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『異世界に行ったら、鞄の中が実家の商店でした』  作者: 稔


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次は果樹を植えてみよう

さて。竹は植え終わった。

あとは――


「待つしかないわね」


植えたばかりの竹を眺める。

さすがに今日植えて、明日には立派な竹になるなんてことはない。

こればかりは、どうしようもない。


気長に待つしかないわね。


「竹は将来的な製品の原料として、と」


竹箒。竹ザル。竹籠。


上手くいけば、他にもいろいろな物が作れる。

今は数本だけだけど、増えてくれれば村の新しい産業になるかもしれない。


「よし」


竹については、ひとまずこれでいい。

となると――


「他のことを考えないとなぁ」


私は小屋へ戻りながら考える。

地球からこちらへ持ってこられる物。

しかも、こちらの世界でも再現できる物。

種については、すでにいくつか持ち込んでいる。畑では今も育ててもらっている。


でも、植物なら他にもある。


「有意義な植物……」


私は腕を組む。

野菜はすでに試している。

なら――


「木類?」


木なら、いろいろ使える。

果実がなれば食料になる。

木材として使える種類なら、将来的には建材や道具にもなる。


ただし。


「木って、育つのに時間がかかるのよね」


早くても数年。

種類によっては、もっとかかる。


だからこそ――


「早めにこっちに持ってきて、試しに植えておかないと」


今から植えておけば、数年後には大きくなっているかもしれない。


逆に、数年経ってから、


「やっぱり植えよう!」


では遅い。


「うーむ」


何を植えるか。

私は思いつくものを並べていく。


「実がなる木かな?」


栗。柑橘類。柿。


「他は何かしら?」


桃。梅。梨。りんご。


「この辺りかな?」


果物なら食べられる。

余った実を加工できる可能性もある。

そして、木が育てば薪や木材として使えるものもある。


「いろいろ試してみる価値はありそう」


問題は苗木。


種から育てる方法もあるけれど、それだとさらに時間がかかる。

できれば、ある程度育った苗木を持ってきたい。


「苗木……」


私は考える。そこで、ふと思い出した。


「確か……」


一丁目にある植木屋さん。

以前、店への配達か何かで話をしたことがある。


確か――


「売れ残った苗木を貰ったことがあるのよね」


植木屋さんで売れ残った苗木。

そのまま置いておけば、場所も取る。

処分することだってあるかもしれない。


だったら。


「余ってる苗木がないか聞いてみようかな」


ただ、私は今こちらにいる。

直接行くことはできない。


「……あ」


でも鞄の向こう側には店がある。

そしてパソコンも使える。


「メールなら私でも確認できるから」


私はパソコンを開き。


「聞いてみるか」


さっそく、植木屋さんへメールを送る。

内容は簡単だ。

以前、売れ残りの苗木を譲ってもらったこと。

また余っている苗木があれば、譲ってもらえないかということ。


そして――


「果樹があれば嬉しい、と」


栗。柿。柑橘。


その他、食べられる実のなる木。


「これで聞いてみよう」


送信。


「……返信、来るかな?」


すぐに答えが返ってくるわけではない。

竹に続いて、今度は果樹。

こちらの世界で育つかどうかも分からない。


でも――


「試してみないと分からないものね」


竹だってそうだった。まずは植えてみる。

育つか確認する。

そして、育ったら利用方法を考える。


「これも、のんびりやっていきましょう」


私は小屋の外を眺めた。


少し離れた原っぱには、植えたばかりの竹が数本。


まだ小さい。


その隣には――数年後、果樹が並んでいるかもしれない。


「……なんか、森の端がどんどん賑やかになっていくわね」


最初は、ただの小屋だった。

それが畑になり。竹が植わり。

今度は果樹まで植えようとしている。


「まあ、悪くないか」


私は笑った。


あとは――植木屋さんからの返事を待つだけだ。

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