。
「しょうがないわね、任せなさい」
隊列が崩れてしまえばモンスターたちも同士討ちができるわけもなく攻撃が止まったりする。
その隙にうまくナオたちが攻撃をしていく。
こうしてあり得ないような、モンスターの待ち伏せも簡単にといえばいいのかを、対処することができたのだった。
多くのお金と素材アイテムが手に入ったところで後は十階に行くだけ。
順調なはずだが、一人だけため息をつくのだった。




