会話内容は予想できない
まず最初に会話をしたのは、少し前にマンティコアなどの戦いを一緒にしたリーヤだ。
「リーヤ」
「ん!あなたどうした?」
「少し会話をしておこうと思ってな」
「そう」
俺が思っていたことを口にすると、リーヤは少し残念そうにする。
それがどうしてなのか、なんとなく理由はわかっている。
こういうときには気の利いたことを言わなくちゃいけないはずだからだ。
気の利いたことといえば、話題をしっかりとふるということだ。
人とのコミュニケーションをとるうえで、かなり重要なことになってくるため、この選択をしないまま話をしたのがよくなかったはずだ。
よし、ここは……
「エロティックタワーはどうだ?」
「ん、モンスターと戦うのは以外と大変」
「それについては同意だな」
「後は、大きすぎ」
「わかる」
「あなたはどう思ってる?」
「俺か?」
話題を振っておいて、特に何かを感じるとかはなく、エロゲーの世界にある一要素だと言ってしまうのはさすがにダメだろう。
だったら……
「モンスターの色が悪いとかか?」
「どうして疑問?でも、同意」
「いや、人によってはあれをいい色だという人もいるかと思ってな」
「ヤン?」
「ああ、うん……」
こちらから話題を振っておいてなんだが、あまり振ってはいけない内容だったと少し後悔した。
だからといって、いい内容が思いつくほど気が利くわけではない。
それに意識してリーヤのことを見てしまうと、どうも視線が口元に向かってしまう。
見ないようにしなくてはいけないことだとはわかっているものの、そう思えば思うほど意識がそちらにいくのは人としての本能が働いているからなのか……
「ん……エッチ?」
リーヤも俺の視線に気づいたのだろう、少し恥ずかしがってそんなことを言われてしまう。
「いや、そんな……つもりはなかったんだけどな」
恥ずかしがることなく言えたと思っていたが、言っている途中で完全に声が裏返ってしまったので、意識していることなどまるわかりになってしまっただろう。
お互いに恥ずかしがって次にどんな話をするべきかを考えていると、「ゔゔん」と横のほうから咳払いが聞こえる。
視線をそちらに向けると、ナオが俺のことを睨み顎で次を促していた。
これは早めに他のヒロインたちとも会話をしないといけないな。
「えっと、すまないリーヤ。ちょっと他の奴らのことも確認してくる」
「ん」
俺は少し名残惜しいものの、次の人物。
近い順番にはなるが、カナに話しかける。
「どうだ?」
「どうだと、拙者に言われても筋肉はいい感じについてきたと思うぞ」
「筋肉の話はいいんだよ」
「では、どんな話をするんだ?」
「そうだな……」
カナに言われて次の会話を考えてみるが、リーヤのときも同じだったが、何を話していいのかわからない。
「どういう会話がいいと思う?」
「拙者にそのことを聞くのか?」
「いや、何かいい会話がないかなと思ってな」
「拙者が筋肉以外のことで、いい会話を思いつくと思っているのか?」
「ないな」
「そうだろ!」
「うん……自信満々に言うことではないけどな」
カナはあるようなないような筋肉を見せつけるようにしてポーズをとっている。
これを見ていると、本当に筋肉バカだなと思ってしまう。
「だったら、エロティックタワーに入って一番鍛えられた筋肉は?」
「おお!さすがはあなた。聞いてくれる内容が拙者のことをわかっているな。もちろん、胸筋だ!」
「あ、うん……そうか」
全然そんな風には見えないな。
強調するようにカナは胸の辺りの上着をはだけさせる。
だけど、なんといえばいいのか大きくはないが柔らかそうな胸が見えているだけだ。
「反応が薄いな……そうか!直接見ないといけないということだな!少し待ってくれ!」
「いや……そ……」
「ゔゔん!」
「ん”」
ナオともう一人分の咳払いのようなものが聞こえて、俺はチラッと確認すると、もすごい形相でナオが俺のことを見ていた。
これは、次にいけということだろう。
見せてもらえるいいチャンスだったが、こうなったからには仕方ない。
「いい筋肉なのはわかったから、大丈夫だ」
「そうなのか?では、次の筋肉話を!」
「ああ、また聞かせてくれ」
俺は逃げるようにして次に近いヤンに話しかける。
「よう」
「なんでしょうか?」
「いや、話をしようと思ってな」
「どんな話をわたくしとしてくれるわけでしょうか?」
「考えていないと言ったら?」
「では、わたくしから一つ質問があります」
「なんだ?」
「男性は、どうすれば興奮状態になるのでしょうか?」
「は?」
「ですから、どうすれば男性は興奮するのでしょうか?」
二度聞いたところでも、言った内容はわかるものの頭は理解できない。
何を言ってるんだ、こいつはとしか思えないからだ。
男がどうすれば興奮するのか?
