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ボクたちのてのひら【改稿版】  作者: 雨露りんご
第9話 遥かなる視線
42/44

9‐8

 呆然とノーウィンがその男を見つめる。

 大佐という割には、あまりに年若い。


「あんたが大佐……? 歳は?」

「23だ」


 返ってきた答えに目を丸くしていると、傍らに立っていたバーミリア少尉が口をはさんだ。


「驚くのも無理ありません。シルジオで大佐になろうと思ったら、普通十数年はかかりますから」

「だろうな……こんなに若い大佐がいるとは知らなかった」

「おっとそいつは残念だ。シルジオに若手の大佐が誕生したってちょっとはうわさになってたんだが」


 そんな話をしていると、しかめっ面のセルファが口を開く。


「緑の輝き……あなた、風の……」

「いかにも。私めが四大の風を司る“風雲の証”の所有者でございます」


 仰々しく、しかし大したことではないとでも言いたげに告げられた真実に、ノーウィンとローヴが仰天した。


「ラウダは気づいてたのか?」


 驚いた様子のないラウダにノーウィンが問うと、彼は首を横に振るう。


「まさか。ただ、なんとなくしっくり来たというか」

「なんだ、気づいてたわけじゃねえのか」


 どうやら相手は証の所有者であることを気づかれていると思っていたらしい。意外そうな顔をしている。


「さっきも言ったけど、見られてるような不思議な感じがしたってだけ。あれも証の力?」

「そ。生まれ持った証のおかげで風を読むことができてな。気配を隠したり、周囲の様子をうかがったり。慣れ親しんだこの町で起こってることなんか、すーぐに分かっちまう」

「じゃあ、今回の事件の犯人も……?」


 大佐の話を聞いたローヴがおずおずと問うと、彼はにやりと笑んでみせた。


「もちろんとっくに特定済み。勇者が来ていることも証の力で薄々感づいてたし。なんなら君が女の子だってことも気づいてたよ、ローヴちゃん」


 唐突に女の子扱いされ、ぽっと頬を赤らめるローヴだったが、その隣ではノーウィンが険しい表情を見せる。


「結局、俺たちは最初から利用されてたわけか。目的は何だったんだ」

「勇者様の力ってのがいかほどのものか見たくてな。あ、結果は合格だから」


 軽々しくそう返されるも、ノーウィンは納得がいっていない様子だ。

 不快感を露わに、さらに問う。


「力を見てどうするつもりだ」

「どうするも何も、力量くらい知っておきたいでしょ。俺のご主人様になるわけだし」

「……ご主人様?」


 思いもよらぬ答えに戸惑うノーウィンを見て、セルファが口を開いた。


「証を持つ者は勇者に付き従う宿命を背負っている。前に話したはずよ」

「あ、ああ。そうだった……」

「え? じゃ、じゃあ大佐さんも一緒に旅に?」


 そこまで言われて初めてローヴは気がついたらしい。

 目をぱちくりとさせている。


「ん。そういうこと。だから今回の一件、俺としては一生がかかった大事なものだったわけ。これで納得かな、()()()()()さん」


 にこやかにそう言う大佐だったが、一方のノーウィンはというと、その単語を耳にした途端、表情が強張った。


「……あんた、俺を知っているのか」

「結構前からな。赤い髪ってだけでも珍しいのに、()()()()で凄腕の傭兵……気にならないはずないだろ?」


 これまた大したことではないように言ってのける相手だったが、ラウダとローヴは初めて聞く話に目を瞬かせる。


「ノーウィンさん……記憶、ないんですか……?」

「……ああ。7年前より昔の記憶がない」


 そういって仲間に向ける顔は、どこか寂しそうだった。

 そこでふと、ラウダは彼と初めて出会った時に聞かれたことを思い出す。


『記憶喪失か?』


 あの時の真剣な眼差し。

 きっと自身の記憶につながる手がかりを得ようとしていたのだろう。


「さて」


 大佐はそう言って椅子から立ち上がると、ゆっくりとラウダの前に歩み寄る。


「こっからはお前らの仲間として行動させてもらう。よろしく頼むぜ、勇者様」


 そして優雅に一礼してみせた。

 そんな彼を、ラウダは複雑な表情で見つめるのだった。

第9話読んでいただきありがとうございます!


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一評価につき作者が一狂喜乱舞します。

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