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『異世界に行ったら、鞄の中が実家の商店でした』  作者: 稔


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湯船と一輪車を村に注文する

村の木工職人に画像を見せて、


「これを作ってほしいんです」


と頼む。すると、


「これは……大きな桶か?」


「そうです。ここにお湯を入れて、中に入るんです」


「中に……入る?」


となる。一輪車のほうは、


「これは何に使う?」


「土や苗木を運びます」


と説明。職人が実物の構造をじっくり見て、


「なるほど……これは面白い」


となれば、二つの製作が同時に始まる。


特に一輪車は、水車と違って構造がかなり単純なので、村の職人がすぐに、


「これなら作れそうだ」


やったね!これで私の生活改善を行えるはず!

完成が楽しみだ!


ん……最近はずっと村のことばかり考えていた気がする。


水車を作ってもらったり。農具を紹介したり。

糸を作るための道具を持ってきたり。

織り機を作ってもらったり。

そして今は、果樹園まで作り始めている。


「……ちょっと待って」


私は小屋の中を見回す。

簡素な机。ベッド。小さな台所。

そして、隅っこに作った臨時のシャワー室。


「私自身の生活、全然改善されてないじゃない」


村のことばかり考えて、自分の生活は後回しになっていた。


これはまずい。


「少しは自分のことも考えないとね」


まず思いつくのは――


「お風呂かな」


やっぱりこれだ。

昨日、簡易シャワーを作ったことで多少は快適になった。

でも、やっぱり湯船には浸かりたい。

疲れた身体を温かいお湯に沈めて、


「はぁ~……」


ってしたい。


「うーむ……」


私は考える。

木の湯船を村に注文してみるか。


「多分、そんなには難しくないはず」


村には木工職人がいる。水車だって作った。

織り機だって作っている。大きな桶のようなものなら、作れるんじゃないかしら。


「それと……」


もう一つ欲しいものがある。


「手押し一輪車も頼むか」


これも必要だ。

苗木を運ぶだけで、かなり苦労した。

背負子で何度も往復するのは、さすがに身体に堪える。


「一輪車があれば、かなり楽になるはず」


今後、果樹園の手入れをするにも使える。

畑でも使える。村でも使える。

水車を作った時と同じように、村の人たちが改良してくれれば、それこそ村の道具になるかもしれない。


「よし!」


私はパソコンに向かう。


「画像を探して……」


木の湯船。手押し一輪車。

実物を持ってくるのは難しい。

でも、画像なら印刷できる。


「これと、これでいいかな」


いくつか分かりやすそうな画像を選ぶ。

さらに、簡単な説明も印刷しておく。


「これを見せれば、作って貰えるかなー!」


水車のときもそうだった。

最初から完成品を持ってきたわけじゃない。


きっかけになるものを見せれば、村の人たちは自分たちで考えて作ってくれる。


「今回も、それでいけるといいんだけど」


私は印刷した紙をまとめる。

そして、ふと思う。


「……私、村の人たちに何を頼むんだろう?」


お風呂を作ってください。

一輪車を作ってください。


「なんか、お願いばっかりね」


少し申し訳なくなる。

でも、どちらも村にとって役に立つ。


一輪車なんて、私が使わなくなっても農作業で使える。


お風呂だって、作り方が分かれば村の人たちも利用できるかもしれない。


「まあ、相談するだけならいいか」


私は印刷した紙を手に取る。


「よし。村へ行こう!」


こうして私は――自分の生活改善のための相談をしに、村へ向かうことにした。


今度は、村を発展させるためだけじゃない。

私自身が、この世界で快適に暮らすためにも。

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