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『異世界に行ったら、鞄の中が実家の商店でした』  作者: 稔


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一輪車、完成!

「できたぞ」


村の木工職人さんが、そう言いながら持ってきたものを見て――


「おお!」


思わず声が出た。


「これが……一輪車?」


そう。私が地球の画像を見せて作ってもらった、手押し一輪車だ。


木で作られた荷台に、車輪が一つ。


見た目は少し違うけど、ちゃんと一輪車になっている。


「持ってみてもいいですか?」


「もちろんだ」


私は取っ手を握って、少し持ち上げてみる。


「軽い!」


そのまま地面に置いて、試しに押してみる。


「おお……」


スイスイ進む。


「これなら……」


近くに置いてあった苗木を何本か荷台に載せてみる。


「よいしょ」


そして、また押す。


「…………」


私は思わず立ち止まった。


「……何これ。楽すぎる!」


今まで背負子に苗木を載せて、何度も往復していた。

それが、これなら荷台に載せて押すだけ。


「なんで今まで背負ってたんだろう……」


もっと早く頼めばよかった。


「これなら、苗木を運ぶのもかなり楽になります!」


私が喜んでいると、職人さんが一輪車を眺める。


「ただ……」


「はい?」


「実際に使ってみると、少し気になるところがあるな」


「気になるところ?」


「荷台がもう少し深いほうが、土を運ぶには良さそうだ」


「ああ……確かに」


「それと、この取っ手の部分も、もう少し握りやすくしたほうがいいかもしれん」


職人さんは一輪車を持ち上げ、細かい部分を確認していく。


「車輪も、もう少し太くしたほうが土の上では安定するかもしれん」


「なるほど……」


私は感心してしまう。私が持ってきたのは、あくまで地球の一輪車の画像。


それを見て作ってくれた。


でも、実際に作って使ってみると、職人さん自身が改善点を見つけている。


「これなら、ここを変えて……」


職人さんがその場で改良を始める。


「うん。こっちの方がいいな」


少し形が変わった一輪車を見て、私は頷く。


「ありがとうございます!」


「いや、こちらも面白い道具を見せてもらったからな」


職人さんは楽しそうに笑う。

私は完成した一輪車を見る。


「……うん」


なんだか、いつもの流れになってきた。

私が地球にある物を見つける。

画像を印刷して、村の人に見せる。


最初の形を作ってもらう。


そして――


「そこから改良が始まる」


水車もそうだった。農具もそう。

紡ぎ機や織り機もそうだった。

私が作り方を全部知っているわけじゃない。


ただ、こんな物がある。


こういうことに使える。そう伝える。

そこから先は、村の人たちが自分たちで考えてくれる。


「やっぱり、この方法がいいわね」


私が全部作るよりも、ずっといい。


だって、村の人たちが自分たちで使いやすい物に変えてくれるのだから。


「一輪車も、もっと良くなっていきそう」


そう思いながら、私は苗木を荷台に載せる。


「さて……」


そして、押す。


「うん。楽!」


これは本当に助かる。


これなら果樹園の作業も、今までよりずっと楽になる。


「作ってもらって良かった!」


私は一輪車を押しながら、果樹園予定地へ向かった。今度は、背負子で何往復もしなくて済みそうだ。


そして――


「木の湯船も、早く完成しないかなぁ」


次に楽しみなのは、やっぱりお風呂だった。


「これ、苗木だけじゃなくて土も運べるじゃない!」


私は一輪車を押しながら、思わず声を上げた。


今までは苗木を運ぶことしか考えていなかったけど、よく考えたら荷台があるのだ。


「土を載せればいいじゃない!」


近くの土を少し入れて、押してみる。


「……軽い!」


もちろん、土そのものは重い。

でも、背負って運ぶのとは全然違う。

これなら畑の土を移動させるのも楽だ。


「水も運べるし……」


水を入れた容器を載せて、また押してみる。


「これも楽!」


私は一輪車を押しながら、どんどん用途を思いついていく。


苗木。土。水。薪。


「……何でも運べるじゃない」


これは便利だ。

もっと早く作ってもらえばよかった。

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