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『異世界に行ったら、鞄の中が実家の商店でした』  作者: 稔


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木工品、新作続々!

数日後。

私はいつものように、村の中を歩いていた。

植物の観察をしたり、畑の様子を聞いたり。

最近は、特に目的を決めずに村を歩くことも増えてきた。

村の人たちと話をしていると、今まで知らなかったことが分かることもある。


「この作物は、こっちの時期に植えるんじゃ」


「へえ……」


「今年は雨が少なくてのう」


「なるほど」


そんな話を聞きながら歩いていると――


「ちほさん!」


木工職人さんから声を掛けられた。


「あ、職人さん!」


「ちょっと見てもらいたい物があるんじゃ」


「新作ですか?」


「うむ」


私は作業場へ向かった。

そこには、以前見せてもらった寄木細工とは少し違う木工品が並んでいた。


小さな箱。コースター。

模様の入った小物入れ。


さらに、木の色を組み合わせた小さな飾りまである。


「わぁ……」


思わず声が出る。


「どれも違う模様ですね!」


「同じ物を作るのも悪くないが、せっかく余った木を使うんじゃ。色々試してみたくての」


「いいですね!」


一つずつ手に取ってみる。

どれも小さい。でも、木目や色の違いがあって、一つ一つ表情が違う。


「これ、全部買います!」


「全部?」


「はい!」


さすがに全部が売れるかは分からない。

でも、まずは地球で試してみる。


「では、頼んだぞ」


「任せてください!」


私は木工品を大事に抱えて、小屋へ戻った。

そして――


「さとるー!」


「姉さん、帰ってきた?」


「新作よ!」


「おお!」


私は持ち帰った木工品を並べる。


「また増えたな……」


「職人さんが作ってくれたの!」


「へえ。前の寄木細工とはまた違う感じだな」


「でしょ?」


さとるも一つ手に取って眺める。


「これ、普通に良さそうじゃん」


「じゃあ、お願い!」


「はいはい。写真撮って、出品してみるよ」


「よろしく!」


これまでにも村の商品はいくつか売れている。

布製品。革製品。そして寄木細工。

少しずつだけど、地球側でも売れる商品が増えてきた。私は並べられた木工品を眺める。


「これ、全部売れたら職人さんにちゃんと伝えないとね」


「そうだな」


売れた。だから、また仕入れる。

その繰り返しができればいい。


「うむ……」


私は腕を組んだ。


「こっちでの商売も、少しずつ軌道に乗って来たか?」


最初は、ただ村の人たちと物々交換をしていただけだった。

それが今では、村で作った物を買って、地球で売る。


「まさか二号店が異世界になるとは思わなかったけど」


「二号店って……」


さとるが苦笑する。


「まあ、間違ってないか」


「でしょ?」


もちろん、普通の店とは全然違う。

商品を作るのは村の職人。

それを私が買う。

地球側では、さとるが販売する。


そして売れた分のお金で、また村の商品を仕入れる。


「村の職人が作る。私がが買い、地球で売る。売れた分をまた仕入れる」


私は指を折りながら確認する。


「……いい流れ!」


まだまだ小さい。

大きな商売とは言えない。


でも――


「小さな商売の循環を作っている段階かな?」


さとるも頷く。


「それが続けば、村にもお金が入るしな」


「そうなのよ!」


今まで村では、作った物を自分たちで使うか、物々交換することが多かった。


でも、地球という新しい市場ができた。


そこで価値を見つけてもらえれば、村の職人たちの仕事そのものが収入になる。


「なんだか、ちょっとずつ商売らしくなってきたわね」


私は新作の木工品を眺める。

異世界で生まれた小さな木工品。


それが海を越えて――いや、世界を越えて地球へ届く。


「次は、どんな物が売れるかな?」


私はそんなことを考えながら、さとるが商品を撮影するのを眺めていた。

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