売れ残りの苗木を異世界へ
あら。思ったより返信が早く来たわ。
メールの時間を見る。
「今日は事務所にいるのかしら?」
どうやら植木屋さんは、今日は店にいるらしい。
私は届いたメールを読む。
『柿、栗、梅、柑橘、無花果、胡桃の苗木はあるよ』
「おお!」
思ったよりあるじゃない。
さらに読み進める。
『でも状態はあんまし良くねーが。それでもいいのか?』
「もちろん!」
私はすぐに返信を打つ。
『状態はよくなくても大丈夫なので、引き取りたいです! 弟のさとるに取りに行かせます』
送信。すると、しばらくして返信が来た。
『なら、まとめて入口左に置いておくから、好きな時に取りに来てくれ』
「ありがとうございます!」
これで苗木は確保できそうだ。
思ったより種類が多い。
どれも実がなる木だ。
上手く育てば、こちらの世界で食料にもなるし、将来的には加工品にもできるかもしれない。
「さて……」
私は少し考える。
せっかく植木屋さんと連絡が取れている。
今なら、もう一つ聞いてみてもいいかもしれない。
「他に何か……」
有意義な植物。
資源になりそうなもの。
地球では普通だけど、こちらでは珍しいもの。
「苗木以外にも、いらない物があったら欲しいな」
でも、具体的に何が欲しいのかは分からない。
だったら――
「聞いてみるか」
私はメールを打つ。
『もし他にも、余っている植物や資源になりそうなものがあれば、引き取らせてもらえませんか?』
送信。
しばらくすると、また返信が来た。
『なんか……変わった事を聞くな?』
「ですよねー」
思わず苦笑する。そりゃそうだ。
普通、植木屋さんに、
「資源になりそうな物、何かありませんか?」
なんて聞かない。さらにメールが届く。
『まあ、適当に見繕っておく。ここに置いておいても捨てちまうやつだ。上手く育てば、元気も取り戻すかもしれねー』
「!」
これはありがたい。売り物にならない。
でも、捨てるには惜しい。
そんな苗木や植物を、こちらで育ててみる。
上手くいけば、異世界の新しい資源になる。
「ありがとうございます!」
私はすぐに返信した。
『助かります! よろしくお願いします!』
送信。
「よし!」
まずは苗木。
そして、植木屋さんが見繕ってくれる植物。
これで、しばらくは試せそうだ。
「どれが一番元気に育つかしら?」
全部が上手く育つとは限らない。
土が合わないかもしれない。
気候が合わないかもしれない。
水が合わない可能性もある。
でも――
「試してみないと分からないものね」
竹だって、まだ植えたばかりだ。
果樹も同じ。今は小さな苗木でも、数年後には大きくなっているかもしれない。
「……数年後かぁ」
ちょっと気が遠くなる。
でも、こういうものは早く始めるに限る。
「よし! これで先ずはいいかな?」
私は外を見る。
そこには、先日植えた竹が数本。
まだまだ小さい。
そして、その近くには――これから果樹も植えることになる。
「少しずつ増えていくわね」
最初は小屋と畑だけだった。
それが、竹になり、果樹になり、村には小物を作る仕事まで生まれた。
まだまだ小さな変化だけど。
「なんだか、村が少しずつ変わってきてる気がする」
私はそう思いながら、苗木を植える場所を考え始めた。
まずは――竹とは少し離したほうがいいわね。
そんなことを考えていると、ふと気づいた。
「……あれ?」
さとるに取りに行ってもらわないと、苗木が届かない。
「さとるに連絡しなきゃ……まあ、いつものことか」
こうして私は、またさとるを使うのであった。




