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『異世界に行ったら、鞄の中が実家の商店でした』  作者: 稔


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燃料の木を探して

確かに、言われてみればその通りだ。

村に大衆浴場を作るなら、まずは燃料。

大量のお湯を沸かすためには、大量の薪が必要になる。


「この辺りの森を切りまくったら、あっという間に環境破壊……」


今ある森を浴場のためだけにどんどん伐っていたら、さすがにまずい。

この世界だと、どうしても燃料は薪だものなぁ。


「うーむ……」


何か、燃料として使える木を別に育てられないかしら?成長が早い木を植える?


それなら、森をむやみに切らなくても済む。


「成長が早い木……どんなのがあるかしら?」


私はパソコンを開く。

そして検索する。


「成長が早い木……っと」


いろいろな木が出てくる。

その中で目に止まったのが――


「ユーカリ?」


確か、成長がかなり早い木だったはず。

燃料として利用されることもある。


「これなら……」


私はさらに調べていく。

成長が早い。薪にもできる。

しかも種類によっては、かなり大きくなる。


「うーん……」


条件だけ見ると、かなり良さそう。


でも――


「ユーカリって、他の植物に影響を与えるとか聞いたことがあるのよね」


調べてみると、ユーカリについては、周囲の植物への影響が指摘されている研究もある。

一方で、種類や環境によって結果が異なり、ユーカリの研究結果が一致しているわけでもない?


「うーん……」


この世界でどうなるかなんて、もっと分からない。そもそも、今まで地球の植物をいくつか持ち込んでいるけど、ユーカリは燃料目的。


広い範囲に植えることになる可能性もある。


「これは、勝手に持ってきちゃ駄目ね」


それに、成長が早い植物ほど、環境に与える影響もちゃんと考えたほうがいい。


「でも……」


燃料問題を解決できる可能性はある。


「これなら、二、三年でかなり大きくなるのかな?」


私は画面を見ながら考える。

種から育てる方法もある。

苗木を持ってくる方法もある。


「うーん……種で増やした方が良いのか……」


迷う。今までなら、


「便利そう! 持ってこよう!」


で済ませていた。

でも、今回はちょっと違う。

燃料として大量に植える可能性がある。

だったら、ちゃんと確認してからにしたほうがいい。


「……ミカミさんに聞くしかないか」


私は鞄を見る。


「さとるー? 居るー?」


「いるよ! なーに?」


いつものように、鞄の向こうから返事が返ってくる。


「ミカミさんにメール打って!」


「なんて?」


「ユーカリの木、こっちに持ち込んでいいか?」


「ユーカリ?」


「そう!」


「分かった。聞いてみるよ」


「お願い!」


これで、少なくとも勝手に持ち込むことはしなくて済む。


「返信着たら教えて!」


「分かった!」


さとるの声が聞こえなくなる。

私はもう一度、パソコンの画面を見る。


「ユーカリか……」


燃料問題を解決するための木。

もし持ち込めるなら、試しに少量から育ててみるのもいいかもしれない。


ただ――


「まずは、返事を待ちましょう」


今まで以上に慎重に、この世界に何を持ち込むか。便利だからという理由だけで決めてはいけない。


「……お風呂って、思った以上に大変ね」


私は苦笑した。

大衆浴場を作ろうとしただけなのに。


鉄。薪。水。排水。


そして今度は、燃料となる木まで考えることになった。


「まあ……一つずつね」


まずは、ミカミさんの返事待ちだ。

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