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『異世界に行ったら、鞄の中が実家の商店でした』  作者: 稔


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思ったより大量の苗木

「さとる!」


鞄の向こう側にいる弟へ声をかける。


「今度は、植木屋さんに苗木を取りに行って!」


「一丁目の?」


「そうそう」


「軽トラで向かって!」


「今度は何を?」


「商品にならない苗木を貰ったのよ!」


「あー」


さとるが納得したように頷く。


「それを、そっちの世界に植えるって感じか!」


「そうそう!」


「分かったよ」


「頼んだわよ!」


「はいはい」


こうして、さとるに苗木の回収をお願いした。

私はその間に、植える場所をもう一度確認しておく。


前回決めた果樹用の場所。

広さは十分ある。


……たぶん。


◇


しばらくして。


「姉さんー! 取ってきたけど!」


鞄の向こう側から、さとるの声がする。


「いるよ!」


「どうするのよ?」


「ん?」


私は鞄のところへ向かう。


「こっちで引き取るわよ」


「いや」


さとるが何とも言えない声を出した。


「かなりの量がある」


「そんなに?」


「そうそう」


「何本くらいなのよ?」


「何十本だよ!」


「え!?」


私は思わず鞄を覗き込む。

そこには――大量の苗木。


「そんなに!?」


「そうそう!」


「……思ったより多かったようね」


私は苗木の山を見る。


「まずいな」


「何が?」


「小屋の中に、そんなに置けない」


「あー……」


さとるも納得する。

そりゃそうだ。

苗木を何十本も小屋の中に置いたら、普通に生活できなくなる。


「少しずつ鞄に入れて!」


「分かった」


まず一本。

鞄を通って、こちら側へやってくる。


「最初に、鞄から来たのは……」


私は苗木を見る。


「これは柑橘系だな」


「これが五本!」


「五本ね」


「はいよ!」


一本ずつ、こちら側へ運び出す。

続いて――


「次行くよ!」


「お願い」


さとるが次の苗木を持ってくる。


「これは……」


葉を見る。


「柿かな?三本!」


「分かった!」


柿の苗木を受け取る。

こちらも植える場所へまとめておく。

そして――


「次!」


「はいはい」


また苗木が出てくる。


「これは?……無花果?」


「正解!何本?」


「えーっと……」


さとるが数える。


「二十本近くあるけど!」


「え!?」


私は思わず苗木を見る。


「一時中断!」


「え?」


「無理!」


「何が?」


「小屋の中にそんなに置けないから!」


「確かに」


「予定地に運んでくる!」


「分かった!」


私は急いで外へ出る。

苗木を一本ずつ受け取り、果樹予定地へ運んでいく。


「よいしょ……」


一本。


「よいしょ……」


二本。


「……結構あるわね」


まだまだある。植木屋さんが、


「適当に見繕っておく」


と言っていた意味が、ようやく分かった。

本当に適当に見繕ってくれたらしい。


しかも――捨てる予定だった苗木だ。


「これ、全部育ったらどうなるのかしら?」


私は並んでいく苗木を眺める。


柑橘。柿。無花果。


まだ他にもある。


「果樹園になりそうね……」


最初は数本くらいを想像していた。

それが、まさか何十本もあるとは。


「まあ、貰えるものはありがたく貰う!」


苗木の状態は良くない。

だからこそ、これからちゃんと育ててみる。


「まずは、無事に根付いてくれるといいんだけど」


私は苗木を眺める。

これから何年もかけて育っていく木々。

今はまだ小さい。


でも、何年か後には――この場所が、本当の果樹園になっているかもしれない。


「……楽しみね」


私はもう一度、苗木を見た。


「さて」


まだ残っている。


「さとる!」


「なに?」


「次、お願い!」


「はいはい!」


今日のところは――植える前に、運ぶだけで一仕事になりそうだった。

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