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『異世界に行ったら、鞄の中が実家の商店でした』  作者: 稔


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湯船と一輪車を注文しよう

村へ向かう途中、私は印刷した紙を何度も確認する。今日は、村の木工職人さんにお願いしたいことがある。


一つは――


「木の湯船!」


そして、もう一つ。


「手押し一輪車!」


どちらも、今の私の生活には必要なものだ。


特に一輪車。


苗木を背負子で何度も運んだせいで、三日間の作業は本当に大変だった。


「次は絶対に楽する!」


そう決意しながら、村へ向かった。


◇


「これを作ってほしいんです」


私は木工職人さんに印刷した画像を見せる。

職人さんは紙を受け取り、じっくりと眺める。


「これは……大きな桶か?」


「そうです」


私は頷く。


「ここにお湯を入れて、中に入るんです」


「中に……入る?」


職人さんが首を傾げる。


「はい。こうやって身体を温めるんです」


身振り手振りで説明する。


「なるほど……湯を入れた桶に、人が入るのか」


「そうです!」


「随分と変わった使い方をするな」


まあ、この世界ではお風呂というもの自体が珍しいのかもしれない。


「木で作れそうですか?」


「木桶を作ること自体は問題ない。ただ……」


職人さんが画像をもう一度見る。


「これほど大きなものとなると、板の組み方を考えたほうがよさそうだな」


「お願いします!」


「分かった。作ってみよう」


「ありがとうございます!」


よし!これでお風呂への第一歩だ。

そして次。


「もう一つお願いがあります」


私は別の紙を取り出す。


「これは何だ?」


「手押し一輪車です」


「……?」


今度は一輪車の画像を見せる。


「土や苗木を運ぶための道具です」


「土を?」


「はい。こうやって載せて……」


私は簡単に使い方を説明する。

職人さんは画像と私の説明を交互に見る。

そして――


「なるほど……これは面白い」


「作れそうですか?」


「これなら作れそうだ」


即答だった。


「水車ほど複雑ではない。車輪が一つで、荷台を支える構造か」


「そうです!」


「材料もこちらにあるもので何とかなるだろう」


「本当ですか!?」


「うむ。少し考えてみる」


どうやら、一輪車は思ったより早く作れそうだ。


「お願いします!」


これで苗木を運ぶのが楽になる。

そして木の湯船も作ってもらえる。


「やったね!」


私は思わず小さく拳を握る。

これで私の生活改善を行えるはず!


今までは村のことばかり考えていたけど、これからは自分の生活も少しずつ快適にしていこう。


「完成が楽しみだ!」


そう言って、私は職人さんに頭を下げる。

村の発展も大事。


でも――自分が快適に暮らすことも、同じくらい大事なのだ。


さて。お風呂と一輪車。どちらが先に完成するかな?それも楽しみになってきた。

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