異世界で初めての湯船
ワクワクする。
今日は待ちに待った、お風呂の日だ。
木の湯船はもう設置してある。
あとは、お湯を入れるだけ。
私は湯船を眺めながら、鞄から伸びているホースを確認する。
「よし。準備はできてる」
地球側のさとるにもお願いしてある。
あとは――
「お湯、お願い!」
『はいはい』
返事が聞こえる。
すると、ホースから勢いよくお湯が流れ始めた。
「おお!」
湯船に少しずつお湯が溜まっていく。
湯気が立ち始める。
「……いいわね」
私は湯船のお湯を手で確認する。
温かい。ちゃんとお風呂に入れる温度だ。
「よし……!」
私は服を脱ぎ、恐る恐る足を入れる。
「……あったかい」
足先から温かさが伝わってくる。
そして、ゆっくりと身体を沈める。
肩まで浸かる。
「はぁぁぁ~~~……」
思わず声が漏れる。
「これよ……これ!」
温かいお湯に身体を包まれる。
三日間、苗木を植え続けたせいで痛かった身体が、一気に緩んでいくような気がする。
「んー……」
目を閉じる。
「やっぱお風呂よ!」
私はしみじみと思う。
「お風呂!」
タオルで身体を拭くだけの生活とは、全然違う。やっぱり日本人として、湯船は大事だ。
「最高……」
しばらく何も考えず、お湯に浸かる。
村のことも。果樹園のことも。竹のことも。
商品作りのことも。今だけは全部忘れる。
「……ふぅ」
ゆっくり息を吐く。
「幸せ」
これだけで、異世界に来て良かったと少し思えるくらいだ。
……いや。それは言い過ぎか。
「でも、本当に気持ちいい」
私は湯船の中で足を伸ばす。
木の香りもする。
地球から持ってきた普通のお風呂とは違う。
これは、この世界で作ってもらった湯船だ。
「なんか、贅沢ね」
そう思っていると、ふと村のことが頭に浮かぶ。
「……村にも大衆浴場とかあれば、みんなにも味わってもらえるんだけどなー」
村の人たちにも、この気持ちよさを知ってほしい。仕事の疲れを、お湯に浸かって癒す。
きっと喜ぶ人も多いだろう。
でも――
「流石に、無理だよな……」
大きな湯船。大量のお湯。それを沸かす設備。
水を運ぶ仕組み。排水も考えないといけない。
「……うん。無理そう」
今の村には、まだ難しい。
私は再び肩までお湯に浸かる。
「まあ、今は私だけでいいか」
まずは自分が楽しめれば、それでいい。
「はぁぁ……」
もう一度、身体の力を抜く。
今日くらいは、何も考えずにゆっくりしよう。
……そう思っていた。けれど。
「大衆浴場……かぁ」
一度思いついてしまった考えは、なかなか頭から離れなかった