それも今このタイミングで聞くことなのか?
いや、それを言うなら前の筋肉でもおかしかったか……
「それを聞いてどうするつもりだ?」
「えーっとですね。実践する機会に試そうと思いまして」
「なるほどな……」
正しいことを言ってるように感じるが、内容はおかしい。
普通こういうのって、戦い方とかそういうことじゃないのか?
どうして考えることが、エロの方向になってしまう?
ああ……エロゲーだからか……
結局のところ行きつく先はその答えだった。
どう答えるべきかを悩む。
バカ正直に性癖などを話すなんてことはさすがにするわけにはいかない。
となれば、答える内容は無難なものだ。
「まあ、脱げばある程度は興奮するんじゃないか?」
「そうですか。わたくしも脱げば興奮を与えることが可能と……いえ、そこからさらにわたくし自身の体を強調するためにも、亀甲縛りなどもすればより興奮を与えられるということでしょうか!」
「ど、どうだろうな」
「今から実践致しましょうか!」
ヤンはそう言うと、こちらはスカートに手をかけて脱ごうとする。
「ゔゔん!」
「ん”」
そんなタイミングで、また同じように……むしろさらに強い殺気のようなものを感じると、ナオが睨んでいる。
「な、なんだ……今はエロティックタワー内だろ、また機会があればな」
「いえ、それがさらなる興奮を与え……」
このままいたらまずいと思った俺は、さらに何かを言い出す前にその場を離れる。
危ないな、いろんな意味でこの二人は……
今後も気を付けないといけない。
そう思いながら、俺は最後の一人チカに話しかける。
「よ!」
「どうしたんだ?あたいに何か用か?」
「いや、ちょっと気になってな」
「何をだ?」
「お金のこととか」
「なんだ、そんなことか?気にするな、こうしてエロティックタワーに入っている間に、しっかりと稼げているからな」
チカは嬉しそうに笑う。
だけど、なんといえばいいのか、少し無理をしているように感じてしまう。
そもそも、このチカというキャラは下の子供たちが多いことで金額的に苦労をしているという設定だ。
だから銃を撃つにしても、その弾を買うお金を渋ったりすることが多く。
好感度を上げるためにも、通常であればヒロインが好むものをあげればいいのだが、チカに限っては全て好感度を上げるためには日常的に使うものになっていたりするので、上がりやすいと思うだろうが、問題は量にある。
日常的なもので好感度が上がるからか、もの凄い量をあげないといけなかったりする。
そして、お金についても必要な額というのも膨大だったりする。
これについては、理由がわからないが、増えたり減ったりするため、今の金額はわからない。
俺はゲームでの設定を思い出す。
会話がうまく思いつかないからだ。
それがチカもわかっているのか、俺に聞く。
「どうしたんだ?あたいと話したいことは終わりか?」
「まあ、そうだな」
「だったら、もっとモンスターを倒して、金を稼ごうぜ!」
頼もしいチカの言葉に俺は頷くと同時に、明かりアイテムの効果が切れる。
「じゃあ、行くわよ」
そしてすぐに、ナオの言葉で全員が動き始めた。




