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『異世界に行ったら、鞄の中が実家の商店でした』  作者: 稔


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木の湯船、完成!

数日後。


いつものように村へ仕入れをしに行った時だった。

木工職人さんのところへ顔を出すと――


「ちほさん、湯船ができたぞ」


「えっ!?」


思わず聞き返す。


「湯船ですか!?」


「そうだ。頼まれていたやつだ」


「やったー!」


完成した!木の湯船が!

ちほは、一気にテンションが上がる。


「見せてください!」


「こっちだ」


職人さんに案内されて、作業場の奥へ向かう。

そして――


「おお……!」


そこには、立派な木の湯船があった。

想像していたよりもしっかりしている。

厚みのある木材を組み合わせて、きちんと形を整えてある。


「これ……本当に作ってくれたんですか?」


「頼まれたからな」


「すごい……」


私は湯船の中を覗き込む。

大きさも十分。

私が一人で入るには、申し分ない。


「これなら入れる!」


思わず笑顔になる。

これでようやく、ちゃんとしたお風呂に入れる。


ただ――


「これ、どうやって運びましょう?」


私の小屋まで持っていく必要がある。

さすがに一人では無理。

すると職人さんが、


「何人かで運べばいいだろう」


と言ってくれた。


「お願いします!」


こうして、村の職人さんたち数人に手伝ってもらい、湯船を運ぶことになった。


「せーの!」


「よいしょ!」


「もう少し右だ!」


「そっち持ち上げて!」


みんなで慎重に運んでいく。

小屋までの道は決して平坦ではない。

途中で何度か休憩を挟みながら、ようやく小屋までたどり着いた。


「ここに置きましょう」


小屋の中に運び込み、設置場所を決める。


「うん。ここならいいかな」


これで湯船は設置できた。

残る問題は――


「お湯をどうやって入れるか」


私は鞄を見る。地球側とは繋がっている。

そして、ホースもある。


「……」


私は湯船を見る。ホースを見る。

もう一度、湯船を見る。


「……単純に、湯船にホース突っ込めばいいか」


よく考えたら、それでいい。

特別な設備なんて必要ない。

ホースからお湯を出して、湯船に溜める。


「うん。これでいいわね」


私はホースを湯船の中へ入れる。

あとは地球側でお湯を沸かしてもらえばいい。


「よし!」


木の湯船は、ちゃんと設置できた。

お湯を入れる方法も決まった。


「いよいよ……」


私は湯船を眺める。


「異世界で、お風呂に入れる!」


ここ数日、ずっと楽しみにしていた。

これはもう、早く入りたい。


「さとるー!」


私は鞄の向こうへ声を掛ける。


「なに?」


「お風呂、完成したよ!」


「おお、やっとか」


「今夜、お湯をお願い!」


「はいはい」


これで準備は整った。

あとは――お湯が溜まるのを待つだけだ。


「ふふっ」


久しぶりの湯船。

想像するだけで、今から楽しみだった。

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