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『異世界に行ったら、鞄の中が実家の商店でした』  作者: 稔


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比べるだけでは分からない

「うーむ……」


私は小屋の机に座り、広げたノートを眺めていた。ここ数日で、村の畑にある作物をいくつか聞き取りしてみた。


種を蒔いてから収穫までの期間。

水やりの回数。育てる時期。

分かる範囲で、いろいろ書き込んである。


「数種類の生育状況は把握したけど……」


私はノートをめくる。


「地球と全く同じ物はないんだよね」


見た目が似ている野菜はある。

大根に似たもの。蕪に似たもの。

葉物野菜に似たもの。でも、地球の野菜とまったく同じというわけではない。


「似たような野菜と比べてみると……」


成長が早いものもある。

逆に、地球の似た野菜より時間がかかるものもある。


「こっちの世界のほうが早い物もあるし、遅い物もある……」


私は腕を組む。


「……比べること自体、あまり意味がないのかな?」


そもそも品種が違う。土も違う。気候も違う。

日照時間だって違う。そんな状態で、地球の野菜と異世界の野菜を比べても、正確なことなんて分からない。


「うーん……」


私は頭を抱える。


「気にしすぎか?」


「+神」が気になっているせいで、何でも関連付けて考えてしまっているのかもしれない。


ユーカリが翌日に発芽した。

果樹にも「+神」が付いていたし、竹にも付いていた。だから、この世界の植物についてまで気になってしまう。


「……考えすぎかなぁ」


私はノートを閉じる。


「まあ、持ち込むのは許可を取ってるし」


ミカミさんにも確認した。

この世界の担当神からも問題ないと言われている。なら、必要以上に心配することもない。


「観察は続けるか」


何か変化があれば、その時に気づけばいい。

今すぐ答えを出す必要もない。


「記録しておけば、後で分かることもあるだろうしね」


私はノートを棚にしまう。


「さて……」


植物のことばかり考えていても仕方がない。

村では今日もいろいろな物が作られている。

水車もある。織り機もある。木工品もある。


「そろそろ、また村を見て回ろうかな」


そう思いながら、私は小屋を出た。

植物の謎は、ひとまず保留。

分からないことは、分からないままでいい。


焦らず、少しずつ。それが、この世界で暮らしていくコツなのかもしれない。

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