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『異世界に行ったら、鞄の中が実家の商店でした』  作者: 稔


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もう少し大きな入口が欲しい!

「しかし……」


私は運び込んだユーカリの苗木を眺める。

二十本。一本ずつ鞄を通して運んできた。


「量が多くなると、この鞄の入口だとこっちに運び込むのも面倒ね……」


苗木ならまだいい。でも、これから木材や農具、もっと大きな物を運ぶことになったら――。


「もう少し大きな物に能力を付けてくれれば良かったのに!」


思わず愚痴が出る。

すると、さとるが呆れたように言った。


「姉さん……」


「なに?」


「それだと姉さんも、すぐに地球に戻ってくるでしょ」


「……」


私は黙った。

確かに。今の鞄だからこそ、私はこの世界に残っている。もし人間一人が普通に通れるような大きな入口だったら――


「……そりゃそうか」


簡単に地球へ戻れる。

そうなると、そもそも私がこの世界で生活する必要がなくなってしまう。


「でもさ」


私は少し考える。


「もし、こっちの世界を発展させたいとかなら、言ってくれれば手伝うわよ!」


「本当か!?」


さとるが食いついた。


「んー……多分」


「多分かよ!」


「だって、私もこっちの生活があるし」


「まあ、それはそうだけど」


私は鞄を見る。この小さな入口のおかげで、今まで色々な物を運び込んできた。


食料。農具。種。水車の模型。織り機。

そして今度は苗木。


「せめて軽トラでも出入りできれば……」


「まあ、確かにね……」


軽トラックがそのまま入れるなら、運べる物の量は一気に増える。木材だって運べる。

農業機械だって運べる。何ならユーカリの苗木だって、一度で全部持ってこられる。


「でも、そんなことしたら本当に何でも持ってこれちゃうわね」


「そうそう」


さとるも頷く。


「だから今くらいがちょうどいいのかもな」


「……そうね」


多少不便だからこそ、考えて持ってくる物を選ぶ。それに、村の人たち自身が作れるようになってきている。


「まあ、今はこれでいいか」


私は運び込んだ苗木を見る。


「苗木はこれでおしまい!」


「全部終わった?」


「うん。あとは――」


私は残っている物を見る。


「種袋だよ」


「分かった」


種なら苗木ほど場所を取らない。

こちらへ運び込むのも、それほど大変ではないだろう。


「じゃあ、私はユーカリを植えるところを探してくる!」


「どこにするの?」


「小屋から離れたところ!」


私は小屋の周囲を見渡す。

ユーカリは燃料用に育てる予定だ。

大きくなることを考えれば、住んでいる小屋のすぐ近くに植えるのは避けた方がいい。


「竹も広がるから離してるし、果樹も大きくなるから別にしたしね」


「じゃあ、また何かあったら声掛けて!」


「分かった!」


私はそのまま歩き出した。

小屋から離れた場所へ向かいながら、周囲を見渡す。


「さて……」


新しい植林地。将来的には、ここが燃料用の木を育てる場所になる。


「まずは二十本と種からだね」


まだ小さな苗木。けれど数年後には、薪として使えるくらい大きな木になっているかもしれない。


そして、その先には――


「村のお風呂!」


私は一人で小さく笑った。


「気長にやりますか」

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