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『異世界に行ったら、鞄の中が実家の商店でした』  作者: 稔


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この世界の普通を知ろう

「さて……」


私はノートを片手に、村の畑を歩いていた。

昨日から始めた植物の観察。

まずは、この世界にもともと存在している植物から調べてみることにした。

私が地球から持ってきた植物だけを見ていても、比較する基準がない。


「この世界の普通を知らないとね」


畑では、村人たちが作物の世話をしている。

その中に、見慣れない作物があった。


「これって、何ですか?」


私は近くで作業していた村人に聞いてみる。


「ん? それか?」


「はい。どのくらいで収穫できるんですか?」


「種を蒔いてから、だいたい三ヶ月ほどじゃな」


「三ヶ月……」


私はノートを開く。

今回聞いているのは、この世界にもともとある作物だ。

紫色をしていて、馬渡模様のような模様が入っている。形は、大根と蕪を混ぜたような感じ。


「見た目は大根っぽいけど、蕪にも似てる……」


地球にはない植物だ。

もちろん名前も聞いておく。


「これって、何ていう作物なんですか?」


「紫蕪じゃよ」


「紫蕪……なるほど」


私はノートに書き込む。


【紫蕪】

【種まきから収穫まで:約三ヶ月】


さらに、分かる範囲で種を蒔く時期や、水やりの頻度なども聞いておく。


「ありがとう!」


「なんじゃ、急にそんなことを聞いて」


「ちょっと植物のことを調べてるんです」


「ほう……」


村人は少し不思議そうな顔をしていた。

私はそのまま別の畑へ向かう。

そして、また聞く。


「これは?」


「小麦じゃ」


「収穫までどのくらい?」


「季節にもよるが……」


そんな感じで、一つずつ聞いていく。

ノートには少しずつ、この世界の植物の情報が増えていった。


「ふむ……」


私はノートを眺める。

地球から持ってきた植物の成長速度。

そして、この世界に元からある植物の成長速度。まだ数種類しか比べていない。


でも――


「……そもそも、この世界の植物って少し成長が早い?」


そんな疑問が浮かんだ。

もちろん、まだ決めつけるには早い。

土地や気候の違いもある。

品種によっても成長速度は違う。

それに、今回聞いた紫蕪だけが特別に成長が早い可能性もある。


「元々、この世界の植物はこういう性質なのか?」


それとも――


「この植物だけ?」


私はノートを見ながら考える。

地球から持ってきたユーカリは、種を蒔いた翌日に芽が出た。


これは「+神」の影響かもしれない。


でも、この世界にもともとある植物まで成長が早いのなら、話が変わってくる。


「……これは、まだまだ聞き取りする必要がありそうね」


少しの種類だけでは判断できない。

もっといろんな作物を調べてみよう。

畑だけじゃない。


森にある植物や、果樹。

薬草として使われているもの。

村人が昔から育てている植物。


「比較するなら、数が必要よね」


私はノートを閉じる。


「よし。しばらく植物観察を続けよう!」


+神の謎を調べるためにも。

そして、この世界そのものを知るためにも。


まずは――この世界の「普通」を知ることから始めよう。

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